108話 最終試合前
控室に帰って来た俺は、試合を見ていた皆に歓迎された。
まぁ、その中に獣人のバヴとウヴはおらず、控室の隅で俺のことを睨んでいたが、ドワーフの人たちは俺のことを歓迎してくれた。
そして、俺は魔力ポーションを貰いに帰って来ると、ロウバイ陛下のアナウンスが鳴った。
『魔法戦勝者のディアは、闘技場へ出て来てくれ』
俺は貰って来た魔力ポーション四本をステナリアにお願いして、闘技場へ出た。
試合の時は、観客たちに手を振らないが、今は振らないといけない。
俺は闘技場の真ん中に居る、各国の国王の前までは観客たちに手を振った。
そして、闘技場の真ん中に着いて、各国の国王の前に来ると、物理戦でもあったように、各国の国王との握手の時間になった。
リソウス王国ソリエンス陛下、スカシユリ王国プロテア陛下、アキレア王国カランコエ陛下、そしてメアロノロス王国ロウバイ陛下の番になった。
俺はロウバイ陛下と握手をすると、ロウバイ陛下は俺に言った。
「迫力のある試合をありがとう。この大陸で最強の魔法士は君だ。スカシユリ王国ディア・シュラスト」
「はい。ありがとうございます」
俺は握手をした後、一礼をして、控室に帰って来た。
その控室への帰り道では、行きとは違い、観客たちには手を振らずに帰って来た。
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ロウバイ陛下より魔法戦の終了が言われて、俺たち選手は物理戦の時と同じように、アキレア王国の王城で、魔法戦お疲れ様パーティーが行われた。
この魔法戦お疲れ様パーティーには、選手の全員が出ている。
控室にいなかった選手もこのパーティーには出ろと言われたらしい。
そして、試合で負傷した人たちも怪我をしながらも、パーティーに出ている。
アルスにカリカリに焼かれたガリオやノヴェルも、全身に包帯を巻いている中、このお疲れ様パーティーに出ている。
そして、このパーティーの乾杯の言葉は、魔法戦勝者の俺が言わないといけない。
俺は皆が酒が入ったグラスを持っていることを確認すると、グラスを持っている方の腕を上に上げて言った。
「魔法戦の皆さん、今日はお疲れ様でした。先程までは敵同士だったわけですが、この場では戦った仲ということで、楽しみましょう!乾杯!!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
俺たちは一気に酒を飲んだ。
魔法戦お疲れ様パーティーは、物理戦のお疲れ様パーティーと違う料理が出されたりして、美味しかった。
だが、明日に俺は物理戦の勝者であるアキレア王国ハイライトとの試合があるので、飲み過ぎないように、ちょびちょび酒を飲んだ。
少しでも酒を長く飲むために・・・
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そして、魔法戦お疲れ様パーティーは何事もなく終わり、物理戦お疲れ様パーティーの時のように、二日酔いを出さずに、今日を迎えることが出来た。
物理戦お疲れ様パーティーで二日酔いになった奴はも、今日は控室に来ている。
今日の試合に出る俺とハイライトは、軽く体を動かしている。
相手は物理戦のハイライトなので、魔法戦の時のようにはいかない。
だが、ハイライトは物理戦決勝戦で、遠距離から空気攻撃でベルモンドを倒した。
なら、俺との試合も空気攻撃を用いた遠距離攻撃かもしれない。
俺は体を動かしながら、ハイライトの空気攻撃の攻略法を考えていた。
ハイライトの空気攻撃は、魔法でも何でもなく、本当にただの空気を使った攻撃なので、索敵魔法を使っても分からない。
索敵魔法は、空気には対応していない。
唯一の救いは、ハイライトが空気攻撃を仕掛けてくるときは、必ず手で空気を掴んで、それを投げつけて来るというルーティーンが必要のこと。
これは、空気攻撃が放たれるタイミングが分かるので、そのタイミングに合わせれば、避けれるかもしれない。
だが、空気攻撃ばかりに意識を割いていると、木刀などでやれられてしまう。
近づかれないように魔法を放ち続けることも出来るし、『彗星』を放つこともできるが、それは流石に面白くない。
しかし、空気攻撃を一発でも食らうと中々に厳しい試合になる。
その強靭なベルモンドの体に一発大きい空気攻撃が当たるだけで、ベルモンドが気絶するほどの威力。
もし、それが俺に当たったら全身骨折は確約されていて、運が悪ければ逝くかもしれない。
・・・本当に厄介な相手だな。ハイライト。
対戦相手がベルモンドなら、こんなことを考えなくてもよかったのに・・・
というか、俺はハイライトに一つ言いたい。・・・空気って物理じゃないじゃん!?
俺は試合前の運動が終わったので、ロウバイ陛下のアナウンスを待った。




