表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/41

9段目 2層目と3層目の間 その1


「で、どういう事か説明してくれるかな?」


「「……………。」」



 俺と康太はその日の放課後、屋上で渚から説教されていた。

 コンクリの床に正座……。


 足が凄く痛いが、助けられた以上

 ここで足を崩すなど問題外だろう。


 それに康太に限れば、あの後俺が目覚めると

 顔がボッコボコに腫れあがっていて

 回復薬を飲ませる事態にまで発展していた。



「ま、全部神とやらに聞いたから、聞かなくても解るけどさ。」


「「聞いたのかよ!!」」


「ってゆーかさ、なんで私に話さない訳?」


「そもそも話せると思うか?

 それこそ眉唾物な話な上に、そもそも称号が得られる程なのか

 解りもしないんだ。そういうのを巻き込むって言わないか?」



「……………それもそっか。

 称号が関係しなければ話せても、称号が無いと

 ダンジョンに入ってもただの人、だったわよね。」


「ああ、ところで凄い気になっている事を聞きたいんだが良いか?」


「良いよ。」


「俺は確か、ダンジョンから出てからボコボコに顔が腫れあがっていた

 康太に回復薬を飲ませて治した筈だ。」


「そうね。」


「なのに何で康太の顔がまたボコボコになっていて

 腫れあがってるんだ?」


「ん?失礼な事をしたからよ。

 あの回復薬だっけ?あれでまた治せば良いじゃない。」


「1つ1万円もするんだけどな……。」


「うっそ、そんなにするの?

 …………………ヒール。」


 渚が使ったのは癒しの魔法と言うものだそうで

 これがあれば回復薬が無くとも治せるとの事だった。


「まぁでもこれも魔力とやらを使うからそう何回もは出来ないよ?」


「尚更HP回復薬やMP回復薬を買わないと駄目だな。

 だけどなぁ……。」


「お金の問題?」


「いや、そうじゃなくて……。」


 俺と康太が倒れた事で2層のドロップ品から

 宝箱まで回収していない事。

 それを原資として俺の自動販売機で回復薬を買っている事を伝えた。



「これの事?キラキラしていて綺麗だったから拾ってきたよ?」


 なんでも2層のボスであるマリオネットから金貨が1枚。

 3つの宝箱が出て、その中身も全て金貨だった事から

 全部で4枚の金貨を拾ったそうだ。


 さらに宝箱のそれぞれにアクセサリーが入っていたらしい。


「鑑定………、恐ろしいアクセサリーだな。」


 1つは微々たる量ではあるもののHPを常時回復させるアクセサリー。

 1つは微々たる量ではあるもののMPを常時回復させるアクセサリー。

 1つは攻撃した際、一定確率で相手に毒を与えるアクセサリー。



「んー、じゃあ私はMPの回復するアクセサリーね。」


「「はい……。」」


 助けられた以上、俺達に出せる口は無い。

 俺はHPの回復するアクセサリーを。

 康太は攻撃した際、一定確率で相手に毒を与えるアクセサリーとなった。


「で、この金貨いくらになるの?

 10万円くらい?確か10万円金貨ってあったよね??

 あ、でも今金の相場が上がってるからもっと?」


「渚、それ1枚で100万円だ。」


「うっそ!?」


 本当だ。

 あのダンジョンで出る硬貨は5種類。

 鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の5種類。


 それぞれ1円、100円、1万円、100万円、1億円の価値があるが

 あくまでそれは自動販売機に入れる場合であって

 金属そのものの価値ではない。



「自動販売機限定?

