110話 あいつら・・・許すまじ
俺はロウバイ陛下より勝者が発表されて、観客たちからの歓声や拍手が聞こえると、体の力が急に抜けて、尻もちを付いた。
そして、その尻もちの衝撃が左肩に来て、和らいでいた左肩の痛みが、再び発生した。
俺は表情には出さずに立ち上がり、右手で観客たちに手を振りながら、早歩きで控室に帰って来た。
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・・・・・・
「マジで痛い…許さん、あいつら・・・」
俺は今、ハイライトと一緒に医務室に居る。
ハイライトと俺は、二人の光目の超人看護師に怪我を治してもらっている。
なぜ、控室に帰って来た俺が、医務室に居るかというと・・・
『『『『『お疲れ様!!!!』』』』』
控室に帰ってくると、控室に居た選手たちが俺をそう言って、出迎えてくれた。
そして、皆は俺の左肩を気にしてか、怪我をしていない右手でハイタッチをした。
その結果、俺が魔法戦第一回戦で倒したルナギアにかなり強いハイタッチを食らい、エルフのマジリカとアトリウスからもルナギア程ではないが、強いハイタッチを食らった。
そして、魔法戦の選手とのハイタッチが終わると、恐怖の物理戦の選手とのハイタッチが待っていた。
物理戦の選手のハイタッチは、ルナギアのハイタッチでかなり強いと思ったのに、その何倍もの威力のハイタッチだった。
メアロノロス王国とスカシユリ王国の物理戦の選手とのハイタッチでもう、右手は赤くなっていて、右腕は悲鳴を上げているが、これからが本番。
なぜなら、これからアキレア王国とリソウス王国の物理戦の選手とのハイタッチだからだ。
身体能力の全てが高いアキレア王国の選手たちと、化け物のような耐久力と力を持っているドワーフ。
獣人の二人は、昨日と同じように控室の隅で見ている。
そして、アキレア王国の物理戦の選手とのハイタッチが終わり、リソウス王国のベルモンドとハイタッチをした時に・・・
「ボキッ」
俺の腕からそのような音が鳴ると、控室の楽しい雰囲気が消えた。
「「ハハハッッ!!!」」
だが、その代わりに、控室の隅で見ていたバヴとウヴは笑っていた。
まぁ、すぐに、アルスの怒りの一撃で二人とも気絶したが。
俺はステナリアに目を向けた。
すると、ステナリアは俺が魔法戦決勝戦の前の控室でした、両手を縦に合わせるという行為をした。
いや、まぁ、ステナリアのハイタッチも原因の一つだろうが、今、求めているのは回復だ。
「回復魔法を…掛けてくれ…」
「・・・ごめん!皆の酔いを回復魔法で治したら、魔力無くなっちゃいました…」
・・・そういう意味だったのか!?
あの両手を縦に合わせる行為は、ハイタッチのことで謝っていたのではなく、魔力が無いから回復魔法が使えないということだったのか。
っていうか、回復魔法って酔いにも効くの!?
クソッ。このことに気付いていたら、昨日の魔法戦お疲れ様パーティーで、満足するまで酒飲めたのに!
「なら、魔力ポーションを」と言おうとしたが、今の俺では『魔法空間』から魔力ポーションを取り出せないし、この怪我のためにステナリアに、あの魔力ポーションの味を体験されるのはダメだ。
それに・・・俺が持っている魔力ポーションは、全部が最高級の魔力ポーションで150回復するから、高いし、ステナリアの魔力量では余ってしまう。
そして、俺は「・・・行ってくる」と言って、医務室へ行った・・・
というのが、俺が医務室へ至るまでの出来事。
幸いなことは、今日だけ、教会の聖職者が時間が空いているということで来ているので、回復魔法で治療してもらえる。
教会の聖職者は、光目を持った超人しかなれない、貴重な職。
今回、俺を治療してくれる女性の聖職者は、俺の左肩と右腕に手を置いて、回復魔法を使い始めた。
手を置いたところから光が出て、痛みが和らいでいく。
そして、女性の聖職者が「ふぅ」と言って手を離すと、俺の左肩と右腕の痛みが、完全に無くなった。
「ありがとうございます。本当に助かりました」
「こちらこそ、すごい試合を見せてくれて、ありがとうございました」
そして、俺は治療してくれた女性の聖職者にそう言って、医務室から出ようとすると・・・
『四国最強決定戦に出場した物理戦選手と魔法戦選手は、闘技場へ出て来てくれ』
ロウバイ陛下からアナウンスが流れて、突然のことに俺は女性の聖職者と目が合った。
「行ってらっしゃいませ」
「はい。行ってきます」
俺は女性の聖職者が笑顔でそう言ってくれると、自然にそのような言葉が出て、俺はこのまま、闘技場へ出た。
やはり、聖職者の笑みは強いな…




