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目の色で能力が決まる世界。この世界で俺はオッドアイ  作者: 北猫新夜
虹目赤子争奪戦争

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141/174

141話 王の名

 斧を振りかぶったまま、泣いている虹目の赤子の方へ走っている白髪のおじさんの前に、父親であるルニアが現れると、白髪のおじさんは「そんなこと知ったことか!」とでも言うように、ルニアにも虹目の赤子にも当たるように、斧を振り下ろした。


 「キィィン!!」


 しかし、白髪のおじさんが振り下ろした斧は、また、物理障壁によって弾かれた。そして、その弾かれて体勢が崩れたところを、ステナリアが腹に一撃を入れて、白髪のおじさんも気を失った者の一人になった。


 「ありがとう!ディア!」


 ルニアが俺にそう言ってきた。でも・・・


 「いや、俺は何もしていないぞ?」


 そう。俺は本当に何もしていない。なぜなら、ステナリアがルニアたちに斧が当たる前に、白髪のおじさんを倒すと思っていたから。


 この物理障壁が俺が張ったものではないとすると、この物理障壁を張った人物の候補は一人しかいない。


 俺たちは一斉に虹目の赤子を見た。すると、虹目の赤子は泣き止んだ。


 そして、虹目の赤子が泣き止むと同時に、気を失っていたナノハさんが意識を取り戻した。


 「んっ…ここは?」

 

 「ナノハ!!」


 分娩室で気を失ったので、今の部屋から状況まで、何も分かっていないナノハさんに、ルニアはお構いなく抱きついた。ルニアが抱きついたのは、ナノハさんだけでなく、虹目の赤子も。


 それにしても、ここで、そんな大胆なことをよく出来るな。こういうことをする度胸は、俺には無い。


 意識が戻った瞬間に抱きつかれたナノハさんは、ルニアと話しだした。


 「私たちの子は・・・?」


 出産あけで、意識を取り戻したばかりだからか、弱弱しい声でルニアにそう聴いた。


 「大丈夫だ。横で眠っている。先程は私たちを守ってくれたんだ」


 ルニアがナノハさんにそう答えると、ナノハさんはゆっくりと、顔を赤ちゃんが眠っているところへ向けた。


 そして、眠っている虹目の赤子が目に入ったナノハさんは、一滴の涙が虹目の赤子に落ちると、自分でその落ちた涙を拭った。


 そんなナノハさんをルニアは更に強く抱きしめだ。


 これには、今にも殺す気だった王城に攻めて来た民たちも、足を止めて二人・・・いや、三人を見ている。


 俺はこの三人の邪魔が入らないように索敵魔法を使うと、俺は三人の前に来た。


 なぜなら・・・


 「ビュッ!」


 会議室の外にはまだ、武器を持っている民たちが居る。そして、索敵魔法でその中の一人が動いているのが分かった。俺はその動き的に、弓を使おうとしている動きだと思ったから、三人の前に来た。


 そして、それは、俺の予想通りに、会議室の外に居る武器を持っている民たちの中から、一本の矢が飛んで来た。


 俺はその矢を物理障壁を使わずに、右手の人差し指と中指で挟んで止めた。このような、矢を指で挟んで止めるという行為が出来たのは、身体魔法を掛けていたおかげ。


 皆は矢のことには驚いたが、この三人に水を差さないために、何も言わなかった。


 「ねぇ、ルニア。この子の名前、どうする?」


 「名前か。そうだな・・・「トゥルホープ」なんでどうだ?」


 「「トゥルホープ」いい名前ね。どういう意味で付けたの?」


 「・・・『真の希望』そういう意味を込めて、そう名付けた」


 「ふふっ、『真の希望』=「トゥルホープ」いいわね」


 そして、二人は虹目の赤子に向かって、同時に言った。


 「今から、お前の名前は「トゥルホープ」だ」


 「今から、あなたの名前は「トゥルホープ」よ」


 二人がそう言うと、赤ちゃんの笑い声がした。


 すると、窓から差し込まれていた光が消え、空が虹色に変わった。これは、トゥルホープが生まれて来た時にそっくりだ。


 虹色の空は太陽の光を遮っているが、虹色の空のおかげで暗くない。だが、目が痛くなってくる。


 そして、今回は三十秒ほどで、虹色の空は元の青い空に戻った。うん。この色が一番だ。


 「お二人さん。そう、家族で戯れるのはいいんだが、場所が場所だ。それに、この王子を殺そうとした民たちの処遇、そして、ワーダストの対応について考えないといけない」


 俺が親指で扉付近に居る、武器を持った民たちを指してそう言うと、民たちは一歩足を後ろへ下げたが、自分の犯した罪を理解しているのか、逃げようとしない。一人を除いて・・・


 俺はその逃げた奴を追うために、「ステナリア、この場は頼む」と言って、ステナリアの返答も聞かずに走り出した。ステナリアなら、必ず「分かったわ」と言ってくれるだろう。


 そして、民たちを避けながら会議室を出て、俺は逃げ出した「部外者」を追いかけた。





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