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愚策
取り出した短剣を逆手に持ちそろりそろりと白蛇の巨大な頭に近づいていく。
何処に突き刺してやろう。額?口の中?いやこの小さな刃では大した傷にはならない。
それなら生物共通の弱点――眼だ。
突き刺せば怒り狂って襲い掛かってくるだろうか。ひょっとしてビビッて逃げるかもしれない。
一瞬意識がその後の事に向いた瞬間。
『おい』
少女はまるで時が止まったかのように硬直する。
真っ赤な眼がしっかりとこちらを捉えていた。
『そんなもんで俺を殺せるとでも思ってるか、クソガキ』
ずるりと顔を持ち上げる。少女の体が蛇の影に覆われた。
『そんなに死にたいのなら喰い殺してやる』
「ひえ」
言葉が出なかった。地面にへたり込む。
(やっぱり無理だったんだ、勇者でもない私が仇をとろうだなんて――)
がば、と開いた大口に吸い込まれそうになりながら。
そこに。
「―――待てッ!!」
男の声が響いた。