アンside③
「アンは気にしていなくてもレンブラントは気にするだろう」
「そう、かもしれませんね…」
レンブラントは平民でありながらも騎士団長へと上り詰めた男である。
騎士団長になる際、爵位を賜らなければならないという話を全力で逃げていたぐらいに爵位に興味がない男だ。前任の騎士団長は貴族でそこそこ実力のある者が選任されていたが、不正を働いたことにより失脚。そこで白羽の矢が立ったのは宮廷魔導士団に所属しつつも騎士団に頻繁に出入りしているレンブラントだった。
なぜ所属が違うのに騎士団へ来ていたかというと彼は優秀な魔導士で攻撃魔法は言わずもがな、回復魔法も得意だったからである。
魔物にやられた傷を治すために頻繫に出入りしていた彼は平民でありながらも実力は一流。おまけに部下からは厚い信頼を得ている人徳のある持ち主だった。
本人は初め騎士団長の任に就くことを嫌がっていたものの丸め込まれてその任へ就いてしまった。
だが騎士団長になったからには貴族と話をすることも多く、爵位を賜らなければ入れない区域もあった。そんなことは知らないと言っていたが、王の説得により致し方なく叙爵を受け入れた。
当時31歳のレンブラントには頭が痛い問題だっただろう。その後、功績を上げて上の爵位を与えると言われたときには全力で断り「もし再びこの話が出た場合、騎士団長の任を降りる」と言ったことにより彼は男爵止まりとなった。
度々来ているであろう貴族の招待は全て断っているといつだったかユースが言っていたので貴族社会とは無縁と言っても過言ではない人だ。
「…ともかく父上には予知のことを伝えておく。アンと結婚の話も伝えてはおくがどう反応するかわからんな…」
「叔父さんは昔から私のことを気にかけていたので…」
叔父さんこと王様であるクルティウスは自分の子供は男しかいないからか、昔からアンのことを溺愛していた。
こと恋愛において父や母は自由主義にも関わらず、叔父さんはとても厳しい。
王宮に遊びに来ていた時、偶々会った貴族の子息に好意を持たれた時には片っ端からその子息の周辺を調べ上げ叩き潰す程だった。まあその家は不正に手を染めていたので叩き潰して正解だったのだが。
「まあ何とかするよ。それよりもレンブラントにはどういうつもり?」
「素直に話をするしかないかと。サジェスト嬢と結婚されるよりはマシです」
「ということは、予知についても話すつもりなんだね?」
「はい。団長としては理由がわからないまま求婚されたとしてもお断りされるでしょうし、確実性を取るためには話さなければならないと存じます」
「仕方ない、か…」
「未来の旦那様なので話しても問題ないと思います」
「アンの中では確定しているのか」
「これ以上の案があるとでも?」
「ないが…」
「では決定ではありませんか。今から求婚してまいります」
「おい、待てっ、」
後ろ手にアンを引き留めるディーンハルトの声がしていたが、頭の中で求婚することしか考えていたなかったアンには聞こえていなかった。