表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目の色で能力が決まる世界。この世界で俺はオッドアイ  作者: 北猫新夜
就任、そして四国最強決定戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

130/174

130話 享年四十歳

 ・・・声が出ない。


 『空間転移』は成功したが、転移するギリギリで、あの赤目の超人に右腕を思いっきり蹴られた。


 そして、あの感覚は絶対に骨が腕だけでなく、右肋骨も何本か折れているだろう。


 それは、とても痛かった。・・・でも、今までのように、叫ぶような声が出なかった。


 ア"ァ・・・


 俺は赤目の超人に思いっきり蹴られたせいか、脳が揺れている。


 視界が何もしていないのにずっと左右に動いていて、焦点がずっと定まらない。

 

 ・・・気分が悪くなって来た。


 「誰かいないのか?」と言いたいが、本当に声が出ない。というか、出し方が分からない。


 俺は今、どんな姿なんだろうか。


 いや、そんなの醜い姿に決まってるだろう。腹を二か所刺されていて、右腕も曲がったらいけない方向に曲がっているだろうし。


 ア”ァ・・・


 この感覚はなんだろうか?とても久しぶりの感覚だ。


 痛い先を超えた、痛みを感じない感覚。


 ・・・あぁ、そうか。この感覚は、俺が前世で社長を守るために、心臓を刺された時の感覚によく似ている。


 あの時も、背中を刺された時はとても痛かったが、心臓を刺されると、声が出なくなり、今まで俺を苦しめていた痛みが一気に無くなった。


 そして、俺は死んで、この世界に転生した。


 ・・・そうか。この感覚は、死に近づいているという合図なのか。


 この世界に生まれて十八年。


 近年では、男の平均寿命が八十一歳となっているのに、何で俺は、この二つの寿命を足しても、平均寿命に行かないんだ。


 前世と今世の人生を足すと、俺は四十年生きていることになる・・・平均寿命の半分も生きてねぇじゃねえか。


 まぁ、でも、今世は楽しかった。


 前世では数多居る人間の中の一人だったが、今世は数多居る人間の中の一割の割合で生まれる「超人」として生まれ、その「超人」の中の一割の割合で生まれる「オッドアイ」で生まれた。


 そして、王族の秘書というすごい特殊な家系に生まれて、不自由なく過ごすことが出来た。


 前世では履歴書に書くためだけに学校へ行っていたが、今世では学校へ行くと、皆から「一緒に遊ぼう」や「魔法教えて」など、とても楽しい学校生活を過ごした。


 卒業してからは、一国の王女を救い、一国を敵から守ったり、ファイアドラゴンと話したり、クルミナ学園の臨時先生となったりした。


 そして、シュラスト家当主になってからは、エルフたちと個人的な関係を結んだり、四国最強決定戦で優勝したりした。


 どれもこれも、俺の記憶に深く刻まれている。


 あぁ、今世は老衰出来ると思っていたんだがな。・・・やっぱり、最強でも、死ぬことはあるんだな。


 もし、また、生まれ変われるとしたら、自分が最強だったとしても、自分の命を第一に生きようと思う。


 ア"ァ・・・


 この感覚も同じ。


 痛みを感じなくなると、だんだん意識が保てなくなる。


 あの時は、痛みを感じなくなってからすぐに、意識が保てなくなり、死んだ。でも、今は、痛みを感じなくなってから大分時間が経っても、意識を保っている。


 これは、昔からステナリアの赤目の超人の攻撃を受けて来たおかげだろう。だから、ワーダストの赤目の超人の蹴りもこのくらいの怪我で済んだ。


 ステナリアも、あんなことが俺の寿命を延ばすとは思わなかっただろう。


 でも…もう…だめそうだ…


 と人生を諦めて、そう思っていると・・・


 「ディア!?」


 とても、聞き覚えのある声が上から聞こえて来た。


 その声の主は、俺の寿命を延ばしてくれた一国の王女。そして、俺の幼馴染。


 「ディア!大丈夫ですか!?返事をしてください!!」


 必死にそう言っているが、今の俺には、それに応えれる体の状態ではない。それは、ステナリアも分かっているだろう。


 ステナリアに応えたくても、自分がどのように体を動かしていたのかが分からない。


 「ディアに何かあったのか!?・・・!おい!大丈夫か!?」


 そして、ステナリアに続き、プロテア陛下と父さんが現れた。


 現れた父さんは、俺を見ると、俺の無事を確認したくてか、俺の体を揺らしたが、ステナリアに止められていた。


 それでも、俺の体にしがみついたままの父さんを、ステナリアは赤目の超人の力で無理やり引き離した。


 そう。俺はお前のその常人じゃ考えれない力のおかげで、今も生きている。


 ないとは思うが、もし、ステナリアの回復魔法で俺がこの状態から、あの元気な姿に戻ったりしたなら、俺はステナリアにどれだけ感謝してもしきれない。


 俺の命を延ばしてくれたくれただけでなく、死ぬ未来が決まっているような俺を救ってくれたんだから、本当に何をして返せばいいか分からない。


 そして、プロテア陛下と父さんに続き、王城に居る者が集まって来た。俺の姿を見た者は、全員泣いている。


 あ、そう言えば、前世での俺の死は、どうなったんだろうか。


 山田社長は俺に感謝してくれただろうか?


 そして、親戚は俺の葬儀をしてくれただろうか?・・・いや、してくれてないだろうな。全然関わりなかったし。


 でも、今世は、こんな俺のために泣いてくれる人が居るのだ。これなら、俺も安らかに死ねるだろう。


 誰にも見守られず、泣かれず死ぬよりかは、こうやって、皆に見守られて、皆が俺のために泣いている中、死んでいく方がいい。


 この人たちなら、俺の葬儀もちゃんとしてくれる。俺の口角が少しだけ上がったと思う。


 すると、ステナリアが俺の腹に向けて、手を大きく広げると、回復魔法を使い始めた。


 でも、俺は意識が保てなくなり、目をつぶった。


 享年十八歳。


 前世と合わせると、四十年の人生が幕を閉じた。

少しでも先が気になる方は、ブックマークと評価をお願いします。


それが、これからのモチベーションに繋がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