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11段目 2層目と3層目の間 その3


「まずいな……。」


「これどうやって撮影したのよ……。」


 俺達はノーフェイスの討伐に成功はした。

 だが、大きな証拠ともなり得る痕跡を残してしまったのだ。


 それは俺達の映像が公開され

 警察官を襲った犯人3人組、と大々的にテレビで流されていたからだ。


 そこには俺達の称号衣装での姿がバッチリと映っていた。



「インビジブルって不可視になるんだよな?」


「そうよ、魔法の説明にもそう書いてあったわよ?」


「ならなんでこうして俺達の姿がカメラに映ってるんだ?」


「……………そうか、不可視だからだ。」


「何言ってんだ、匠は。」


「そっか、不可視だからなのね……。」


「なんでそれで渚は理解してんだよ。」


「不可視、ってのは肉眼で見えない事を言うのよ!

 つまり肉眼以外では見える、って事なの!!」


 俺達はすぐに「ゴッドライン」で尋ねると

 やはり俺達の考えは合っていた。


 そもそも俺達が使っている力は異なる世界のものであり

 それこそ剣と魔法のファンタジーな世界で

 魔物の跋扈する「中世ヨーロッパ風」の世界での力だ。


 その世界に、録画機器などはあるにはあるらしいが

 王侯貴族に豪商と金持ちの道楽でしかないそうだ。


 そして魔法、というのは神様が創ったものではなく

 あくまで人に魔力を作り出す機能と

 その原料となる魔素、と呼ばれる物質を与えたに過ぎず

 俺達が使っている技能(スキル)魔法(マギウス)能力(アビリティ)

 3つの系統に分かれる力は、全て魔法の世界の人々が

 そこから編み出したものなのだそうだ。



「つまり、インビジブルは不可視。

 魔法の世界に合わせて、肉眼だけに効果があるって事か?」


「少し違う、肉眼にだけ効果があるんじゃなくて

 俺達に対して、肉眼で捉えられないってだけだ。」


「だから防犯カメラなんかの肉眼でないものからは捉えられるし

 その映像は私達、ではなくあくまで映像というデータを見ているから

 肉眼で捉える事が出来る、って事よね?」


「神様の説明だとそういう事だ。」



 地球と魔法の存在する世界の違いは魔法には反映されていない。

 それが今回の俺達が見逃してしまった部分だ。



「なぁ、正直これって問題になるか?

