格差
白蛇に数百はあろうかという魔物達が一斉に飛び掛かる。
白蛇を上から圧し潰すように、積み重なり、食らいつき、それぞれの武器を白蛇に叩きつける。
あっという間に魔物の山が出来上がる。
さながら蟻が獲物に群がるようだ。
削り取るというのは、硬い相手にとって確かに有効であった。
小さな破壊を繰り返し、最後には大穴を開ける。
だが。
「は、ははは!!いいぞ!潰せ!圧し潰して殺してしまえ!!」
魔王の高笑い。ざまあみろとほくそ笑む。
「…何だと?」
しかし、次の瞬間、目を疑った。
魔物の山の上半分を吹き飛ばし、白蛇が姿を現したのだ。
天使のような巨大な白い翼を広げて。
『うるせえぞ雑魚ども…纏めて消し飛ばされてえか!!』
そして一羽ばたき。それだけで100メートル、上空へと飛び上がる。
勢いと風圧で更に魔物達が吹き飛んでいく。
「翼…!?」
空を飛ぶ魔物や竜は沢山いるが、翼のある蛇というのは見たことがない。
もはやただの魔物ではないと、いやそもそも魔物ですらないのかもしれない。
そんな考えをよそに、白蛇は魔物達を見下ろす。
『格の違いを教えてやるよ』
そう一言。もたげた頭を上に曲げ、息を大きく吸い込んで――
≪神の息吹≫
青い炎の息吹が放たれた!
炎は真下に向かい、大地に直撃し――
青い炎が、波のように、波紋のようにして周辺に凄い勢いで広がっていく!
燃え盛るそれに、魔物達が飲み込まれていく。
「うああああ!!」
魔王が人間へしたように、今度は白蛇が魔王へ。
一方的な力の差を見せつけた。
魔王は熱風に思わずマントで顔を隠す。
離れてみていた兵士とクルルには暖かい風と焦げる臭いが届いた。
白蛇の力か、青い炎は遠くまで広がらず、途中で前触れもなく消え去った。
そして、魔王が顔を上げた――その視線の先に。
「…!!」
大量の倒れた魔物達。
全身の至る所に焦げ跡を残し、黒い煙を上げながら。
大量の魔物の屍が散乱していた。
その中心にそびえたつ、白い大きな影。
地に舞い降りた白蛇がずりずりと魔王に近づいていく。
『さあ、観念しな…お前の駒も、魔法も技も全部打ち破った。てめーの負けだ』
「…っ!」
その言葉に、魔王のプライドが、怒りが震え立つ。
「ふざけるな!僕はまだ負けちゃいない!!」
「まだ試してない魔法は沢山あるんだ!片っ端からぶち当てて…!!」
「止めろ!」
魔王が叫ぶ、と同時に。どこからともなく声が響く。
白蛇ではない、観戦してる人間達でもない。
声の主は――
「…もう止めてくれ…マスター」
魔王の最も信頼する仲間。
悪魔の少女に支えられて立つ、竜の女性だった。