粉砕
『へえ…面白い技持ってんじゃねえか。』
天にまで上る巨大な光の柱――それを見ても白蛇は余裕を崩さないでいた。
受けきる自信があるように。
「受け止めてみろ、化け物!うおおおおおおおっ!!」
雄たけびを上げて光の刃を振り下ろす。少し遅れて光の柱が蛇の元へと落ちてくる。
地を割る巨大な剣のようなそれを。
がしりと。
「なんっ…!?」
白蛇はその顎で易々と受け止めた。森ごと二つに割ろうとした光が空で止まる。
「馬鹿な」
山すら破壊する一撃を止められ唖然とする。
剣に力を入れるがびくともしない。
『ククッ』
白蛇はにやりと笑い顎に力を込めて―――ばきんと。
まるでお菓子のように根元から光の剣をへし折った。
「うああ…! 光の剣が!俺の最大の技が…へし折られた!?」
『まあまあ楽しかったぜ、クズ野郎。これで終いだって言うなら――俺の番だな?』
折った光の柱を放り投げると地面に着く前に霧散して消えた。
遠くから眺める少女も勇者も。あまりの衝撃に身動きが取れなかった。
知ってか知らずか白蛇が剣士に這いよった。
「ああ…待って、助けてくれ――そうだ、逃げ」
『逃がすと思うかよ。蛇の速さを舐めるなよ…一瞬早くテメーに食らいつくぜ』
ひい、と剣士は声を上げた。今まで負けたことのない男が初めての敗北に直面している。
しかも相手は巨体――剣士は初めて、恐ろしい相手と戦っていたことを知った。
『さて――喰らう前に言っておくことがある。よく聞けよ』
「…え?」
『お前はそれを努力の結果だと思い込んでいるようだが…そいつは大きな間違いだ。』
『お前の力じゃあねーんだよ』
「勇者様が、勇者様が食べられちゃう…!!」
そして遠く離れて見守っていた少女がその場から走り出す。剣士が敗北したのは遠目からでもわかった。
自分にできることがなくても飛び出さずにはいられなかった。
一目散に走り続ける。
「俺の力じゃ…ない!?どういうことだ、お前は何を言ってるんだ!」
『なあに、今にわかるさ…俺様に喰われて、お前は無力なただの人間になっちまうのさ』
「な、何を」
『食事の時間だ』
ぐあ、と剣士の目の前で巨大な口が開いて。
「駄目…ダメエエエエエ!!!」
少女の叫び声が届くこともなく。
ばくん
剣士は飲み込まれた。