 衣装になると俺達、顔も見え難い上に

 なにより髪の色とか完全に違うよな?」


「問題だな。」


「問題ね。」


 今の技術は例え多少の顔を隠した所で

 この映像から割り出される可能性は否定出来ない。



「ゲノム・モンタージュじゃないからと言って

 その可能性を排除するのは難しい。

 そもそもインターネットだって元々は軍発祥の技術だ。

 俺達が到底知らない技術の存在だって秘匿されている可能性もある。

 だからこそ、この映像が出回った事で俺達が突き止められる可能性は

 悪いが0ではない、って所だ。」


「それに突き止められない、としても防犯カメラ全てに映っているなら

 学園まで戻ってくる際に映っている可能性もあるわよ?」


「学園内の監視カメラは位置を確認済みだから、中では問題なくとも

 入るまで、はあるだろうな。

 それを考えれば、当面の活動にはより一層の警戒をしないとな。」


「そこまでかなぁ……。」


「そこまでになるかは正直解らないわよね」


「康太、解らないからこそ、警戒を強めた方が良いだろうって話だ。」


「念の為、ってやつか。」


「康太、それを言うなら肝に銘じるだ。

 念のため、は『信頼はしているものの、何かあっては大変なので万が一に備えて』で

 肝に銘じるは『強く心に留めて絶対に忘れないようにすること』だ。」


「違いが解らねぇ……。」





 万が一、に備えたインビジブルがこういう仕様だった事で

 最早、万が一なんてものはとっくに超えている。


 それだけ警察が有能か、と問われれば

 一般市民である俺達には解らない事が多いだろう。


 だが少なくとも日本との技術が数多を生み出している。

 それだけは間違いが無いのだから。


「少なくとも選民主義なんてものを志せってんじゃないんだ。

 俺達が既に異質な存在である事はどういう理由であれ、間違い様が無い。

 だけど俺達は人としての心が無い訳でも無ければ

 称号を除けばただの一般人だ。

 そう、俺が思いたいだけかもしれないけど

 そう思ってくれない人が居る可能性だけは潰したら駄目だ。

 全ての可能性を考えておかないと、いずれ俺達の生活そのものまでに

 危険が及ぶ可能性があるって事だ。」



「魔法少女にでもなった気分だったんだけどなぁ……。」


「魔法少女だって大抵、世を忍ぶ仮の姿があるだろ。」


「そう言われればそうかも。」



 そう、俺達は警戒を強めると決めて間もなくだった。

 今度は学園内で事件が発生したのだった。


 まず最初に犠牲となったのは生物の先生、錆川先生だった。

 突然、行方不明となったのだ。


 しかしその翌日、錆川先生は生物室の中で倒れているのが発見された。

 病院へと救急搬送され、事件性も疑われた事から警察の介入もあった。


 しかし錆川先生にはなんら異常は無く、数日で元気になった。

 ただどうして倒れたのか、と言った記憶は全くないと噂になっていた。


 しかしこれが錆川先生だけであれば疑問だったかもしれない。

 錆川先生が生物室で倒れていた日、1人の生徒が入れ替わるように

 行方不明になっていたのだ。


 そしてその生徒はやはり生物室で倒れていた。

 それも錆川先生が発見された翌日に、全く同じ場所で発見された。

 その生徒も救急搬送されたが、異常は無く数日で元気になった。


 そして、それと入れ替わるように1人の生徒が行方不明になっていた。

 そしてこの事件の恐ろしさがじわじわと出てきた。


 何しろ毎日誰かが行方不明となり、入れ替わるように

 生物室で倒れている。


 警察がどうやら生物室を見張ったが、その効果は無かったと言えるだろう。

 何しろ、目の前で突然行方不明となっていた生徒が現れる。


 それも唐突に。


 それが連日続き、マスコミが嗅ぎ付けた際のタイトルは「現代の神隠し」だ。


 不思議な現象ではあるものの必ず行方不明者は翌日生物室に出現する。

 但しそれと同時に、必ず学園の生徒が1人行方不明になる。


 その時間もバラバラで、時には授業中に忽然と消える事もあった。





「どういう事なのかな……。」


 俺達は定番の屋上で会議をしていた。

 何しろ、2層目を出た際に屋上に俺達は出たからだった。


 ここの屋上はしっかりと転落防止策が施されていて

 基本、日中は解放されていて

 その為のベンチや机などまで置かれている。


 その割に放課後に屋上に来る生徒は少なく

 集まるにはうってつけだったからだ。



「入れ替わりで行方不明ってゴブリンとかじゃねぇよな……。」


「ゴッドラインで確認したがそもそもゴブリンは1層を踏破したから

 既に魔物として出てくる事は無い、と断言された。

 むしろゴブリンに近いのはオークだと言われた。」



 オーク、豚顔人身の魔物でゴブリンよりかはより人間に近い身長だそうだ。


「ゴブリンと同じ、人を襲って食べる魔物だそうだから

 まぁ違うだろうな。」


「食べられた人が戻ってくるとか、怖すぎじゃない?」


「生物室だけに解剖目的とか?」


「噂じゃ傷1つないそうだ。」


「イーヴズドロップ(盗聴)とピックアップイヤー(聞耳)で調べておいたけど

 傷1つないのは間違いなかったわよ。」


「間違いないってどこで聴いたんだ?」


「救急搬送された病院。

 結構遠くまでイーヴズドロップ(盗聴)とピックアップイヤー(聞耳)出来るみたい。

 頑張れば東京都23区内なら全部カバー出来るわよ?

 ただあまり調べたくない場所もあるけどね……。」


「調べたくない場所?」


「渋谷とか原宿とか?

 あの辺りに飛ばすと、それこそ凄い耳がおかしくなりそうなのよね。」


「あ、ああ……雑踏の会話も拾うのか?」


「だから静かな所の方が使い勝手は良いわね。

 そうそう、康太?」


「何だ?」


「あんた、また上級生にちょっかい出したわね?」


 イーヴズドロップ(盗聴)とピックアップイヤー(聞耳)の練習に

 学園内でも試していた所に、上級生の会話が飛び込んできたらしく

 別に意図的に悪用した訳ではない、と渚は言っているが

 正直、盗聴器も無く何でも聞こえるってのは怖い。


 渚に逆らうと、俺まで何か聞かれそうだと思うも

 渚の「匠には使わないわよ?康太なら問題ないでしょ??」

 という言葉に、一応信用する事にした。


 と言うか女子って怖いな……。


「そうだな……怖いな………。」


「ふんっ!上級生のスカート捲っておいて

 私のビンタ1つで済まされただけ感謝しなさいよね!!」


 うん、俺が見た限りあれはビンタ1つとは言わず

 往復ビンタおまけ付のように見えたが

 怖いのでとりあえず突っ込まないようにした。


 康太はまぁ、相変わらず顔が腫れあがる程膨れ上がっているが

 毎回の如く、癒しの魔法で治療されている結果が目に見えているので

 自業自得、という事にしておこう。


 そして唐突に「ゴッドライン」が鳴った。


 神様曰く、異世界からこの世界で起きている事を調べるのに

 手間取ったらしいが、この入れ替わりでの行方不明には

 3層目が関連しているそうで、つい先程階段が現れたとの事だった。



「現れるの遅くない?」


「事件が起きてすぐ階段が出る訳じゃねぇんだな。」


 3人で一応、階段のある場所を素通りし

 一瞥したが、確かにこれまでなかった階段があった。



「いつ行く?」


「そんなもん決まってるだろ?なぁ、匠。」


「そうだな、捕まっている生徒が気になるし今夜にしよう。」


 俺達は今夜、3人で3層目に挑む事に決めたのだった。

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