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頭が良すぎたハレンチ女子とザンネン男子

作者: 高坂あおい

 俺は一般的な学生生活を愛し、普通の何気ない男子高校生として生きることに生き甲斐を感じている。

 これは、そんな俺の生活を脅かす猛獣女子と闘うそんな物語。


「樫山くん! またこんな本を持ってきて!」

「おい返せよ、怪獣。それは俺たちのバイブルだ」

「何がバイブルよ、こんなもの。それに、私の名前は柏川よ。何回言ったら分かるの?」


 自称、柏川翼。一応俺たちのクラスで学級委員長をしていると言うが、実態は俺への難癖付け係といったところ。

 そして、今日もまた俺はこの面倒な女に絡まれている。


「どっからどう見たってバイブルだろ!? この女神を見てみろよ。お前とは同じ性別とは思えないような美しさをしているじゃないか」

「は? この雑誌を破り捨てるわよ?」

「やってみろ。そしたら刑法第二百六十一条の器物損壊罪で訴えてやるからな。そしたらお前は――――」

「三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処されるって?」

「おう、おつかれさん」

「こんなの警察も取り合わないわよ」


 柏川は呆れたように言って、俺の机の上に本を置く。

 そこで気づいたのだが、さっきまで一緒にバイブルを読んでいたはずの仲間たちは教室の端の方に逃亡済みで、俺の机の周りには俺とこの女しかいなかった。

 逃げ足だけ早いやつらめ。


「あとね、さっきこの女の人が私と同じ性別に思えないって言ってくれたけどね。私からすれば、あんたは同じ人間だとは思えないわ。猿よ、猿!」

「猿と人間は違うんだぞ」

「そんなん知ってるわよ。似て非なるものよ」

「まぁ遺伝子は99%一緒らしいけどな」

「残りの1%が大きすぎるのよ」


 この女はちょこまかちょこまかと御託を並べまくる。

 ぺちゃくちゃと喋るお前の方が猿だと言いたいが、理性のある俺はなんとか踏みとどまる。


「ち、ちなみにだが、お前はその1%がどういう違いか知ってんのかよ?」

「あなたのその小さな脳みそで考えなさい」

「知らないみたいだから教えてやるけど――――」

「『ARHGAP11B』。通称、『知恵の実』遺伝子よ」

「また先に言いやがったな!」

「ちなみに以上に言うけど、人間の脳の大きさは猿の約3.5倍なのよ」

「止める隙もなく全部言うじゃねぇか! そういうとこだぞ!」


 話す速度はそんなに早くない、むしろ誰でも聞きやすいように喋っているはずなんだが、なぜだか柏川の話に割り込めない。

 これは俺がこいつとの闘いを始めた頃からの問題なのだが、未だに解決策を見つけることができていないのは些か不愉快である。


「まぁそんな哀れなあなたに朗報があるのだけれど」

「勝手に人を哀れむなよ。というか、それだと俺が猿って言われてるみたいじゃねぇか」

「みたい、じゃなくてはっきりとそう伝えたつもりなのだけれど? やっぱり脳の大きさが……」

「そこで止めんな! もういい、朗報とやらを聞かせてくれ」

「承知したわ。猿山くんと私たち人間の共通点は――――」

「コミュニケーションが取れることだろ!」

「手が使える事かしらね」

「のぉぉぉぉん」


 腹立つ女に一矢報いた。

 局所的ではあるが、完全勝利に酔いしれようとしたまさにその時に、この勝利をひっくり返しに来るのだ。


「私を誘導しようという意思が見え見えなのよ。もう少し上手くしなさい」

「しかも敵からアドバイスされるなんて!」


 あまりの敗北感に耐えられずに、頭を抱えて俯く。

 この闘いを振り返り、分岐点や反省点を見つけ出す。

 そんなことをこんな短い間に済ませて、最後に顔でも見てやろうと上を向いた瞬間。


「…………」

「…………」


 柏川の左の口角が微妙に上がってるのがわかった。

 こいつ、表情が分かりにくいだけでドヤってきてやがる。


「ねーねー二人って仲良いけど、付き合ってんの?」

「「付き合ってない!」」


 こいつに勝つのは少し先になりそうな気がした。

読んで頂きありがとうございます。

初めて短編を投稿してみました。

いかがでしたでしょうか?

一言でいいので、感想を頂けると幸いです。

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