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5 亮介くんは襲撃する

 俺は医者の名前を聞くとすぐにバスに飛び乗り、県立Y病院の受付にいた。ひと月ぶりだな……

 保険証を提示しながら俺は受付の看護師に尋ねる。


升人ますひと先生にかかりたいのですがおられますか」


 そう聞くと看護師は怪訝そうに俺の顔を覗き見た。


升人ますひと先生? 脳神経四科だけど初診ですか?」


 脳神経か…… やはりな

 しかし訝しむようなその顔はなんだ?

 俺は構わず用意していた出まかせを答える。


「はい、別の病院で治りにくい病気と診断されまして…… とてもいい先生がいると友人の口コミで来てみたのです」


「分かりました。地下一階のこの部屋へどうぞ」


 納得した看護婦は俺に院内地図を見せ簡単な案内をして見送ってくれた。


 それにしても地下一階にある病室なんて初めて聞いた。

 怪しい匂いがプンプンするぜ。


 エレベーターに乗り地下一階の診療室の受付へとたどり着くと飴を口に含んだ看護婦が気怠そうに手続きをさっさとすませる。


「中田さんですね。では診療室へどうぞ〜」


 ……やはりどこかおかしい雰囲気がある

 俺は訝りながら指示されるままに診療室の扉を開いた。


「あー、どーも。君、高校生? 若いのにウチへ? 大変だねー。じゃあ問診から始めようか」


 軽い調子で白衣を着た中年の医者が俺をチラと見遣る。

 …….こいつか 

 間違いないようだ。


 ややモジャモジャの黒髪に薄い眉毛に細い目。

 白衣の名札には升人ますひとと書いてあるのでこいつが詩織の治療をしたという医者で間違いない。

 俺は升人の顔を見つめながら口を開く。


「あの、先日先生の治療を受けた二ノ宮詩織しんについて尋ねたいのですが」


「二ノ宮さん? あー、覚えてるよ。今朝目覚めたばかりで病室を抜け出してびっくりしてるよ。なに、君彼女の関係者? 家族? ってゆーか…… 神??」


 訝しむ升人に俺は何気なく近づくと肩を組むように掴み懐から取り出したものを突きつけた。


「俺は詩織の敬虔なる信者であり永遠なる魂の奴隷ですよ、先生。

 貴様の来世に栄光あれーーー」


「……ひっ! な、なんなんだ君ぃ⁉︎」


 升人は小さく悲鳴を上げた。

 肩を掴まれナイフを突きつけられてるんだ。

 そりゃあ焦るだろうよ。

 俺はビビっている升人に質問を続ける。


「……アンタ詩織にどんな治療をした?

 なんでアタマがあんな感じになってんだコラァ⁈

 こいつはナラン○ャと同じモデルだ……

 俺がスタン○使いじゃなくてよかったなあ……

 とうの昔に蜂の巣だぞコラァァァァァ⁉︎」


「おちつけよぉぉぉぉ‼︎ きみぃ‼︎」


 そんな俺の頭に後ろから何か硬いものを突きつけられる感触と落ち着いた女の声が聞こえてきた。


「ハイハイ、そこまで。中田くんだっけ? そんな物騒なナイフは床に落として手をあげましょうか。AKが火を吹くわよ」


「……チッ」


 俺は女の声の指示通りナイフを捨ててハンズアップする。

 振り向くと先程の看護婦が飴をボリボリと噛み砕きながら突撃銃の銃口を俺に向けていた。


 升人ますひとは這うように俺の側から逃げると看護婦の後ろに隠れる。


「おい! なんなんだコイツは‼︎ 山川くん! 暴漢だ! すぐに通報だ‼︎」


 しかし、看護婦はニコリと冷たい笑みを返すと銃口を升人の頭に向けた。


「先生…… この子の話も聞いてあげましょうね? 今朝あなたの治療で女の子のアタマがアレな感じでアレになったの忘れたのかしら? 責任は感じてらっしゃる? 彼が彼女の知人だとしたらこうやってアンタを撃つ権利くらいあるでしょうよ」


 そう言うと看護婦はためらわずに引き金を引く。


「いたいっ‼︎ やめろっ! 山川くんっ‼︎」


 勢いよく飛び出したプラスチックの弾丸は升人の額を強く穿ち升人は悶絶する。


 ……なるほど俺はブラフに引っかかったのか


「なんだモデルガンだったのかよ…… チッ! いっぱい食わされたぜ」


 舌打ちする俺に山川という看護婦は俺に指先を突きつけ説教を始める。


「ダメでしょ……! ナイフなんか持ってきちゃ! 刺していいのは升人先生だけですよ?」


「⁈ ひどくないかい‼︎ 山川くん‼︎」


 なんだ、殺していいんじゃないか。

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