128話 ギリギリの戦い
俺は向かってくるナイフの先端が当たるギリギリで物理障壁を張った。
そして、ナイフは俺の物理障壁に弾かれて、子供は手からナイフを離れ、尻もちをついた。
だが、すぐにナイフを取り、次は腹に目掛けてナイフを振り下ろしてきた。
しかし、俺の物理障壁は、俺の体全体を覆っているので、また、俺の物理障壁にナイフが弾かれた。
すると、子供は泣き出し、泣き出しながら、ナイフを俺へ向かって何度も振り下ろしてくる。
君・・・やってること、普通にやばいよ?
ナイフを何度振り下ろしても、俺の物理障壁に弾かれる。
その繰り返しが三分続くと、子供が俺にナイフを振り下ろすのを止めた。
そして、俺は物理障壁を止めて、立ち上がると、子供は俺を刺そうとしていたナイフを俺に渡してきた。
「これは?」
「これで、僕を殺してください。そうしたら、家族が傷付けられない」
子供は泣きながら、そう言った。
「・・・あの場に居たのは、逃げ遅れたわけではなく、誰かの命令であの場に居たのか?」
俺がそう聴くと、子供は首を縦に振った。
なら、俺の首に掴まった時に、掴むには少し強いような気がしたが、あれは、俺を首絞めで殺そうとしていたことが分かる。
だが、あの時の俺は、身体魔法を止めるのを忘れていたので、身体が強化されていたから首絞めが効かなかった。
俺は絞められていた首をさすった。
「誰の命令だ?」
俺がそう聴くと、流石に子供は首を横に振った。
まぁ、そんなことしなくても、予想はついてるが。
「あの青目の超人に命令されたのか?」
俺がそう言うと、子供は首を横に振ったが、俺の言葉を聞いた時に「ビクッ」という反応がしたので、これは、青目の超人が命令した人で確定だろう。
やっぱり、子供は分かりやすいな。
「この火災を起こしたのも、あの青目の超人か?」
俺がそう聴くと、子供は首を横に速く振った。
「じゃあ、水目の超人か?」
俺がそう言うと、子供はまた「ビクッ」という反応をして、首を横に速く振った。
「なるほど。この火災の犯人は水目の超人で、君を置いて行ったのは青目の超人か」
俺が今まで聴いてきて、その中から出た結論を言うと、子供はまた泣き出して、俺の足を叩いてくる。
「君の家族は何処に居るんだ?」
「僕を殺してください」
「答えになってない。何処に居るんだ?」
俺は子供にそう言うと、子供は下を向いた。
俺はため息を吐いて、この後のために『魔法空間』から、魔力ポーションを取り出そうとすると、腹部から痛みがした。
そして、魔力ポーションを取り出して、腹部を見ると・・・
「ウ"ゥ"」
俺の腹を子供が刺しているのが見え、俺を刺している子供は笑っている。
そして、俺は笑う気分ではなくなっている。
口から血が流れて、腹部からは強烈な痛み。
「よくやったな。後は俺たちに任せろ」
俺が地面に仰向けで倒れて、血が流れないように腹部を抑えていると、炎が移らなかった木の裏から、水目の超人と赤目の超人が現れた。
青目の超人はそう言いながら現れると、子供が二人の超人の近くに走って行った。
そして、あの二人に近寄った子供が、急に大きくなった。
「マジかいな・・・」
俺がそう言うと、三人の超人は笑った。
「いや~、まんまとハマってくれたな!黒目の子供一人くらい、見捨てても世界の損失にはならないのに!」
「ま、少し焦ったけどね。まさか、身体魔法を止めるのを忘れて、首絞めが失敗するとは。まぁ、こういう形で成功してくれから良かったけどね!」
赤目の超人の男と、先程まで子供だった水目の超人の女はそう言った。
クソッ!マジで『変身魔法』強すぎだろ。こんなことされたら、人間不信になるわ。
あんなに泣いていて、家族のためを思っていた子が、本当はこんな最低女だったなんて。
「じゃあ、ひとまずは、確保と行きますか!」
赤目の超人はそう言うと、手に持っている縄を叩きながら、俺に近づいて来る。
