死骸
『うおおおおおおおおおおっ!!』
叫び。どうにかして白蛇が重力の魔法から逃れようとする、が。
もはや手遅れだった。
円盤から真っ直ぐ伸びた光の柱が、白蛇が落ちた大穴へ直撃する!!
凄まじい威力と熱量が大地を穿ち、周辺を衝撃と突風が襲った。
―――――――――――――――――――――――――――――
「わああっ!?」
遠くで見ていたクルルとプレシアの元にも突風が襲い掛かる。
伸びる光の柱を見て、プレシアはガッツポーズをした。
「やったね!直撃だよ、勝ったよクルルさん!!」
「え、ええ…」
勝って、しまった。
白蛇に脅迫されていたのも事実だし、これで晴れて自由の身。
これでよかったのか―――と、その時。
奇妙な違和感を感じた。
「これは…?」
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もうもうと穴から黒い煙が上がる。
穴の中はその一撃によって黒く焦げていた。
「や、やったのかソル…」
「改めて凄い威力でしたわね…」
「力の結晶体だからね…さて」
お互いの無事を確認しながら、魔術師団の皆が穴を覗き込む。
そこには頭から上を地面に突っ込んだ形の、黒く焦げた白蛇の死体らしきものがあった。
もはや原形を留めていない、何かの塊
「ぐちゃぐちゃだな…なんつー威力だよ」
「なんで埋まってるんでしょうか…」
「…たぶん逃げられないと悟って、潜って逃げようとしたんじゃないかな」
あの時重力魔法の力もあって、下方向へ逃れるには良い作戦だっただろう。
ただ一足遅かった、それだけだ。
「さてと…みんな集まってくれ。戦いは終わった」
ソルが皆を呼び止め、集まってくる。
「こうして無事に破滅の光を退治することができた…みんなのお陰だ」
「僕達は国を救ったんだ、さあ胸を張って―――」
その時だった。
ぐらり。
大地が揺れる。
何かを吐き出すように。
ソルを含め、みんながバランスを崩した。
「な、何だ…!?」
ソルが地に膝をつく、一瞬の揺れは気の抜けた魔術師団を崩すには十分だった。
突如として魔術師団の集まる場所から、地を割いて巨大な何かが吹き上がる!
「アレは…そんなバカな…!!」
吹き上がる巨体が、上空の円盤を素早く叩き落とす。
太陽を背に、飛び上がった巨体――白蛇が、そのまま魔術師団の元へと着地する!
間髪入れずに巨大な尾が辺りに居た人間を弾き飛ばした!
「ああっ!!」
「がはっ!」
「スレッジ!ネリカ!みんな!!」
凄まじい衝撃が魔術師団を襲う。
弾き飛ばされ転がる中、
間一髪、ソルだけは魔法で浮かぶ事で回避する事ができた。
しかし、避けられたのは彼だけ。白蛇と勇者が再び対峙する。
ただし今度は、お互いに一人のみ。
『よお、地獄から帰ってきたぜ…クソ野郎!』