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10段目 2層目と3層目の間 その2



「便利だな。」


「でしょー♪」


 渚が加わった事で、俺も康太も魔法の恩恵を受ける事が出来た。


 ナイトビジョン、夜でも日中のように明るく見える魔法。

 そしてインビジブル、不可視となる魔法で

 俺達の姿は商店街を堂々と歩いても、誰も気が付いていなかった。


 俺達はあれから連日、この魔法で学園を抜け出して

 商店街を見回っていた。



「増成駅方面の終電は確か0時45分だったな。」


「終電が通り過ぎればホームは電気がついていても

 駅の構内は真っ暗になるからね」


「つか電気の無駄、ってのはあるけど

 多少の灯りはあそこ欲しいよな。」


「あー、夜中の駅の構内真っ暗すぎよね。

 商店街抜けてきてから線路に迂回すれば良いんだけどさ……。」


「これまでの事件はこの終電近くの犯行が全部で3件。

 だからこそなんだろうが……。」


 北口と南口商店街を含む、上平橋駅そのものにも

 警察官が多く配置されている。


 1週間に1人づつ、この界隈から消えている。

 そして目撃証言も無ければ防犯カメラにも

 不審な人物は映っていない、という情報は

 北口の交番での警察官の会話をこっそりと渚の魔法である

 イーヴズドロップ(盗聴)とピックアップイヤー(聞耳)によって

 しっかりと聞いた為、間違いは無いだろう。



「さて、では手筈通りに。」


「ああ」


「おっけー♪」


 俺達はあの金貨5枚の主な使い道に

 回復薬などを各個が持つ事と共に、お互いの連絡が取れる

 魔導無線機、というものを購入するのに使った。


 線が無いので無線通信、で無線なのは間違いないが

 電波伝播で伝わる訳ではなく、魔力を使用する。


 無線局のようなものは無く、俺達がそれぞれ持つ魔導無線機そのものに

 ダイレクトに魔力を飛ばす事で、その魔力に音声を乗せるものだそうで

 地球に存在する無線傍受などには一切引っ掛からない。


 まぁ、1個100万円。

 金貨1枚分と、かなり高価だが導入した理由は

 3手に分かれて行動出来れば、被害者を護れるかもしれない。


 そういう考えから至ったものだ。

 ただ、皆調子に乗った結果がこれだ。



  『こちらサモン、異常なし。』


  『こちらローグだ、異常は無いぜ』


  『こちらウィズ、異常なし………。

   なんか雑誌の名前みたいなんだけど?』



 傍受されない、って言ってるのに

 何故かコードネームで呼び合う事に。


 称号衣装で居る間はずっとこれとか

 どんな罰ゲームだろう、と思うがこれは康太の案だ。


 何かゲームのしすぎか、漫画の読み過ぎかと思ったが

 どちらかと言えばスパイ映画の影響らしい。



  『ほら、コンフ〇デンスマンJPとかあるじゃん?』



 康太、映画もあるがそれは元々ドラマだ。


 それとスパイ映画じゃなくて詐欺師の映画だ。

 ダ〇子、ボクち〇ん、リチ〇ードじゃないだけマシだが。



  『小日向〇流?』


 渚、それは空手小公子の方で漫画だ。

 っていうか何で知ってるんだろうな。


 監視を続ける事3日。

 ついに4人目の犠牲者にノーフェイスが襲い掛かろうとしていた。


 それは巡回中の警察官。


  『出たぞ!』


 全く、あんたらツーマンセルって言われてただろうが。

 何で1人で巡回してんだよ……。


 ノーフェイスの姿は顔はのっぺらぼう。

 全身が全裸と言っても間違いではない姿で

 その全てが真っ黒だった。


 警察官に手の爪を伸ばし、襲い掛かる所で

 自動販売機をアスファルトへと出す事で

 その手を下から上へと跳ね上げるように妨害した事で

 警察官の頬が強く傷つけられたものの

 一命を取り留める事には成功した。



「ノーフェイスだな?」


「…………………………。」


 商店街よりかは1本裏に入った路地。

 襲われた警察官以外はここには俺とノーフェイスだけ。


 俺に掛かっていたインビジブルが俺が力を使った事で

 攻撃をした、と判断されたのか解除されたが

 警察官は頬を抑えながら叫んでいた。


 このまま対峙が続けば、いずれ住民などが出てきて

 さらに被害が増える可能性があった。


 だからこそ、魔導無線機で康太と渚に連絡も入れた。

 この魔導無線機には現在地を知らせるGPSのような機能すらあった。


 だからほんの数秒、ノーフェイスをここに

 留まらせる事が出来れば十分だった。



「スタン!」


 渚が最も早く着いたようだ。

 雷属性の魔法、気絶を引き起こす魔法で

 ノーフェイスは硬直した。


 あとは……。


「おまたせぇ!」


 上から降ってくるようにやってきた康太が

 ノーフェイスの脳天から股に掛け、上から下へと

 一気に短剣で切り裂いた。


「やったか!?」


 康太、それは生存フラグの一種だ。

 そしてそれは現実のものとなった。


 康太が切り裂いた部分が左右に開き

 そこが口となって康太に牙を剥いたのだった。


 左右の端には尖った歯が無数に並び

 真ん中には喉と思われる部分と舌。


 これは切り裂いた、と言うより

 元々ノーフェイスとはこういう魔物で

 康太の一撃は、この口そのものに沿ったに過ぎず

 多少、左右の歯の並ぶ辺りに切れた形跡と赤い血が見えるものの

 ダメージ自体は殆ど無かったようだ。



「だが駄目だな、そんな大口を開けたら。」


 俺は口いっぱいに、次々と鉄筋コンクリートを

 詰め込むように召喚した。


「ローグ邪魔!!」


 康太を邪魔と言い、横へと突き飛ばした渚は

 その口の隙間に次々と魔法を叩き込んだ。


 それはこの暗い夜中でも光ったりして目立たないようにと

 恐らく考えられた、氷属性の魔法だった。


 康太は役に立っていないか、と思われがちだが

 この時ほど、コードネームを決めておいて良かったと思う事は無い。


 何しろすぐ傍らには頬を切られ、痛がっている警察官が居るのだから。


 そう思ったが、康太もしっかり決めに来た。


 渚に横に突き飛ばされたのを利用したのか。


 渚の氷属性魔法が口の中に次々と刺さっている最中

 康太はノーフェイスの真後ろを取っていたのだった。



「バックスタブ!!」


 背後からの強襲、不意打ちってやつだ。

 それは俺と渚からも見えた。


 鉄筋コンクリの塊をパチンと消すと

 そこに左右に開いた口の中に、康太の短剣が見えた。


 背後から前まで貫くような短剣の一撃。

 それによってノーフェイスは光の塵のように消えていった。


 すぐさま、俺達はドロップを回収し

 また渚のインビジブルの世話になり、その場から消えていった。


 余力があったのか、それとも怪我した人を見過ごすのが

 心残りとなると思ったのか。


 渚はサッと警察官に癒しの魔法を使い、頬を癒していた。


 俺達は路地を抜け、商店街から遠いルートを選んで学園に戻り

 寮の前で解散した。


 ノーフェイスの討伐に無事成功した。

 それも俺達の痕跡をほぼ残さずに………。

 俺達は勝手にそう思い込んでいただけだったとは知らずに。

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