そして、俺を縄で結ぶために、体を触れようとしてきた時、俺は俺の体全体に物理障壁を張った。
「チッ!こいつ、物理障壁を張りやがった」
「壊せ!早く!」
赤目の超人がそう言うと、青目の超人が怒鳴るような大声でそう赤目の超人に命令した。
青目の超人の命令に従う赤目の超人は、俺の体をまたがると、身体魔法を掛けて、拳を俺の物理障壁にぶつけた。
そして、その攻撃が続くと、俺の張っている物理障壁にヒビが入った。
というか、マジで腹いてぇ。
俺はヒビが入っている物理障壁を新たな物理障壁に張り替えて、右腕を伸ばして、落としてしまった魔力ポーションを拾った。
「キリ!早く壊せ!!」
先程よりも、怒鳴る密度を増やした声で、青目の超人はそう言うと、赤目の超人は先程よりも拳のスピードが速くなった。
俺は取った魔力ポーションをすぐに魔力ポーションを飲み終わると、必死に俺の物理障壁を潰そうとしている赤目の超人を笑った。
魔力ポーションを飲んで、『空間転移』が使えるようになった俺は無敵だ。
「バァァン!!」
そのような音がすると、赤目の超人は頭から血を流しており、俺は物理障壁と魔法障壁の二つを張っている。
「おい!死ぬところだったぞ!!」
「しょうがないだろ。お前がそこに居るのが悪い」
水目の超人の女が、急に『ウォルキーン』を俺に向けて放ってきたが、ギリギリで魔法障壁を張れたので、助かった。
マジで、俺ってギリギリの戦いしかしないな。
こんな最強キャラなのに、ギリギリの戦いなんてしたくないんだが・・・
赤目の超人と水目の超人が先程のことで言い争いをしていると、俺の視界が急にぼやけて来た。
これは…まずい…
俺は急いで『空間転移』のために、王城を想像する。
ッ!頭も回らなくなってきたから、想像も出来なくなっている。
「お前ら!そんなことやってると、『空間転移』で逃げられるぞ!」
言い争っていた二人は、青目の超人の言葉で意識を取り戻すと、俺への攻撃を再開した。
えーと・・・確か、ここには手すり、ここにはスカシユリ王国初代国王の絵が・・・
そんな感じで思い出していると、物理障壁と魔法障壁のどちらにもヒビが入った。
クソッ!今までなら簡単に想像できたのに、全然想像できない。
後、天井の一面さえ思い出せれば、『空間転移』の準備が完了する。
「「パリンッ!!」」
ヒビが入ってから五秒後に、物理障壁と魔法障壁が一緒に破壊された。
俺はもう目を開けていない。全ての意識を思い出すことに注いでいる。
「二人とも。ご苦労だった。最後は俺が仕留める」
!ハハッ。
青目の超人の言葉に、赤目の超人と水目の超人は俺の攻撃をするのを止めて、青目の超人が来るのを待っている。
これは、最後のチャンス。
この与えられた短い時間で、『空間転移』の準備をする。
「オッドアイもやはり、人間だな。腹を刺されたくらいで死ぬなんて。お前にオッドアイを授けた神が今頃、泣いているだろうな」
いいぞ。もっと言え。それで、時間を稼ぐ。
「捕まえろという命令だが、ここで殺す方が世界のためだと俺は思うんだ」
青目の超人が、腰に掛けていたナイフを手に取り、俺へ近づいて来ているだろうな。
「・・・それじゃあ、苦しみながら・・・死ね!!」
「ア"ァ"ァァ!!!」
青目の超人のナイフが俺の腹へ入った。そして、そのナイフが腹に刺されると、頭からつま先まで、強烈な痛みを感じた。
「これは、体全体に強烈な痛みを食らわせることが出来る、ワーダストの「『空間転移』!」逃がすか!!」
俺は『空間転移』を発動して、今までつぶっていた目を開けてみると、青目の超人がナイフを振り下ろそうとしているところだった。
でも、お前の速度じゃ、『空間転移』には勝てない。
俺は安堵すると、右腕から右肋骨にかけて、強烈な痛みに襲われながら、俺は『空間転移』で王城に転移した。