 もしかしてさー、ブランドバックとか売って無いの?」


「そういうのは無い。

 高級品の多くは回復薬なんかの地球には存在しないものばかりだ。

 さっきにようなアクセサリのようなものがあったが

 それも金貨5枚じゃ手も届かないよ。」


「へぇ……。

 ああ、それで康太が……。」



 渚はそもそも康太が飲料を飲んでいる事から疑い始めたが

 これでやっとどうして飲めていたのか、が判明し

 むしろ悪い事をして得ていた訳ではないと、ほっとしていた。



「なんで俺が悪事を働く事前提なのかね……。」


「康太だから?」


 まぁ仲が良いのは解るがどちらかと言えば

 そのまま半ばイチャつくのは勘弁願いたい。


「で、これからどうすんの?」


「どうするも何も、ダンジョンは全部で13層あるけど

 2層目を踏破したばかりでまだ3層目は出てないから。

 3層目が出てくるまで待つしかないな。」


「ようは事件が起きるまで待ってないと駄目って事だよね?」


「そうだな。」


 しかしその日の夜、早くも事件が起きた。

 上平橋駅南口から広がる、上平橋駅南口商店街で

 人が倒れているのが見つかったそうだ。


 死因は出血多量による失血死。


 そしてそれは暫くして、週刊誌などでは

 「現代の吸血鬼による仕業か」などと東スポこと東上スポーツでも

 俺は読んでいるのか?と思う程の見出しから始まっていて

 警察は詳細についての発表を避けているが

 どうも亡くなった人の体内の血がほぼ残っていないらしい。


「吸血鬼って、血を吸うんじゃなかったっけ?」


「だよな?それが体内に血がほぼ残っては居ないが

 それが全部道路上に出ていた、って何か違わないか?

 例えば雑巾を絞って絞って絞り抜いたとかよ……。」


「どう絞るのか、とりあえず400字詰め原稿用紙に

 書いてもらって良いか?」


 しかし踏破の夜にそんな事件が起こるだなんて、と思い

 階段を見に行くと、階段はまだ無かった。


 ゴッドラインで神様に尋ねると、どうやらダンジョンから出た魔物が

 暴れている事は確かなのだが、問題はダンジョンとの関連性が

 現状では無いのだそうだ。


 ノーフェイス、と呼ばれる魔物で顔がのっぺらぼうなので

 ノーフェイスと言う呼称なのだそうだ。


「血が好き?」


「というより顔が無いから、血で口などを描く為って言ってるぞ?」


「趣味悪っ、キモッ」


 問題はゴブリン等と違い、一度ダンジョンから出ても

 帰巣本能自体が一切無い魔物だとか。



「ゴブリンの場合は、食料として一旦巣であるダンジョンに運んで

 それから食べるから、ダンジョンに戻るんだね……。」


「だがノーフェイスにそういった本能は無いんだそうだ。」


「つまり……どういう事だ?」


「ダンジョンには戻らないから、魔物がそのまま出たままで

 次々と事件を起こす、って事になるだろうな。」


「なら、今度はダンジョンじゃなくて商店街で戦うって事?」


「称号から得られる衣装はその為に顔が隠れるようになっているらしい。

 それに称号の力はダンジョンじゃなくても使える。」


 コインロッカーを出して見せると

 渚も納得してくれたが、説明も含め鍵を渡す為でもあった。


「この鍵があれば、荷物持たなくて良いんだね♪」


「あくまでコインロッカーの中身は3人で共有される。

 それとこれをもし人にでも見られたら問題になりかねない。

 使う時は決して人に見られないように。」


「問題?」


 それこそ創作物の話から始まり、荷物がこうして収納出来る。

 それは違法なものを持ち込む事も出来るだろうし

 場合によっては盗み、いわゆる万引きや強盗にすら利用出来る。


 何しろ触れる必要性すら無く、入れたいと思うだけで出来る事などを例に

 それを良くない考えをする人物にもし知られたら。


 その手の話をすると、渚も理解してくれたようだ。



「つまり………反社会的なあれとか?」


「まぁそういうのに目をつけられたら

 今後の生活に影響するだろうし、場合によっては

 拉致監禁、断れば殺されるなんて事もありえるだろ?」


「そういう時こそ魔法でドーン!ってやっちゃえばよくない?」


「それも駄目だ、手から火だの水だの出せるなんて知れるのも問題だし

 そもそも渚は人殺しでもしたいのか?

 そうじゃないだろ、力を向ける先はあくまで魔物であり

 ダンジョン・コアだ。」


「冗談だってば。」


「だがその冗談も本気になれば出来るだけの力が

 今の俺達にはあるって事は頭の隅に残しておかないとな。

 どんな理由があったとして、これを人に向ければどうなるかとかな……。」


「匠、なんでそこに拘るんだ?」


「康太、渚。これからもしノーフェイスを倒すとした場合

 そこはダンジョンじゃないんだ。

 もしかすれば関係ない人を巻き込む可能性もある。

 俺達が意図しなくとも、人質を取られる可能性。

 俺達がミスをした事で、魔物ではなく人に攻撃が届く場合。

 それらもこれからは考えないといけないんだ。」


 特に渚と折れに関して言えば、遠くから攻撃出来る分

 そういった可能性が高い事を話すと

 2人は神妙そうな顔で頷いていた。





「ところで渚……。」


「何?」


「そろそろ正座止めて良いか?」


「駄目」


「「……………。」」


 俺と康太は寮に戻る際、あまりの足の痛みに

 回復薬を飲もうとして渚に怒られ、癒しの魔法をかけてもらった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