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目の色で能力が決まる世界。この世界で俺はオッドアイ  作者: 北猫新夜
虹目赤子争奪戦争

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136話 虹目の誕生

 ルニアとナノハさんの結婚式の二次会から十カ月が経過した。


 時間の流れというのは、とても早いものだ。


 この十カ月の間には、特に大きな事は起きていない。


 俺は今、スカシユリ王国とワーダストを繋いでいる街道を眺めている。


 ワーダストの三人の超人が起こした事件で、ワーダスト側からこの事件の損害賠償として、三千万をスカシユリ王国に渡し、貿易の話も無くなったので、ワーダストの人員の全員が、ワーダストへ帰って行った。


 これが、三人の超人が事件を起こしてから二週間後の出来事。


 この街道を誰かが通ったのを見たのは、ワーダストの人員がワーダストへ帰る時だ。


 その帰っている時のワーダストの人員の表情は、怯えているようだった。


 そして、その怯えている人員の中には、赤目の超人二人も含まれている。


 あの人たちには、超人至上主義な国ワーダストでも、超人たちが怯えるようなことが待っているということ。


 超人はともかく、黒目の人たちは助けてやりたいが、貿易の話も無くなり、スカシユリ王国はワーダストとの関係が完全に無くなったので、俺のような部外者が助けることは出来ない。


 それから、ずっとこの街道は、誰も何も通らないまま。


 掃除や修繕もしていないので、今の街道に何かが通ったら、そこに穴が空き、通った動物や人、馬車などは、死の滝に落ちて行く。


 そして、そこで命が助かったとしても、死ぬまでずっとそこで暮らさないといけない。


 俺も簡易修繕はちょくちょくだがしている。だけど、そんな修繕はすぐに効果が無くなる。するなら、本格的な修繕じゃないといけない。


 そんなことを考えていると、約束していた時間になった。


 俺は『ウィルド』で王城前に行くと、王城前には、プロテア陛下とステナリア、前国王マナガスさんと前王妃ビュリさんが居た。スカシユリ家の勢揃いだ。


 「お待たせしました」


 「来たか、ディア。では、メアロノロス王国へ行こうか」


 プロテア陛下がそう言うと、俺はメアロノロス王国の王城前を想像して、『空間転移』を使った。


 ・・・・・・

 ・・・・・・


 メアロノロス王国の王城前に転移した俺たちは、王城の中へ入り、休憩室に来た。


 そこには、ルニアと大きく膨らんでいるお腹をさすっているナノハさんが居た。そして、その周りには、担架と男二人と女五人が居る。


 「ルニア陛下、お久しぶりです。」


 「えぇ。プロテア陛下。私たちの結婚パーティー以来ですね」


 プロテア陛下の言葉にルニアはそう返すと、俺たちはルニアたちの反対の方に座った。


 そして、座った時に見えたナノハさんの表情は、とても辛そうだった。


 「ナノハ、大丈夫か?」


 「はぁ、はぁ…もう…無理ぃ…」


 ルニアにそう途切れ途切れで苦しそうにナノハさんが答えた。


 「分かった。もう、時間だろうからな。お前たち、ナノハを分娩室まで運んでくれ」


 ルニアがそう言うと、周りに居た男の二人が担架にナノハさんを乗せて、休憩室を出て行き、その後ろを追うように、女の五人が休憩室から出て行った。


 そこで、俺はルニアに聴いた。

 

 「ルニア、お前は行かないのか?」


 「・・・最初は立ち会うつもりだったが、ナノハに「あなたに私の苦しんでいる姿を見せたくない」と言われた。だから、行きたい気持ちが百パーセントでも、千パーセントでも、ナノハがそう言うなら、俺は行かない」


 そう話すルニアからは、「心配」「不安」「緊張」「焦り」など、色々な感情を持っていることが分かる。


 「ディアたちが来る少し前に破水が起きてな、それからはだんだん痛みが増していったが、今は大分収まった。・・・俺には分からないが、助産師からの話では、「もうそろそろ、生まれる」とのことだ」


 ルニアはそう言うと、手を組んで、組んだ手を力強く握り、下を向いた。


 ルニアからは「誰も近づくな」オーラが出ているので、誰も話しかけることが出来ない。


 そして、そのオーラが部屋全体を覆っているので、俺たちの中でも話すことが出来ない。


 そんな静かな部屋だからか、分娩室に行ったナノハさんの叫び声を聞こえて来た。


 「ナノハ!!」


 ナノハさんの叫び声が聞こえると、ルニアはその場から立ち上がると、部屋の扉を開けようとした。


 だが、俺は身体魔法で先回りし、扉を塞ぐように立った。


 「ディア!何のつもり!そこをどけ!!」


 「それは、俺のセリフだ。ナノハさんの言葉を忘れたのか!」


 俺がそう言うと、ルニアはナノハさんの言葉を思い出したようだが、それでも、心配の気持ちが勝った。


 扉の前に立っている俺の頬をルニアは殴った。しかも、本気で。


 ルニアに殴られた俺は、殴られた頬を抑えながら、その場に倒れた。そして、俺を殴ったルニアは、倒れた俺を見て我に戻ったのか「やってしまった・・・」みたいな表情になった。


 「す、すまない!ディア!」


 そして、そう謝るルニアを見て俺は、国王になる前のルニアなら、「すまない」ではなく「ごめん」と言うだろうなと、心の中で思った。


 「大丈夫だ。このくらいの傷なんて、これまで受けて来た傷からすれば、無傷も同然だ」


 俺はこう言っているが、本当にルニアから受けた傷は、無傷も同然の傷。


 昔から、気絶するほどの攻撃を受けて、しかも、今は身体魔法を体に掛けていたので、いつもよりも体が頑丈になっている。


 俺はそう言って立ち上がると、ルニアの背中を押して、ルニアが元々座っていた所に再着席させた。

 

 「我慢しろ。ナノハさんも頑張ってるんだ」


 「あぁ、そうだな。ありがとう、ディア」


 そして、ナノハさんが分娩室に運ばれてから、俺たちはナノハさんの叫び声が聞こえて来る度に、暴走するルニアを冷静にするということを何回も繰り返した。


 そんなことを繰り返すこと二時間。


 ナノハさんの叫び声が聞こえなくなると同時に、赤ちゃんの産声が聞こえて来た。


 だが、その産声が聞こえると同時に、空が『虹色』になった。


 

出産・・・学校の体育の授業だけじゃ、何も分かりませんでした…

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