レンブラントside②
随分真夜中だったにも関わらず慌てて呼び出しに言ってくれたのは、今日ティターニアがレンブラントに求婚したという噂がここまで広まっているからに違いない。
寮母に呼ばれて慌てて来たティターニアは寝間着で所々に寝癖がついている。
「こんな夜中にすまない」
「いえ、大丈夫です」
ティターニアの足音が聞こえていたのか何事かと思った女子隊員たちがこちらを覗いていた。
「…団長、外に出ましょうか」
「ああ」
黙ってついていくと、泉のある庭園に辿り着いた。寝間着の彼女は薄着で月の光が当たると肌が透けて見え、心臓が高鳴る。
「これを着ろ」
出かけに着てきた上着を渡すと「寒くないので平気です」と言われた。
「俺が気にするから着てくれ」
そう言うと不思議そうにしながらも上着を着るティターニア。
無防備すぎる。こんな姿を他の男には見せたくない。
「それで団長どうされましたか?」
「昼間の返事をしに」
「…そうですか」
下を向く彼女はレンブラントとの結婚を本当はしたくないのだろう。だがティターニアでなければサジェスト嬢との結婚を止めることはできないから必死に自分の気持ちを押し殺しているに違いない…。
「ティターニア」
「はい」
「俺は元々平民だ。だから貴族と結婚観は違う」
「…はい」
「平民は愛する者と結婚する。だがら、俺たちが結婚するならば愛し愛される関係であることが理想だ」
「へ…?」
「ティターニア、予知を回避する為に俺たちは結婚しなければならない。
だが、それだけの為に結婚したくはないというのが本音だ。
…こんな厄介な俺と夫婦になれるか?」
緩い風が吹きティターニアの髪が揺れる。緑色の瞳はこれでもかという程見開き、口はぽかんと開いたままだ。
そこにいるティターニアは騎士団で活躍する女性騎士ではなく、18歳の一人の女性だった。
「…っ、はい…!」
緑色の瞳が涙で潤んでいる。今にもこぼれそうなそれを右手の甲で拭うと、「へへっ」と笑うティターニアに内側から温かい気持ちが湧き上がってくる。
「団長は、「レンブラントで良い」」
「え、あの…」
「俺もこれからはアンと呼ぶ。騎士団にいるときはティターニアだが」
「は、い…、レンブラント様」
アンに名を呼ばれると先ほどまでの温かい気持ちが全身を巡り、思わずアンを抱きしめた。
「レ、レンブラント様っ…!」
慌てているアンは顔を真っ赤にして、抱きしめられるがままになっている。
「名残惜しいが寮まで送ろう」
「はい…」
小声で返事をするアンを微笑ましく思いながら、髪にキスをすると更に真っ赤になって目を回している。
「可愛いな」
そう言うレンブラントに泣きそうになりながらも睨むアンは可愛いとしか言いようがない。
「レンブラント様、変わりすぎです…」
「両親に倣っているのだが、不愉快だったか?」
「いえ…、ですが、いきなりは心臓に悪く…」
「…善処する」
「ぜひそうしてください…!」
いきなり長年相思相愛の夫婦と同じことをすると心臓に悪いらしい。
夫婦とはこういうものなのだと長年見てきたことを実践してみたが、恋愛初心者には難しいことだったのか。何から始めていいのかわからないので、折を見てユースに相談することにした。