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4段目 1層目 その3


 俺と康太が進んだ先には広い部屋が待ち受けていた。


 それと共に、大量のゴブリンが俺達に襲い掛かってきた。


 腹が減っているのかどうかは解らないが

 ゲギャゲギャと気味が悪い声を発しながら

 俺にも、康太にも等しく襲い掛かってくる。


 そのゴブリンが近くに来れば匂いは臭く

 見た目の汚さから、懸命に鉄パイプでゴブリンを遠ざけていた。


 鉄パイプは長さも、形も変えられた。

 但しルールは存在する。


 鉄パイプは直線の部品、90度方向を変える部品、T字に分岐する部品。

 あとは鉄パイプは端は穴が開いているのでその穴を閉じる部品。

 この4つだけであれば自由に組み換えが出来た。


 俺が選んだ鉄パイプはこのような形だ。


┣━━━━━━━━┳┳┳┓


 T字となっている部分はグリップエンドとして利用し

 分岐されている2つの穴を閉じてある。


 先端側の4つの穴は、閉じていない。

 そしてこの4つの穴から熱湯を放出し、遠ざけている。


 最初は素直に殴る、と言い選択肢を取っていたが

 俺の手に来る衝撃が強く、目の前の無数のゴブリンを殴っていると

 いつか俺が鉄パイプを支えられなくなると考え

 沸騰寸前のお湯による、火傷を負わせる事により

 負担の軽減を考えたものだ。


 効果はあり、転げ回るゴブリンに対しては

 その直上に自動販売機を召喚して、その重さで潰して回っている。


 康太は相変わらず素早く走り回り、的確にゴブリンの喉を切り裂いていた。


 ゴブリン達は決して赤くない、緑色の血を喉から噴き出しているが

 康太はそれを浴びるよりも前に、次のゴブリンへと向かっている。


 あれだけ走り回って体力が続くのか、と疑問にも思うが

 あいつは入学直後にあったマラソン大会でも上位に入る位には

 スタミナがあったと思った。


 短距離も速く走れて、長距離もいけるとか

 天は1人に何物も与えるものだと思った。


 そしてついにボスと思しき魔物が出てきた。

 それはゴブリンとは少し違い、全身がけむくじゃらで

 頭には血がついた鉄兜を被っていた。



 俺には召喚術と言う形では4つの力だけだが

 それとは別に鑑定する能力があった。


 魔物を見た時点で、自動的に発動し

 どんな魔物なのかを見抜く事にも使える力だ。


 それによればこの魔物はレッドキャップ。

 ゴブリンの近縁種、だそうでともかく素早く力もある。


 力と素早さの2つに力を裂いた魔物だった。


「康太!素早さと力が高い魔物だ!」


「へぇ、ならどっちが速いか勝負だな!!」


 康太は俺の言葉に、それまでゴブリンの相手をしていたが

 レッドキャップに標的を変えた。


 見ている限りでは素早さは互角だった。

 だが力が康太を上回っているのか、康太の短剣は次々と

 レッドキャップの攻撃に弾かれていた。



「ボスっつーだけあって、強ぇな!!」


 康太はどちらかと言うと何か楽しんでいる感じがする。


 まぁ、その割を食うのは俺であって

 残っていたゴブリンの多くが俺に迫ってきた。


「鉄筋コンクリ!!自動販売機!!」


 鉄筋コンクリートの塊を次々とゴブリンの上から降らせつつ

 熱湯を浴びせ、火傷を負った所に確実に自動販売機で仕留める。


 こういう言い方をすると、何かしっかり戦えているが

 その絵面を第三者視点では決して見たいとは思わない。


 康太が見て、笑う事は無いが

 それでも俺は滑稽な戦い方をしていると言う自負はあるからだ。



 ゴブリンがやっと全て倒し終わり、消えた所で

 康太の方を見ると、苦戦しているのが解った。


 見ていれば、レッドキャップと言う魔物は重そうな手斧を2つ使い

 康太の短剣を止め、隙を伺っては一撃を叩き込もうとしている。


 ここに手を貸せれば楽になりそうな気もするが

 どちらも動きが速すぎて、俺の力では邪魔になりかねなかった。


 だが康太もこれといって攻撃が叩き込める訳でも無く

 力勝負となれば、康太の方が分が悪い。


 何か出来ないか。

 俺の力について、もう1度考えてみる。


 鉄筋コンクリートの塊も、コインロッカーも自動販売機も

 視界の中であれば、どこにでも出せる。


 出したものは重力に牽かれる……。


「なら、もし元々何かがある場所に出したらどうなる?」


 俺の考えの下に、目の前に自動販売機を出してみる。


「いける……、あとはタイミングか。」


 康太とレッドキャップの戦いを注視しながら

 俺はそれが出来るタイミングを計った。


 そして2分後、その時が来た。

 レッドキャップが康太との距離を取った瞬間だった。



「康太!」



 俺はレッドキャップの足元に、自動販売機を。

 レッドキャップと康太の間に鉄筋コンクリートを召喚した。



 「もし、それぞれを地面に埋まる形に出したらどうなるのか」


 答えは目の前で既に試した後だから、間違いはない。


 地面の中に出そうとすると、そのまま地面の上に上がったきたんだ。


 それも勢いよく、真上に上がってきた。



 レッドキャップの足元の自動販売機はそのまま上へと上がり

 自動販売機全てが地面の上に立つようになるまでは上昇する。


 同じように鉄筋コンクリートの塊も

 地面に埋まったままにはならずに、地面の上にまで上昇し

 全てが地面の外に出た時点でピタッと止まった。


 レッドキャップは自動販売機の高さがある分、高く上に持ち上げられるようになり

 その手前には足場となる、自動販売機より低い鉄筋コンクリートの

 四角い塊が現れる形に出来た。


 レッドキャップは宙に浮いた。


 康太は鉄筋コンクリートを足場に、1段上がり、さらに飛び上がった。



「ナイスだ、匠!マルチプルスラッシュ!!」


 康太は下から上へと2本の短剣で切り上げ

 レッドキャップの両腕を切った。



「からの!エクスキューションスラスト!!」


 右の短剣が突き出され、レッドキャップの心臓の位置を貫いた。

 同時にレッドキャップが光って、そのまま塵のように霧散していった。


「しゃあ!」


 康太の声と共に、部屋のど真ん中に

 箱のようなものが2つ、現れた。


「おっ!?これは俺達に対する労いか何かか!?!?」


 少し長かったとすら感じられる戦いが終わった直後だと言うのに

 康太の興味はすぐにその箱に注がれていた。


 中には幾許かの硬貨や物が入っていたが

 よくよく考えればそれどころではない。


「康太、体育と昼飯……。」


「あ、そういやそうだ!」


 碌に中身の確認もせず、全部をロッカーに収納し

 俺達は出る方法を探した。


 一番奥に、光った円陣があり

 どうやらそれに乗ると戻れると、俺達は急いで戻ったのだが

 ここで違和感があった。


 戻り、急いで体育館に行くと

 俺と康太は体育の授業にギリギリながらも間に合ったからだ。



 体育の授業も終わり、俺と康太は考えた。



「なぁ、もしかしてあのダンジョンとやらは

 時間が進まないのか?

 そうじゃねぇと辻褄が合わねぇよな?」


「そうだな……。」


 しっかりと疲労感もあれば

 康太に限れば、右手に擦り傷すらあった。


 あれが夢だった、と言う事は無い筈だ。

 擦り傷自体は康太もあのダンジョンの中で

 受けたものだと認識していた。


 それでいて、ダンジョンをクリアして学園に戻れば

 授業にはギリギリ間に合った。


 少なくともあのダンジョンには30分以上は居た感覚がある。


 そして俺と康太のスマホが同時に鳴った。


「なんだこれ……ゴッドライン?」


 見た事も無いアプリが入っていて、そこにメッセージが届いていた。



「1層踏破、おめでとう。

 2層が現れるまでの間、ゆっくりと休んでくれたまえ………神。」


 何故か神からのメッセージがスマホに届いたのだった。

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