困惑
「馬鹿な…確かに俺の剣は貴様を捉えたはずだ!!」
『ククッ…どうした?一発芸は終わりかよ。だったら今度はこっちの番だぜ!!』
「!!」
真横から巨大な蛇の尾が振り下ろされた。
「くっ!!」
寸前で大きく跳ねるようにかわし白蛇から距離をとる。
凄まじい一撃は森を揺らした。
(剣の一撃が外れたのか?今までそんなことはなかった)
剣士の表情から困惑しているのは明白だった。
ならばと剣士は目に意識を集中する。
「【鑑定】の力で奴の能力を看破してやる!」
彼には普通の人にはない不思議な力があった。
その人間離れした剣技もそうだが――眼に意識を集中させることで、相手の能力が自分の目に数値として現れるのだ。体力、攻撃、防御、素早、魔力、器用、属性。
機械のように正確ではないが大まかにだ。
そして弱点や種族なんかも観ることができる。
これによって相手の大まかな強さを測り見抜く。
この力を持っているのは彼自身だけだ。
しかし――
「なんだ…!? おかしい、こんなことはありえない!!」
『どうした?何か見えたかよ?ええ?』
攻撃:2ソソソ
防御:ラオ???
魔 :◇◇
KY:泌鴨
素>:(((((
弱点:―――
属性:属性属性属性属性
種族:上
現れたのは狂った表示の数々。今までにない情報に剣士はうろたえた。
その情報は白蛇が異質な存在であることを示していた。
「何なんだお前は…!! ホントに魔物か!?」
『俺あただの蛇さ…ククっ』
にやにやと顔を歪める白蛇を見て剣士はたじろいだ。
「どうしたんだろう…」
離れて眺めるリスの少女は戦いの様子を見て疑問に思っていた。
あらゆる怪物を一撃のもと葬り去ってきたといわれる最強の剣士が森の中のただの大きいだけの白蛇にてこずっているように見えたのだ。
しかも明らかに困惑しているのがなんとなく見てとれた。
「もしかして、勇者様でも勝てない魔物?そんなはずないよね…?」
勇者でも勝てないとしたら人類に勝てる相手なのだろうか。
「負けないで、勇者様…!」
『さあどうした?隠し芸はこれで終わりかよ?』
「だったら――こいつはどうだ!」
剣士は剣を高く掲げた。
すると剣を光が覆い巨大な光の剣と化す。その光は天高く雲にまで伸びていた。
太陽にも負けないほどの眩しい光を放つ剣を両手で持ち叫ぶ。
「これが俺の大技だッ!【聖剣シャインカリバー】!!」