121話 超人至上主義の片鱗
『!あいつ・・・』
『どうした?何かあったか?』
『・・・あのオッドアイ、私の「ワイア」に気付いて持ち上げると、私の方を見て笑ったんだ』
『「ワイア」の正体も、あいつは分かったということか?』
『おそらくね』
青目の女性の超人が「シグナル」でそう言うと、ラントは斧を大きく振りかぶると、そのまま斧をすごい勢いで降ろすと、木を真っ二つに伐った。
だが、その先に居た、大人の男と子供のワーダスト人員二人に、ラントの斧から出た斬撃が二人の左腕と右腕を切った。
『『ア"ァ"ァァ!!』』
片方の腕を切られた二人は、そう叫ぶと、子供は痛みに耐えられずに地面に倒れた。
『おい!大丈夫か!アリー!!』
左腕を切られた大人の男は、叫びなら、右腕で子供の背中を乱暴にさすった。
『お、お父さん…助け…て…イ"ィ”』
『だ、大丈夫だ!必ず助けてやる!』
大人の男は、子供の左腕を自分の首に巻いて、その左腕を右腕で掴むので持ち上げると、腕を切った張本人であるラントの前に来ると、土下座をした。
『お願いします!ラント様!アリーを!息子を医務室へ行かせてくれないでしょうか!!』
大人の男はそう言うと、さらに地面へ額を擦りつけた。
だが、ラントはそんな言葉に耳を貸さずに、何も聞こえていないかのように作業を進めている。
横では『お願いします!お願いします!!』と、息子を抱きかかえながら、そう何度も頭を地面へ当てた。
そんな二人の後ろから、一人の女性がこう言いながら、歩いて来た。
『まったく、これだからワーダストってのは、世界で生まれたくない国ランキング一位なんだよ』
女性、インポターナはそう言うと、目を隠すほどの前髪をかきあげると、綺麗な光目が出て来た。そして、光目は回復魔法を使える特別な超人。
普通じゃ、絶対に治せないことだって、光目の回復魔法なら可能。
『切断された部分を見せてごらん』
インポターナの目を見た大人の男は、目から涙がこぼれると、息子の切られた右腕の切断された部分をインポターナに見せた。
すると、大人の男はインポターナに頭を叩かれた。
『あんたもだよ。二人とも治してやる』
インポターナの言葉を聞くと、大人の男はさらに涙を流すと、自分も切断された部分を見せた。
そして、インポターナは二人の切断された部分に手を乗せると、そこから、治癒されている証である光が出て来た。
光がだんだん消えて無くなると、二人の切断された左腕と右腕は、無事に切断される前の状態へ回復された。
これが、回復魔法という魔法。
ワーダスト人員はこの光景に目を丸くしている。
『ふぅ。ほら、二人とも、治ったよ』
無くなった腕が復活したのを見た大人の男は、ラントへしていた土下座をインポターナへの土下座へ変えた。
その大人の息子は、安心したのか、眠ってしまった。
『ありがとうございます!ありがとうございます!』
大人の男はラントへの土下座よりも力強い土下座をインポターナへした。
インポターナは「止めてくれ」と言っているが、男は頭を下げ続ける。
そして、インポターナが必死に「止めてくれ!」と言うと、男はようやく土下座を止めてくれた。
『よかったな』
眠っている息子を抱えて立ち上がった男に、ラントはそう言った。
『・・・』
男はラントからの言葉に無言で頭を下げると同時に、ラントを睨んだ。
すると、ラントは怒った。
『何だ・・・その目は!』
超人至上主義の国であるワーダストでは、黒目が超人を睨むと「死刑」という規則がある。
そして、ラントという超人を睨んだ男に、処罰としてラントは、持っている斧を振りかぶると、男に向かって降ろした。
男は向かってくる斧にビビることなく、ずっとラントを睨んでいる。
そして、ラントの斧は男を真っ二つに・・・なると誰もが思ったが、その結果は違った。
『チッ』
ラントの斧は、男の顔のギリギリで弾かれた。そして、その斧を防いだのは、インポターナ・・・の人差し指に付けている青に輝く指輪が、ラントの斧を防いだ。
青に輝く指輪の正体は、ディアが作り、ディアがインポターナに自衛用として渡していた魔道具。
ただ、小さな指輪なので、物理障壁と魔法障壁の二つの魔法しか使えない。
『この国で殺しちゃったら、国際問題になるかもしれないから、殺しだけはなしね』
インポターナはそう言うと、青の指輪から張られた物理障壁を止めた。
そして、ラントと男のせいで、現場の雰囲気が作業できる雰囲気じゃなくなったので、休憩タイムになった。
・・・・・・
・・・・・・
「回復魔法が使われました。しかも、それにかなりの魔力を使っているので、大怪我を治していると思います」
「そうか。やはり、何もなかったは免れないか・・・」
俺は索敵魔法で、開拓場所を索敵している。
「どうしますか?このままだと、明日も大怪我、明後日も大怪我で、インポターナの体力が持ちませんよ?」
「・・・なら、ディア。お前が、と言いたいが、ディアには幅広くしてもらいたいからな」
プロテア陛下はそう言うと、机の引き出しを引いて、一枚の紙を取ると、その取った紙を俺に渡した。
貰った紙には・・・
「これから、秘書としての仕事はいいから、その紙に書いてある通りに動いてくれ」
紙には、「何時に何処」「何時に何処」などが書いてある。
そして、俺は腕時計で時間を確認すると、もう十分後に仕事があることを知った。
俺は紙を折り、ポケットにしまって、十分後までに着かないといけない「街道」の場所まで移動した。




