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アンside①













「やばいやばいやばいやばい…」




小声でブツブツ言うのは前世の言葉。


彼女は日本で死に、そしてゲームの世界である『イグナリア』に転生した少女だった。

前世での死因は定かではないが、このゲームのことはよく覚えている。なぜなら格闘ゲームが好きな彼女がやりこんでいたゲームの一つだったからだ。


強力な魔物を倒すゲームで、主人公は辺境伯に生まれる長女のアン。



つまり私だ。



アンは辺境騎士団で力を尽けるも更なる強さを求めて王宮騎士団へと入団する。その騎士団の団長であるレンブラント=ディスペルはこのゲーム史上最強の人間と言われており、彼から指導を受ける為だ。

直接指導となると常に上位成績が求められるが、目に留まれば声を掛けられ指導を受けることができる。そして彼から指導を受けたアンは更なる力を手に入れ、魔王との戦い勝つことができるのだ。


ざっくりとしたストーリーしかないのは元々が格闘ゲームなのでそこまでストーリー性を求められていないというのがある。それ故に前世でやりこんでいたゲームと気づくまでに随分と時間がかかった。それにゲームの中では予知能力はアンに備わっていなかったのも原因の一つである。


この予知や力は6歳の時、高熱を出したことで顕現した。

そしてその時、朧気ながらに前世も思い出したのである。父や母は私に予知と力があることに興奮し、必死に鍛錬を積ませた。そのせいか貴族令嬢らしい振る舞いというのは最低限しかわからないほどだ。


予知の精度は年々上がっていき12歳になる頃には100%当たるようになっていた。ただ精度が上がった分、以前より予知の頻度が下がった。それが、つい昨晩予知してしまった。



最強の男がサジェスト嬢の傀儡となり、世界を滅ぼす姿を。



レンブラントが最強たる所以は魔法の力による。魔力が非常に高く無尽蔵と呼ばれるチート。そんな騎士団長が傀儡となってしまえばこの国だけでなく、サジェスト嬢の思うがままにこの世界を変えられてしまう。



ダメだ、何か考えないと。



レンブラントのことを考えていたからだろうか。廊下の向こう側から歩いてくるのが見えた。隣にはユース副師団長もいる。2人が話している途中に貴族令嬢たちが彼らを取り囲み何やら話しているようだった。


話しかけている貴族令嬢は顔を赤らめて必死だが、ニコニコ話すユースとは違い、レンブラントは仏頂面をしている。とにかく早くこの場を離れたいと言った様子だ。




「…これだ!」




そうして思いついたのが、アンとレンブラントの結婚だった。

結婚に関してアンは幻想を抱いていることはなく、貴族といえば損得勘定で婚姻するものだと理解している彼女は、自らが婚姻することによってレンブラントとこの国が守られるならそれで良いと考えた。


もちろん両親のように仲が良い夫婦というのに憧れがなくはない。だが今さっきのように貴族令嬢に仏頂面をするレンブラントは少なくとも浮気をすることは無さそうだし、アンにはない強さを持つ彼となら結婚しても良いと思った。




「問題はどうやって団長を説得するか…」

「おーい、ティターニア。どうしたんださっきからブツブツ」



先ほどから隣にいた同期のイオが不思議そうにしている。イオは女性に劣らず噂好きで口が軽い。


外堀りから埋めていくか…。




「ん?どうやって騎士団長に婚姻を申し込もうかと思って」

「は?」

「だから、騎士団長に求婚するんだよ。良い案ないかな?」

「はぁぁぁああああああああ!?!?!?」




耳がキーンとなる煩さに思わず顔をしかめる。大声を出したイオは「おま、は。どういう?え?」と困惑しているようだ。完全に私が悪い。




「すまない。そんなに驚くことだとは…」

「いや、驚くだろ!こんなの驚かない方が可笑しい!アンが男に興味持つとか明日雪か嵐が来るだろ!!」

「降らないし、私も女だぞ?男に興味くらいはある」

「あんなに男に囲まれて生活しているにもかかわらず涼しい顔で、好意を持たれて告白されても笑顔でお断りするお前からそんなこと言われた日には、俺はどうしたらいいかわかんないぞ!!」

「皆に広めれば?」

「いいのかよ!?!?」

「隠すことじゃないし。ちょっと用事が出来たから先に戻ってて」

「お、おう…」




イオから離れると、暫くして騎士団から大声が聞こえてきた。イオがきっと皆に言いふらしているのだろう。


次は王への謁見だ。ティターニアは予知した時、どんな内容であれ王族に伝えなければならないという決まりがある。ただその能力を持っていると知っているのは王族、そして取次をしている歴代の宰相だ。


宰相は誓約の魔法をかけられ生涯それを他言することはできない。その誓約を違えると死を迎えるという恐ろしい魔法だ。













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