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3段目 1層目 その2


  【呼野 匠 が第一称号「召喚士」を獲得しました】


  【四 康太 が第一称号「盗賊」を獲得しました】



 そんな声が聞こえ、俺達2人の外見が変わっていった。


 俺は何故か鉄パイプを持ち、ローブ姿に

 顔が隠れるようにバイザーのようなもので覆われた。


 康太は短剣2本を持ち、革鎧とでも言うのだろうか。


 全身が身軽そうな服装となり、顔も隠れた。

 顔が隠れるというのは共通項だったり

 何か意味合いがあるのだろうか。


「うぉぉぉぉい!!

 なんで盗賊なんだよ!?もっと格好良いのあんだろうが!!」



「そういうな、俺なんて杖じゃなくて

 何故か鉄パイプだぞ?召喚士ってこういうものなのか?」



 2人でお互いを見ると、溜息しか出なかった。

 しかもこの服装に変わってから。

 俺が俺に出来る事が何故か理解出来た。


 そしてあの緑色の小さな魔物「ゴブリン」5匹も

 動けるようになったのか、俺達の方へと走り出した。



「まずはあいつらを倒してからだな。」


「そうだな……。」


「って事で、俺が一番乗りなっ!!」


「えっ!?」


 康太が先んじて、ゴブリン達の群れに向けて駆け出した。



「おい、弓矢持ちが居るんだぞ!?」


「いけるいける!この盗賊ってのは名前は気に入らねぇが

 どうやら俺には合ってるらしいからなっ!!」


 速い。

 体育で康太の走りは見た事があるし

 元々足は速く、クラスでも1、2を争う位だった。


 それが何の冗談か、あっという間にゴブリン達まで

 20メートルあったかどうか位の距離を

 喋っている間に走り切って、手に持っていた短剣2本で

 あっという間に喉元を切り裂いた。


 それも弓矢を持っているゴブリンも合わせ

 あっという間に5匹の喉元を切り裂いている……。


 俺が走って追いついた頃には

 倒れたゴブリン達はそのまま光の塵が舞うかのように

 消えていったのだった。



「匠!どうよ!俺の実力!!」


「ついさっき神様から貰った力であって

 康太の実力じゃないよな?」


「貰った以上は俺の実力じゃね?

 これ凄ぇんだぞ!?

 脚はとんでもなく速くなるし

 あのゴブリン?とやらも簡単に切れたしよ。

 それになんていうかなぁ……弱点?

 ここ切れば良いって場所すら解るし

 そこに綺麗にこのナイフが入ってくんだぜ!!」


「………へぇ……。」


「なんかテンション低いなぁ……。匠はどんな力なんだ?」


 康太とは言え、これあんまり言いたくないんだけどな……。


「鉄パイプとコインロッカーと自動販売機と

 鉄筋コンクリートの塊を呼び出す力……。」


 説明した途端、多分康太に悪気は無いと思う。

 だが、あまりの面白能力に大笑いしていた。


 でもこれは冗談では無いんだ。

 俺は召喚士、という称号を得て呼び出せるのは

 この4つだけなんだ……。


「いやいやいやいやいや、いくらなんでも

 呼び出せるのがその4つっておかしいだろwww」


「それがそうでもないらしいんだ……。」


 俺は鉄パイプを杖代わりにコインロッカーを呼び出した。



「康太、そのコインロッカーのどこでも良いから

 鍵を1本抜いてくれ。」


「鍵?」


 康太が1本抜いた後、俺も鍵を抜いて

 コインロッカーを消した。



「で、これが何なんだ?」


「で、これを見てくれ。」


 ゴブリンが消えていった場所に、物が落ちている。

 いわゆるドロップ品、というものだそうで

 俺達の戦利品になるらしい。


 康太はそれを1つ、手で摘まんで持ち上げた。



「どっかの海外の硬貨か?」


「いや、どうやら異世界とやらのお金らしい。

 こっちが鉄貨で、こっちが銅貨だそうだ。

 他にも銀貨、金貨、白金貨とあるらしい。」


 アイテムも落ちるらしいけど、こうしてお金も落ちるとか。



「へぇ、でこれがどうした?」


「まずこのお金はまぁ地球で使ったら絶対問題になるよな?」


「……………なるだろうな。

 謎の硬貨、そもそも金属の含有率も不明だし

 たかだか一介の高校生が大量に持ち込もうにも

 買取自体してもらえねぇだろうな。」


「それを使えるのが俺の自動販売機らしい。」



 俺は召喚士、とあったが

 どうも戦いがそう得意な訳ではなく

 どちらかと言えば補助っぽい能力ばかりだった。


「へぇ……、でこの鍵は?」


「この鍵はポケットにでも入れておけば良い。

 ダンジョンの中で、この魔物から落ちたものを放っておくと

 ダンジョンが吸収するんだそうだ。

 かと言って戦っている最中に拾うってのも

 正直隙を作るだけで、後回しになりそうだよな?」


「まぁ……そう言われるとそうだな。」


「だがこの鍵を抜いて持っていて、この落ちているものを

 【拾いたい】って考えるだけで

 さっきのロッカーの中に入るそうだ。」


「便利だな。」


「それだけじゃない。あのロッカーはいくらでも入って

 中の時間が止まるんだ。

 そして鍵を抜いて持っている人物同士で

 中身が共有される、というものらしい。」


「………なんかゲームのパーティーでも組んだ気分だな!

 で、鉄筋コンクリートの塊とか

 サンドボックスゲームみたいに積み重ねて何か作ったり出来るのか!?」


「形は自由らしいが、積み重ねても叩かれれば

 吹き飛ぶらしいぞ?精々上から落とすのが関の山だ。」


「………ならその鉄パイプは殴ると凄い攻撃力があるとか!!」


「いや、ただの鉄パイプらしい。

 あと非常に冷たい水か、沸騰寸前のお湯のどちらかが

 中から出せるらしい。」


「……………それだけ?」


「それだけだ。」



 悲しい事に本当にそれだけだ。

 召喚士、と言うのはこの4種を視界の範囲内に出せるだけで

 それ以上でもそれ以下でも無いらしい。


 しいて言えば、物理と魔法の防御力がけた違いなくらいで

 死に難いという事位だそうだ。



「これ、殆ど俺が倒す事になるのか?」


「多分な、俺はそんな素早く動けないからな。

 精々視界内に自動販売機か鉄筋コンクリートの塊を出して

 重力に従って下に落として潰すか

 この鉄パイプで殴るくらいになるだろうし

 倒す数、で言えば康太の方が向いているだろうな。」


 それに比べて、康太は短剣の攻撃技。

 必殺技のような技能、と言うものを持っていて

 素早さと器用さが非常に高さに威力を加算出来るようで

 攻撃の要にもなりそうで、俺と比べると向いている。



「うーん、ま。いんじゃね?」


「そうか?」


「だって、1人で進む訳じゃねぇじゃん?」


「そうか、そうだな……。」


「2人で進むんだから、違いがあって結果として

 お互いが助けあえりゃいいだけじゃん?」


 康太の言葉に、何か救われた感じが

 微か、ほんの微かにしたのだった。



「お前、今失礼なこと考えなかったか?」


「いや、別に。」


「なら良いけどよ。」


「勘の良いやつだ」


「何か言ったか?」


「別に……。」


 俺達はさらに奥へと進んだのだった。

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