120話 ワーダストの技術
『ウィルド』で、王城の前まで飛んで来て、王城の中へ入ると、食事をしたであろう五人が俺の帰りを待っていた。
「やっぱり、ディアは逃げたか」
「俺にはあの雰囲気で料理を食べれない。その料理がどれだけ美味しくても!そして、「バイガレオ」が食卓に出たとしても!!」
「お、おぉ。分かった」
ルニアは俺の迫真の言葉にそう答えた。
そして、プロテア陛下に「こっちへ」と言うような身振りをされたので、プロテア陛下の近くに来ると、プロテア陛下にこう言われた。
「ディアだから心配はしなかったけど、次からはヒューズにじゃなくて、私に言うんだよ」
「はい。すみませんでした」
俺は少し早口でそう言うと、体を直角にして謝った。
「よしっ。じゃあ、スカシユリ王国へ帰ろうか」
「承知」
俺はそう言うと、右手をプロテア陛下、左手をヒューズさんに向けると、二人は俺の手に捕まり、俺は『空間転移』を使った。
『空間転移』でスカシユリ王国の王城の中に転移した。
「それじゃあ、二人とも、仕事に戻ってくれ」
「「はい」」
ヒューズさんは仕事室に戻り、俺はプロテア陛下の命令のため、ワーダスト人員の中の五人を観察するために、王城から出て、『ウィルド』で現場へ向かった。
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『ウィルド』で、現場の頭上に来て、あの超人五人の働きぶりを観察している。
超人の中で、三人は赤目で、一人は青目、一人は水目。
赤目の三人は常人よりも身体能力が高いので、他の人よりも早く木を伐っている。そして、青目と水目の二人も、文句を言わずに黙々と木を伐っている。
以外にもちゃんと働いていた。
俺は『ウィルド』を止めて、現場へ着地すると、作業に没頭していた五人の超人が一斉に俺の方を向いた。
「インポターナ、開拓の方が順調か?」
「あぁ!特に、あの赤目の三人はすごいぞ!・・・ディアの予想とは違い、ちゃんと働いてくれている」
「それには俺も驚いた。まぁ、国から派遣されたんだから、ちゃんと働いてもらわないと困るんだがな」
俺はそう言いながら、五人の超人の一人一人に目を向けると、皆は作業に帰って行った。
「!」
「ディアも気づいたか。この六十人のワーダスト人員の全員が、耳に何かはめてるんだよ。そして、その耳にはめている物を見られないようにか、はめていない方をこちらに見せながら、作業をしている」
俺が見たのは、五人の超人が耳に何かはめていることしか見えなかったが、インポターナの言うには、あいつらだけでなく、ここに居るワーダスト人員の全員が耳に何かをはめているらしい。
それに、インポターナの言う通り、超人の五人は耳にはめていない方をこちらに向けている。
「あの耳にはめている正体、ディアは分かるか?」
「そうだな・・・あの耳にはめている物は、俺たちに聞こえないように会話するための物じゃないか?」
「!そんな物がワーダストにはあるのか!?」
「・・・これも、戦争のための道具かもな」
俺とインポターナは、さらにワーダストへの警戒を高めた。
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『どうやら、私たちが耳にはめているのが見つかったらしい』
『そんなことは想定内だ。『いや、それだけじゃない』なに?』
『この「シグナル」がどういう機器かもバレたようです』
『・・・チッ。クソ天才が!』
ラントは「シグナル」を口元へ近づけると、「「シグナル」がバレた。だが、行動は今までと同じだ」と伝えた。
『バレたなら、「シグナル」を執拗に隠すことはなくなった。
ラントはそう言うと、「シグナル」を耳にはめて、木を再び伐り始めた。
そして、ラントは心の中でこう思っていた。
『デプリー様、すみません。ディア・シュラストを誘拐して、ワーダストに送るまでに、殺してしまうかもしれません』
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「鉱山の方には行かないでいいのか?超人がいないとしても、ワーダスト人員だろ?」
「大丈夫です。向こうには、怖い怖い王女様が指揮を執っているので」
「ステナリアが!?」
ステナリアは予定が無さ過ぎて暇だと言っていると聞いた俺は、ステナリアに「鉱山の指揮を執ってくれ。お前の力なら絶対できる」と言うと、引き受けてくれた。
それが昨日の話。
昨日、急遽指揮を執ることになったステナリアの仕事ぶりを見に行くのもありだが、あいつは、俺とは真逆で責任感が強いので、期待通りの働きをしているだろう。
俺が指揮官になったら、指揮なんてほぼ執らずに、皆に自由に動いてもらっている未来しか見えない。
「ステナリアは責任感も強いし、何より、力と治癒があるからな。あの力があれば、舐められることはないだろうし、怪我をした者を治癒できることも出来るし、体力が無くなった者を復活させることも出来る」
「なるほどねぇ」
俺は超人たちに動きがないことを確認して、王城へ帰ろうとすると、足元から「ガシャッ」という音がしたので見てみると、俺の足の下には、小さな物体があった。
俺はそれを拾い上げると、青目の女性の超人が、急にこちらを向いて来た。
そこで俺は、この機器が何か分かったので、青目の超人に向かって、何か企んでいるような笑みをした。
そして、俺は『ウィルド』で、王城へ帰った。




