16 黒禍
半グレのオッサンたちは鬼の形相で俺に襲いかかってきた。
ある者はバットを掴んで振りかぶってくるものもいた。
しかし、俺は難なくバットの攻撃をかわすと容赦なくその鼻面を膝で叩き潰す。
そしてまだまだ向かってくる奴らの膝をローキックで壊して投げ飛ばし、振り返り金玉を蹴りつぶす。
ここまでくるとオッサンどもの動きが止まる。
椅子でふんぞりかえるリーダーらしきおっさんは真っ赤な顔で怒号を飛ばしてきた。
「クソッ‼︎ このガキつええぞ‼︎ 全員でやっちまえ‼︎」
しかし、男どもが気勢を取り戻す前に詩織の飛び蹴りがおっさんの鼻面を穿つ。
「とおっ!」
「ぐはっ‼︎」
蹴りを受けたオッサンは鼻から流血しながら床に崩れ落ちた。
全力の跳び膝蹴りを放った詩織は尻餅をつきながら着地し、前転して起き上がる。
ヤクザ相手に無茶しやがるぜ、俺の女神は。
「詩織は待機してなさい‼︎」
「やだっ‼︎ 私もフリキュアキックやる‼︎」
オッサンどもはますます混乱するが、リーダーの男はそんな部下どもにがなり立てる。
「くそっ! 女も暴れやがる! さっさととっ捕まえちまえ‼︎」
上から号令を飛ばすだけなら誰でもできる。
全く大層な御身分だな。
戸惑いながら襲いくるオッサンどもを俺はハイキックで蹴り飛ばした。
「舐めんなよ、運動不足のオッサンども」
「うぐっ……!」
脂汗を流しながら残ったオッサンどもは俺と詩織を恐怖の目で見つめる。
「しょうもない事で金稼ぎしてんじゃねえぞ。なあ、社会のゴミどもがよ」
「くっ! クソッ‼︎」
たまらずリーダーは机をドンと叩くと今度は新たな指示を出しやがった。
「おい! 先生を呼べ‼︎ 電話をかけろ‼︎」
「は、はいっ! アニキ‼︎」
指示を受けた部下の一人は懐からスマホを取り出した。
応援を呼ばれると厄介だな。
「おいおい、何を呼ぶ気だ? 先生? 任侠映画かよ。俺は何がこようが関係ないが、鬱陶しいから邪魔させてもらうぞ」
俺はオッサンのスマホを持つ手を蹴り飛ばした。
「う、うわっ⁉︎」
詩織にも抜かりなく指示を飛ばす。
「詩織! コイツらがスマホを掴んだら容赦なく潰してやれ!」
「あいあいさー‼︎」
「クソッ! くそガキどもめ‼︎」
ますます混乱に陥りながら、オッサンどもは冷や汗を流して部屋の隅へと逃げ出す。
そろそろ王手だな。
俺は机に飛び乗り、その上を駆けるとリーダーらしきオッサンへと迫る。
「……うっ! うああああ⁉︎」
リーダーの男は間抜けな顔で、両手を身体の前に伸ばして俺を恐怖の表情で見つめていた。
……こいつを殴り飛ばせば終わりだ
そう思ったその時だった。
俺は不意に襲ってきた殺気と共に風切り音が背後へと迫るのを感じた。
俺は直感を信じて疾走をやめ、横転する。
カツリ、という音がすると壁に刃物のようなものが突き刺さっていた。
「ヘイ、クソガキども。随分と暴れてくれテルネ?」
俺が振り返ると妙な黄色いシャツを着た男が不敵な笑みを浮かべていた。
細身だが筋肉が詰まった、それでいてなんとも陰気な、嫌な殺気を放つ男だった。
「……誰だ? てめえ?」
所作から男がかなり出来る事が察せられ、俺は身構える。
リーダーの男は椅子から立ち上がり、歓喜の声を上げた。
「……黒禍先生‼︎ コイツらがカチコミしてきたんです! よろしくお願いします!」




