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目の色で能力が決まる世界。この世界で俺はオッドアイ  作者: 北猫新夜
虹目赤子争奪戦争

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140話 虹目の赤子の力

 あれから、虹目の赤子があまりにも泣き止まないので、ルニアはステナリアに赤子を預けると、わずか五秒で泣き止んだ。


 ルニアのあやし方が下手なのが分かってしまった瞬間だ。


 初めて知った事実に、ルニアは机に伏せて、へこんでいる。


 「ルニア、へこんでいる暇はないだろ?これから、本当に忙しくなる」


 「あ…あぁ、そうだな。・・・それにしても、外が騒がしいな」


 確かに、元から虹色の空が変わった時から、騒がしかったが、今は更に騒がしくなっている。


 俺は王城の頂上へ行くときに使った窓を開けると、おでこが急に痛くなった。そして、右目の視界が赤くなった。こうなった原因は・・・


 『虹目の赤子を殺せ!!』


 『戦争の元は死ね!!』


 『お前が死ねば、戦争は起きないんだよ!!』


 ・・・マジかいな。


 窓を開けると、五センチ程の小石がおでこに当たった。急なことで物理障壁が間に合わなかった。


 そして、俺が姿を見せると、メアロノロス王国の民の声が聞こえて来た。それが、先程の声だ。


 『自国の国の新しい王子を、よくそんな風に言えるな』と俺は思ったが、それは、俺には力があるから。


 力が無い者は、戦争になったら自力で生きていくことは難しい。それなら、その戦争の原因に死んでほしいという思いも分からなくない。


 俺が何も力を持たない・・・前世のような人間なら、あのメアロノロス王国の民の中でそう言っていただろう。


 でも・・・今世の俺は力があるが、なにより、『親友の子供を殺そう』という考えが俺には無い。


 それに、二人がどれだけこの赤子を大切にして来たか知っている。そんな二人の初めての子供を殺すなんて、俺には絶対にできない。


 それに、ある最強種との約束もあるから。


 俺は『拡散魔法』を自分に掛けて、皆に向けて言った。


 『皆!心配する気持ちは分かる!でも、安心してくれ!お前たちは絶対に俺が守る!!』


 この民たちの中には、俺を四国最強決定戦で見た人も居るだろう。俺がそう言うと、騒がしかった声が少しだけ小さくなった。


 でも、まだ、騒がしいことには変わりない。


 まぁ、人間一人で守れるのは限界があるからな。一人なら・・・


 俺がそう思っていると、王城の玄関の方で声がした。


 俺は窓を閉めると、「ダン!ダン!ダン!」とかなりの人数が階段を上って来る音が聞こえて来た。


 そして、俺の思っていた通りに、会議室の扉が開けられると、そこには、すぐには数えきれないほどの人が居た。しかも、その全員が武器を持って・・・


 「君たち!この城は、関係者以外立ち入り禁止だぞ!しかも、そんな武器まで持って!!」


 持っている武器は人それぞれで、ナイフや斧、クワや弓の矢、木の棒や食べ物。これで、虹目の赤子を殺そうとしているのか。・・・食べ物でどうやって殺すんだ。


 しかも、その食べ物はリンゴやトウモロコシといった物。殴るのか?


 メアロノロス王国大臣のアセントさんが武器を持っている民たちにそう言うと、一番前に居る斧を持っている屈強な体をしている白髪のおじさんが、アセントさんに向けて斧を振り下ろした。


 俺は物理障壁を張って、アセントさんを守った。


 すると、次は一斉にアセントさんに襲い掛かったが、俺の物理障壁の前に何もすることが出来ない。


 武器を持っている民たちは、一心不乱に俺の物理障壁を叩いている。そんなに、自国の王を殺したいのか。


 でも、こんなことをしたら、最終的に虹目の赤子を殺せなくても、死刑は免れないぞ?


 俺がそんなことを思っていると、物理障壁にヒビが入った。


 「ピキッ」


 ・・・この世界には「塵も積もれば山となる」という言葉がある。その意味は「どんな小さなことでも、積み重なれば大きくなる」


 今、正に、その言葉と同じようなことが起こってしまった。


 アセントさんが白髪のおじさんに襲われた時に、メアロノロス王国の民に会議室へかなり入られていたので、武器を持っている三十人の民に物理障壁を叩かれている。


 会議室へ入られる前に物理障壁を張っておけばと後悔しているが、それはもう遅い。


 そして、俺はその三十人の攻撃を受け続けること三分。俺の物理障壁にヒビが入った。


 「塵も積もれば山となる」を、この世界風に言い換えれば、「黒目が束になれば超人に勝る」


 破壊されないために、物理障壁に更に魔力を送ってもいいんだが、これからのことを考えると、魔力は出来る限り温存しときたい。


 俺は物理障壁が破られた時のために、自身に身体魔法を掛けると、タイミングよく物理障壁が破壊された。


 「ステナリア、一番通したらいけない奴は分かってるな?」


 「もちろん。白髪の人でしょ」


 俺はステナリアの答えを聞くと、武器を持った民を迎え撃つ体勢に入った。


 すると・・・


 「う"ぁ"ぁぁん!!」


 俺が出したベットで、ナノハさんと眠っている虹目の赤子が泣き出した。そして、その泣き声に俺たちは救われた。


 なぜ、俺たちは救われたかというと・・・


 虹目の赤子が泣き出すと、風魔法の初級魔法『ウィルド』が虹目の赤子の方から、武器を持っている民たちに向かって放たれたからだ。

 

 そして、その『ウィルド』は、民たちに当たり、民たちは壁にぶつかった。


 虹目の赤子が『ウィルド』を放ったことに、俺たちは驚いている。普通の赤子・・・いや、超人、オッドアイの赤子でも、生まれてすぐに魔法を放つことなんて出来ない。


 なら、虹目の赤子は自分の身に危険が及ぶと直感で感じたから、魔法を放つことが出来たのか?・・俺なんかよりも、超超超天才じゃないか?


 虹目の赤子が放った『ウィルド』を受けて、立ち上がった者が数名いたが、ほとんどの人は気を失っている。・・・どれだけ強いんだよ…


 俺は虹目の赤子の魔法にそう思っていると、立ち上がった数名の中の一人である白髪のおじさんが、泣いている虹目の赤子に指を差して言った。


 「陛下!これが、戦争の原因となる力です!今すぐ、殺さないといけない!!」


 白髪のおじさんはそう言うと、斧を振りかぶったまま、俺の横を通り越して、虹目の赤子の方へ走った。


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