102話 魔法戦準々決勝第二回戦
アルスから相打ちの方法を聞いていると、横でアトリウスが目をつぶって何かを考えているようだ。
まぁ、さっきアルスに言われた「エルフらしい戦い方」を考えているんだろうな。
アトリウスの試合は次の次の試合だから、戦い方を考えるのは良いことだろう。一試合は基本的に五~十分くらい。
長引かせるんだったら、初級魔法限定試合などをすれば、一試合三十分は掛かるだろう。試合の終了条件は、どちらかの魔力が無くなるまで。
『魔法戦準々決勝第二回戦に出場する選手は、闘技場へ出て来てくれ』
魔法戦準々決勝第二回戦は、スカシユリ王国ヘイホンVSリソウス王国マジリカ。
ヘイホンとマジリカの二人は、闘技場へ出ると、闘技場の真ん中で握手を交わし、試合の定位置に着いた。
『では、魔法戦準々決勝第二回戦、開始!!』
ロウバイ陛下より開始宣言がされると、マジリカは『グロウトグラウン』を放った。
もちろんヘイホンは、一直線に迫って来る『グロウドグラウン』を避けて、『イグナス』を放って反撃した。
マジリカは避けずに魔法障壁で防いだ。
ヘイホンは『イグナス』を放ち続けると思ったが、魔法障壁で防がれるとすぐに『イグナス』を止めて、『スイホール』を放った。
水魔法の中級魔法『スイホール』は、水の壁を放つ魔法。
『スイホール』は高さは三メートルで、横は七メートルくらいの水の壁が出来て、『スイホール』は覆うような水の壁ではなく、真正面だけの壁なので、回り込まれたりするので、『スイホール』を使うのは、火などの魔法を防ぐときや威力を弱める時に使う。
魔法障壁でいいと思うかもしれないが、『レグロス』は魔力消費60で、魔法障壁で防ぐにはその消費魔力の半分の魔力を送らないといけない。
その分、魔力消費20の『スイホール』ならば、魔力を30消費しなくても防げる。
だが、今『スイホール』を使うのは何故か分からない。
ヘイホンは、『スイホール』の後ろからマジリカに近づいている。
そのマジリカは、魔法障壁を張りながら『ノウムコールド』を放った。
『ノウムコールド』は『スイホール』を取り込んで、ヘイホンは・・・『ノウムコールド』を放った。
そして、『ノウムコールド』にぶつかった『ノウムコールド』は、闘技場全体に広がった。『スイホール』の水が混じっていて、水の竜巻が出来た。
水の竜巻に巻き込まれた二人が今どうなっているのか・・・
水の竜巻がだんだん消えていくと、巻き込まれた二人が立っているのが分かった。
この事に観客たちは歓声を上げている。
ヘイホン・・・もしかして、アルスの相打ちの方法を聞いていたのか?
お互い、魔法障壁を張って、怪我一つなく水の竜巻の中から出て来た。
だが、ヘイホンの顔は辛そうな顔をしているが、そんなこと知らないマジリカは、ヘイホンに向かって『グロウドグラウン』を放った。
ヘイホンは辛うじて『グロウドグラウン』を右へ動いて避けたが、その避けた所を狙ってさらに『グロウドグラウン』が来ていた。
そして、その『グロウドグラウン』を左へ動いて避けると、また避けた所を狙って『グロウドグラウン』が迫って来た。
だが、避けようにも左右に『グロウドグラウン』の岩があり、避けることが出来ない。
ヘイホンは『ウィルド』を使って空へ飛び、避けようとしたが、マジリカは『ウィルド』を使うことを見越していたかのように、『グロウドグラウン』を魔力調節で距離を短くする分、岩の長さを長くして、『ウィルド』で飛んだヘイホンに当たった。
ヘイホンは、完全にマジリカの誘導にまんまとはまってしまった。
ヘイホンは、『グロウドグラウン』を防げずに、空から落ちて来た。
『魔法戦準々決勝第二回戦、勝者はリソウス王国マジリカ!!』
「「「「「ウォォォォ!!!!」」」」」
この試合は久しぶりに試合終了の握手をして、試合は終わった。
ヘイホンは、足を引きずりながら、控室に帰ってきたが、マジリカは普通に控室に帰って来た。
・・・・・・
・・・・・・
帰って来たマジリカは、魔力ポーションを貰いに帰って来ると、俺に近づいて来て言った。
「魔法戦準決勝第一回戦は、私とあなたの試合です。アルス様に認められた力、期待して待ってるわ」
マジリカはそう言って、言葉では楽しみそうにしているのが伝わってくるが、マジリカは、俺を睨んでそう言ってきたので、その言葉が本心なのかは分からない。
本当に、エルフは読めない生き物だ。
アルスの横に居るアトリウスは、試合前まで目をつぶっていたのが、今では開いている。エルフらしい試合を考えることができたのだろう。
『魔法戦準々決勝第三回戦に出場する選手は、闘技場へ出て来てくれ』
魔法戦準々決勝第三回戦は、リソウス王国アトリウスはVSアキレア王国アテナ。
「アルス様、私の思うエルフらしい試合をしてきます。帰って来た時に、試合の評価をしてください」
「ふふっ、いいわよ。でも、私の評価は激辛って評判よ?」
「はい。よろしくお願いします」
アトリウスはそう言うと、アテナと二人で闘技場へ出て、闘技場の真ん中で握手を交わし、試合の定位置に着いた。
『両者準備はいいな?・・・では、魔法戦準々決勝第三回戦、開始!!』




