何でも屋
大枠が思いついたので投稿してみようと思います。
これが初めての字起こしにはなります。
1話目にして大枠のストーリーは想像通りで、出会いや成長を描いていければと思っていますが、色々アドバイスも貰えると嬉しいです。
僕の名前はマネ。
冒険者に憧れ、エルフの里を飛び出した・・・までは良かった。
人間の暮らす街に辿り着いた僕は、それまで何も知らなかった現実に愕然とし、冒険者への夢を諦めて過ごしていた。
それは、長寿であるエルフ族が悠久の時間を自由気ままに暮らす日々を過ごした結果、人間社会の発展とは大きく取り残された旧時代の装備、剣術、魔術、そう、何もかもが劣っていた事実を知るまでだった。
エルフの里を旅立つ時に揃えた一張羅装備は、町の武器防具屋では二束三文にならないガラクタ
父から教わった代々秘伝の【マネ流剣術】で学んだ剣術技は、町の剣術道場で入門前の子供が遊びで覚えるレベル
母から教わった炎魔法【チャッカ】、水魔法【シズク】、風魔法【カンソー】・・・
もう言わなくて判るよね?
今目の前に見える子供が家事手伝いで唱えてるあの魔法だよ!
しかもっ!無詠唱!!(涙)
昔から両親に聞かされ続けていた。
【高潔なエルフは人間よりも優れた種族であり、各種族の頂点である】
そんな教えは「里の外の世界を知らない、現実から目を背けた老人たちの妄想」だった事を人間の町で思い知らされた。
そんなこんなで、今では冒険者をすっかり諦めた僕は【何でも屋】として町で商売を細々しながら暮らしている。
里から英雄気取りで飛び出した僕の特技は【模倣】
そう・・・物まねだ。
身体の動き、マナの流れ、視覚、聴覚、味覚で感じ取れたものは再現できる力といえばカッコイイが、要するに器用貧乏なだけ。
そんな僕が思いついた仕事が【何でも屋】だった。
町の困りごとを何でも解決する仕事、とは謳っているが、依頼主の仕事を見せて貰って、代わりにやってあげるだけの簡単な仕事をして生計を立てている。
元々は冒険者になる事に憧れ、里を飛び出したものの現実は厳しい。
そんなこんなで、僕は【何でも屋】として町で生きていこうと決めた。
でもさ、冒険者に憧れて里を飛び出した僕が、町の片隅で何でも屋として暮らすなんて夢にも思ってなかったよね。
普通の人属より少しだけ器用だった僕は、どんな仕事も人並み以上にこなせる能力があった。
だけど、人間の社会でエルフの僕が出来る仕事は限られている事も理解しているし、不器用な人間族に対して優越感を抱くなんて事もない。
こうして僕は【何でも屋】として町の片隅で、日々細々と暮らしていく事になったのだ。
「おはよう!」
朝一番に僕が挨拶する相手は、ギルドの受付嬢のルナちゃんだ。
この町のギルドは、鍛冶、木工、錬金、冒険者、料理の各ギルドの統合ギルドだ。
ルナちゃんは栗色な髪で少女っぽいあどけなさが人気の受付嬢だ。
全ギルドマスターからの信頼も厚く、いつも元気な笑顔で依頼の割振りなども担当している。
エルフの僕から見れば、人間は寿命も短くか弱き存在であり、そんな彼らが毎日せっせと働いて生活している姿には感心させられるばかりだ。
「モノさん、おはようございます。今日はどんな御用ですかぁ?」
「ルナちゃん、おはようございます。今日は仕事を探しに来ました!」
「モノさんなら依頼も選び放題だと思うんですけどねぇ・・・」
そう。実は何でも出来る僕【何でも屋】は、町では意外と噂と人気になっているとの事だ。
「先日の依頼が思ったより早く終わって時間が空いたんです」
「確か、木工ギルマスのモクさんがギックリ腰で、代わりに北の砦修復でしたよねぇ」
「予定では確か、あと40晩くらいと聞いてたんですがぁ・・・」
「前に鍛冶ギルマスのカンナさんから依頼を受けて、その時作った道具が今の現場作業にぴったり合っててね!」
「それを思い出して道具を作ってみたら、みんな思った以上に仕事が早く終わったんだ」
「うふふ。モノさんは器用ですからねぇ」
「丁度いいお仕事ですねぇ・・・あっ!2晩前に、お城で勇者様の召喚儀式があって、お手伝いの方を探してましたねぇ」
「でもルナさん、僕は力も技も魔法もレベルが低くて、とても冒険の役には・・・」
冒険者なんてとっくに諦めていた僕が答えかけた途中で
「今回の勇者様、丁度4人のギフトでパーティー揃ったらしいんですよぉ」
「だからぁ、ただの道案内役として森に詳しい案内役が欲しかったみたいなんですよぉ」
(あぁ・・・そうだよね、そんな役だよね、当然か)
元々、勇者に憧れ冒険者を目指した頃の気持ちが少しだけ再沸騰しかけて消えた僕は、ルナさんに笑顔で答える事にした。
これも町に来てから知ったが、人属は魔王の討伐のために、異世界から別な次元の人属を召喚し、勇者として魔物と対抗していたのだった。
異世界から召喚された勇者は、召喚時にギフトと呼ばれる特殊な能力が高レベルで与えられ、対魔物に高い戦闘力を有していた。
能力も成長も、町の人属には限界があるし、そもそも勇者はスタートラインが違うのだ。
そんな現実も知らず、意気揚々の里を飛び出した自分を思い出し、情けなさにうすら笑みが零れそうになった。
「・・・うん、そうだね。それなら僕でもできる仕事だ。城からの依頼は報酬も高いし是非やらせて貰うよ」
「わぁ、ありがとうマネさん♪」
「依頼受領の連絡は私から入れておくわねぇ」
そして僕は【ミッション:勇者パーティーの護衛(安全な場所まで)】を引き受ける事になった。
1本目




