114話 ステナリア、ありがとう
「ん」
閉じている目に光が掛かり、目を開けると、そこはベッドの上。
あれ?確か、俺は四国最強決定戦パーティーで、溜めていた酒欲を一気に解消しようと思って酒を・・・!
そうだ!俺はあの悪魔に渡された料理を食べて、眠らされたんだ!
俺はあの悪魔ことステナリアを探しに行こうとして、立ち上がると、上の服を着ていないことに気付いた。
なぜだ?
俺は眠っていたベッド周りに上の服がないか探したが、見つからなかった。
これで、外へ出たら、変態扱いされるだろうな・・・
俺は魔法空間から、予備の上の服を取り出し、着た。
そして、俺が眠っていた部屋の扉をすごい勢いで開けると、ステナリア探しが始まった。
・・・・・・
・・・・・・
部屋の外へ出ると、そこはとても見覚えのある所だった。
ということは、ここはアキレア王国の王宮。
ふふっ。俺はアキレア王国の王宮に一か月ほどお世話になったんだ。王宮の隅から隅まで知っている。
だが、ステナリアは王女だが、一応、四国最強決定戦の選手なので、宿に居るかもしれない。それか、もう四国最強決定戦が終わったので、王女を宿に泊まらせるわけにはいかないと思い、王宮で休ませたか。
索敵魔法を使おうとしたが、それじゃあ、面白くない。
俺は初めにリビングへ来た。
リビングには、ステナリアもいなければ、人もいなかった。
・・・今って何時だ?
俺は左腕に巻いている腕時計を・・・ない!
もしかして、俺の上の服を持っている奴が、俺の腕時計も持っているのか。
俺は次にダイニングへ向かった。
そして、ダイニングへ走っていると、俺は思い出した。
俺は走るのを止めて、魔法空間の中を探っていると、俺が求めていた物の感触があった。
俺が求めていた物を魔法空間から取り出すと、俺の腕時計が出て来た。
そう言えば、今までは戦闘で時計が壊れないために、腕から外して、魔法空間に入れていたんだった。
ふぅ。やはり、酒を飲んだ次の日は、頭が悪くなっているな。
俺は左腕に腕時計を付けると、再び、リビングへ向かって走り出した。
・・・・・・
・・・・・・
リビングへ着くとそこには、ルニアとナノハさんそして、悪魔ステナリアが、お菓子を食べながら、紅茶を飲んだりして、楽しそうに話していた。
俺はステナリアが目に入った瞬間、ステナリアのことしか視界に入らなくなり、俺はステナリアに向かって歩き出した。
並び順は、ナノハさんとステナリアが隣同士で、その前にルニアが、ルニアはナノハさんの正面に居る。
ということは、ステナリアの前が開いているということ。
俺は三人が楽しんでいる所に着くと、ルニアの横、ステナリアの前の位置に座った。
「あっ、ディアさん!目を覚ましたんですね!」
「はい。おかげさまで」
俺はナノハさんにそう笑顔で答えた。
俺はナノハさんに答えた笑顔のまま、ステナリアの顔を見た。
ステナリアを見ると、ステナリアも笑顔で俺のことを見ていたが、顔を引きずらせていた。そして、それを隠すかのように、紅茶を飲んでいる。
俺はそんなステナリアの行動を見て、俺は笑みがこぼれたのを紅茶を飲んで、紛らわしていると、横でナノハさんと楽しそうに話していたルニアが、俺の言った。
「あ、そう言えばディア。ステナリアに感謝しろよ。あいつ、お前の酔いを回復魔法で治したんだからな」
・・・なんっ…だと!?
俺は笑みを隠すために飲んでいた紅茶を吹き出した。
そして、その吹き出した紅茶は、見事に・・・前に居るステナリアに掛かった。
ステナリアは、入れたてで、熱い紅茶が掛かったのにも関わらず、飲んでいた紅茶を皿に置いて、隠れていた口元が現れると、ステナリアの口元は笑っていた。
こいつ…引きずっている笑顔を隠すために紅茶を飲んでいたのではなく、酔いを回復魔法を掛けて助けてやったのも知らずに、眠らされたことを怒っている俺を見て、笑ってしまったのを隠すためだったのか。
やはり、こいつは悪魔だ。
「ど、どうした!?」
「いや、何でもない」
俺はルニアにそう言うと、立ち上がり、体を九十度に曲げて言った。
「・・・ありがとうございます…ステナリアさん」
「ふふっ。友達として、当然のことですよ」
俺の顔は笑っていないが、ステナリアは声色的に笑っていただろうな。
「なぜ、敬語?」
そう言うルニアを無視して、ステナリアは紅茶で濡れた服を着替えに行った。
俺はリビングから、ステナリアの姿が見えなくなると、九十度に曲げていた体を元に戻して、座った。
「ステナリアと何かあったのか?」
「・・・俺は昨日、あいつに、たぶん「御寝草」だったと思うが、それを料理に入れられていて、眠らされたんだ」
「あぁ!だから、急に酒の減りが遅くなったのか」
今、戻れるなら、リビングに来る前に戻りたい。
今、考えれば分かる。
なぜ、あんなにも酒を飲んだのに、二日酔いの影響が出てこなかったのか。
朝はステナリアのことしか考えることが出来ず、それ以外のことに思考を使うことを止めていた。
「そして、回復魔法を掛けられたことを知らずに、眠らされたことだけが俺が分かっていたことだ」
俺は吹き出した紅茶に入っていた残りの紅茶を一気に飲むと、お菓子を食べた。
・・・こうして、紅茶を飲み、お菓子を食べれるのも、ステナリアが俺を眠らせて、俺に回復魔法を掛けて、二日酔いを治してくれたおかげだ。
感謝したくないが、感謝しないとバチが当たりそうなので、ここは感謝しておく。
ステナリア、ありがとう。




