115話 ワーダストの大臣との会議
四国最強決定戦も終わり、俺たち選手は皆、それぞれの国に帰って来た。
そういうことは、俺ももちろん、スカシユリ王国に帰って来ている。
俺は今、スカシユリ王国の王城の会議室にて、ある会議が行われているのを傍で見ている。
その会議とは・・・
「はい。では単刀直入に、街道も完成したということですし、そろそろ、我々ワーダストと貿易をしましょう。スカシユリ王国さん」
そう。その会議とは、街道が完成したことでスカシユリ王国に来た、ワーダストの大臣と言っている「デプリー・ヴァイス」という人と貿易について話し合う会議。
四国最強決定戦が終わったので、ロウバイ陛下とルニア、ラノアをメアロノロス王国に送り、プロテア陛下と父さんとスカシユリ王国の王城へ帰って来ると、王城の門番をしている二人がメイドと話していた。
そして、門番の二人が俺たちを見つけると、俺たちにメイドたちと話していた会話の内容を話してくれた。
その内容は「急にワーダストの大臣と名乗るデプリー・ヴァイスという人が来て、陛下たちと話したいと言っている」とのこと。
王城の外で待たせているらしいので、俺は急いで、王城の扉を開けた。
『おぉ!これは、プロテア陛下。お初にお目にかかります。私、ワーダスト大臣デプリー・ヴァイスと申します』
『あぁ、話は聞いている。待たせてすまなかった。なにせ、ちょうど今、メアロノロス王国から帰って来たばかりだからな』
プロテア陛下がそう言うと、デプリーは目を丸くした。
『今ということは、本当に今さっきということですか?周りに馬車などはなかったですが・・・』
『あぁ。そういうことだ。だが、私たちは馬車で帰ってきていない』
プロテア陛下のその言葉にデプリーは、「二ヤッ」という効果音が聞こえるような口元をした。
そして、すぐにその口元を元に戻した。
『では、今から、ワーダストとの会議は出来ますでしょうか?』
『あぁ、分かった。ディア、デプリー大臣を会議室へ案内してくれ。私はちょっと用事がある』
『分かりました』
俺がそう言うと、プロテア陛下と父さんは王宮へ行った。
俺はデプリーと目が合った。
『では、行きましょうか』
『はい。お願いします。ディアさん』
そして、デプリーは王城へ足を踏み入れると、俺は会議室へデプリーと向かった。
会議室へ向かう短い時間の中、俺はデプリーを観察している。
青色の肩まで伸びている髪に、赤目と青目のオッドアイの超人。
それだけでも、注意人物であるが、それが、ワーダストの大臣というなら、なおさら、注意しないといけない人物だ。
そして、会議室の前に着くと、俺は会議室の扉を開けた。
『失礼します』
俺はデプリーが会議室に入ったのを見ると、自分も会議室に入った。
『ディアさん、どこに座ればいいでしょうか?』
『あ~、では、そこへ座ってください』
『ありがとうございます』
俺が示した席にデプリーは座った。
俺は魔法空間から、カップ三個を取り出して、紅茶パックをティーポットに入れて、『ウォル』と『イグルス』で、温かいお湯を作り、紅茶パックが入っているティーポットへ入れた。
そして、蒸してから二分半が経った時、俺は魔法空間から取り出した三個のカップに、蒸し終わった紅茶を入れた。
この二分半は、シュラスト家が見つけた紅茶の虫時間の最適時間。
俺もそれを聞いた時に、すぐに信じることが出来なかったので、自分で色々な時間を試してみたが、シュラスト家が見つけた虫時間の最適時間の二分半が、一番紅茶を美味くなるということが分かったので、常に二分半蒸して紅茶を入れている。
紅茶を入れた二個のカップのうちの一個をデプリーの前に置いた。
『おぉ~、良い匂いですね!いただきます』
そして、デプリーは紅茶を飲むと、『美味い!』と言った。
それと同時に、会議室の扉が開かれて、プロテア陛下とスカシユリ王国の大臣ヒューズ・ジェリーが入って来た。
プロテア陛下とヒューズが入って来ると、デプリーは飲んでいた紅茶を皿に置いて、その場に立った。
『待たせたな。こちらは、同じくスカシユリ王国の大臣ヒューズだ』
ヒューズはプロテア陛下に紹介されると、デプリーにお辞儀をした。
そして、デプリーもお辞儀をした。
『席に着いてくれ』
プロテア陛下がそう言うと、デプリー、ヒューズの順で座り、最後にプロテア陛下が座った。
『では、デプリー大臣。会議を始めましょうか』
そして、会議が始まり、今に至るということ。
デプリーの問いかけにヒューズが答えた。
「貿易をすると言うのは賛成ですが、どのような貿易を?」
「我々ワーダストは、とても鉄不足です。スカシユリ王国は有名な「ハイドレサンザン」という鉄鉱山がありますよね?ワーダストがスカシユリ王国に求める貿易品は鉄です」
プロテア陛下とヒューズは、顔を見合わせると、ヒューズは答えた。
「貿易品に鉄というのはいいですが、それは、ワーダストさんの貿易品で決まりますね」
「どんな品がいいですか?出来る物なら、何でもいいですよ」
デプリーからそのような答えが返ってくると、プロテア陛下とヒューズは顔を見合わせると、一緒に俺を見た。
「ディア、どんな物が必要だと思う?」
「・・・貿易品とは言えないですが、今のスカシユリ王国に必要なのは人員です」
貿易品に鉄がいるなら、今の人員じゃ足りない。
それに、スカシユリ王国は森を開拓しようとしているので、それにも人員が欲しい。
俺はプロテア陛下とヒューズにそう言いながら、横目でデプリーを見ていると、口元が笑っている。
プロテア陛下とヒューズは俺の方を見ているので、デプリーが見えていない。
そして、デプリーは笑っている口元を直すと・・・
「では、こちらが人員を希望する数送りますので、鉄をお願いします」
デプリーはそう言うと、カバンから紙を取り出し、その紙にデプリーが自分の名前と人員と書いた。
「この紙は、貿易をするという契約書です。名前と貿易品を書いてください」
はたしてこれを貿易と言っていいのか・・・
デプリーから渡された契約書にプロテア陛下は名前を書き、貿易品に鉄と書いた。
そして、契約書はデプリーに回収された。
「ありがとうございます。プロテア陛下」
「この貿易の他に、何かあるか?」
デプリーはプロテア陛下の問いかけに、少し間を空けて言った。
「プロテア陛下は、メアロノロス王国から馬車で帰ってきてないと言いましたよね?なら、その帰って来た道具を教えてほしいなと・・・」
「あぁ、そのことか。デプリー大臣、私たちは道具で帰って来たのではなく、ディアの魔法で帰って来たんだ」
「魔法ですか?」
「あぁ。ディアは『空間転移』という魔法を使える。この魔法で私たちは帰って来た」
デプリーは「なるほど」と言って、「私からの質問は以上です」と言った。
「そうか。我々からも質問はない。では、これにて会議を終了とする」
プロテア陛下はそう言うと、席から立って会議室から出て行った。その後を追うように、ヒューズも会議室を出て行った。
二人が出て行くと、デプリーも席から立ち上がり、会議室を出たので、俺も出た。
そして、デプリーの後ろを歩き、王城の扉が開いていたので、デプリーは王城から出た。
「では、ディアさん。また、会う日まで」
「はい。ありがとうございました。デプリー大臣」
俺がそう言うと、会った時にはなかった馬車にデプリーは乗った。
そして、馬車は街道がある方へ走り出した。




