119話 お昼にパンケーキ!?
「あれ?兄さん?」
「極サイコロステーキ」を自己最速の二分四十秒を上回る二分二十秒で食べ終わり、第一訓練場で遊んでいる学生たちを見ながら、気分を良くしていると、後ろから俺の妹らしき声が聞こえて来た。
俺は首を後ろへ倒すと目の前には、お盆に水と料理を乗せているラノアが居た。そして、横にラノアと同い年のような女性が一人。
「おぉ、妹よ。今からお昼か?」
「そう。今まで、次の授業の準備をしてたの」
ラノアはそう言うと、俺の向かいの席に座った。そして、ラノアと一緒にいる女性はラノアの横に座った。
「お久しぶりです。ディア先輩」
「お、お久ぶり…です・・・あ!もしかして、ノア?」
「はい!覚えていたんですね!嬉しいです!」
「そりゃ、覚えているよ。平民の青目の超人ということでも覚えていたが、ラノアと座学を競い合っていた子を忘れるわけないよ」
ラノアと一緒に居た子、ノアは、ラノアと同じ青目の超人で、平民の女性。
クルミナには貴族制度とかないので、平民でもクルミナに入学できる力があれば、入ることが出来る。
そして、ノアはクルミナに次席で入学した。首席はラノアだった。
その時点で、俺の頭には「ノア」という学生が入ったのだが、今のノアを見ると、全然分からなかった。
俺が学生だった頃のノアは、笑顔が少なく、大人しい子だったが、今のノアは、ずっと笑顔をしており、大人しい雰囲気から大人の雰囲気に変わっている。そして、声も少し高くなっている。
お洒落に興味がないと思っていたが、今はお洒落過ぎて、ノアが輝いて見える。
それに比べてラノアは・・・
「何?」
「いや、お前は・・・変わらんな」
ラノアは俺の言葉に?を浮かべている。
そして、ラノアに向けていた目をまた、遊んでいる学生たちに戻した。
「というか、何で兄さんはここに居るの?」
ラノアの言葉にノアも頷いた。
「・・・ワーダストについての会議が、メアロノロス王国で行われた。そして、会議後に食事の話題になったら、急いであの場から逃げて来た」
俺がここに居る理由を話すと、ラノアはため息を吐き、ノアは「ハハハ…」と苦笑いしていた。
皆は、王城での食事を嫌だなんて思わないだろうが、王城での食事を経験しないと、嫌になる気持ちは分からない。
それに、王城の食事よりも「極サイコロステーキ」の方が、自分的には美味しい。
米があったらいいのだが、この世界には米がないので、最先端魔法研究で米の発明もしたいなと考えている。
「ワーダストの会議って、最近、動き出したことについての会議?」
「いや、それは四国最強決定戦の開催前に話した。今回は貿易についての会議だ」
「「貿易?」」
「あぁ。その内容も教えてやりたいが、それは流石に話せない。すまないな」
俺はラノアとノアにそう言うと、二人はお盆に置いているお昼ご飯を食べ始めた。
そして、俺は二人の食べているお昼ご飯を見て、次は俺がため息を吐いた。
「どうしてお昼ご飯が「パンケーキ」なんだ?昼からも授業があるだろ?」
ラノアとノアがお昼ご飯として食べているのは、五段に重なっているパンケーキ。その周りにフルーツが乗っている。
食後のデザートとしては十分な量だと思うが、これがお昼ご飯というには、かなり少ないと思う。
まだ、子供なら胃も小さいので、このくらいの量でお腹いっぱいになるが、二人は十六歳の言わば大人だ。この量じゃ、満足はしないだろう。
「私たちはこのくらいのでいいの。ね!ノア!」
「うん!美味しい物なら、何でもお腹いっぱいになるんですよ!」
二人はそう笑いながら言うと、パンケーキに周りのフルーツを上手いこと乗せて、ミニパンケーキとして食べた。
そして、二人はさらに笑顔になった。
すると、ミニパンケーキを食べながら、ラノアが質問してきた。
「兄さんは逃げるためにここに来たんでしょ?なら、授業はしないの?」
「あぁ。この後は、王城に戻ってプロテア陛下とヒューズさんを『空間転移』で、スカシユリ王国に連れ帰らないといけないからな」
俺はラノアとノアがパンケーキを食べ終わるまで、窓から遊んでいる学生たちを眺めていた。
そして、ラノアとノアがパンケーキを食べ終わり、「美味しかったね」「そうだね」と楽しそうに会話をしている。
・・・この二つの笑顔を守るためにも、戦争をどうするか考えないといけないな。
俺はそう思うと、席から立ち、お盆を受付の所へ持って来た。その後ろに、ラノアとノアも。
「やっぱり、味なんて落ちてないじゃないですか」
「あんたが久しぶりに食べたからじゃないのかい?まぁ、でも、それならよかったよ」
グラマーさんはそう言うと、俺とラノアとノアのお盆を洗い所へ入れた。
俺は背伸びをしながら、食堂から出た。
「じゃ、体験先生のお二人さん。午後も頑張れよ」
俺は二人にそう言うと、行きと同じように『ウィルド』を使って、食事が済んだであろう王城へ帰って来た。




