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神喰の白蛇  作者: ミスト
魔物の主
16/40

覚醒

『へえ…殺すときたか』



相対する一人と一匹。だがその身長差はとんでもなく大きい。

動く小山を相手に、人が何をできるというのか。


『魔物がいない魔物使いってんじゃ、話にならないがな…ククッ』


勝利を確信したかのように白蛇は尻尾で地を叩く。上機嫌だ。

答えることもなく、少年が口を開く。


「ホントはまだやるタイミングではなかったんだけどね…でもいいや」

「こうなった以上は仕方ない、ついでだよ」


「君は『ついでに』殺す」


少年は片手間で始末すると宣言した。…同時に体から激しく魔力が吹き上がる!

放たれる衝撃が草木を揺らし、風を起こした。兵士達もクルルも、思わず顔を伏せた。

白蛇と少年だけがただ立っていた。


観戦する人間達が恐る恐る目を開ける。―――そこに居たのは。



血のように紅いマント。

闇より深い角。

そして威圧する―――赤い目。


そこに居たのは小さな少年ではなく。その姿は紛れもなく―――


「魔王…。」


誰かが呟いた。

少年は魔の王へと変貌を遂げた。もはや優しげな少年の面影はどこにもない。


「魔王だって…そんなバカな話があるか!リク殿はどこに行ったんだ!」

「いえ、我々にはリク殿が魔王になったように見えましたが…」

「そんなわけがないだろう!魔王は敵だぞ!我々の国を脅かす敵だ!」


今まで幾度と信じられない光景を見てきた兵士達だが、ここ一番で大きく狼狽える。

今まで国を助けてきた少年が、今まで国の住民を消してきた魔王が同一人物だった。

その真実は凄まじい衝撃を与えた。

無論勇者として信じてきたクルルも例外ではない。何が真実で何が嘘なのか、彼女は頭を抱える。

魔王は一言も喋らない。


それをよそに、涼しい顔で白蛇は敵を見据える。

『…で、それでどうしようってんだ?姿形を変えるだけならそこらの人間でも――』

気づく。元少年の魔王が、手を掲げている。

その先の先、青い空に広がる大量の朱い槍。魔力で生成されたそれは、シンプルな形状ながらもひどく鋭く、巨大だった。

それが空中に何本も浮いていたのだ。


『成程、こいつが勇者―――いや、魔王様の力ってわけかい!』

「貫け」


魔王が冷酷に口を開く。まず槍が一本、目にも止まらぬ速さで射出される。

竜の息吹の何倍ものスピード、まさに撃ち出されたというのが正しい。

白蛇は避ける暇もなく、槍に貫かれた。


『がっ…!?』

蛇が目を見開く。竜の一撃を絶えた鱗を貫通する。

それは槍の威力と速度が凄まじいことを物語っていた。


「次だ」

続けざまに二発、三発。次々に槍が放たれていく。

一撃を受け、槍が刺さったままの蛇に避ける暇などなく。

刺さるたびに衝撃で体が飛ぶ。


「さあ――止めとこう」

魔王が腕を振りおろす。残っていた槍が一斉に白蛇へ向かっていく。

真っ赤な雨が斜めに白蛇へと降り注いでいく。


『ぁ』

大量の槍に串刺しにされ、身動きが取れなくなった蛇が、何かを喋ろうとしたが。

開いた喉の奥に最後の一本が突き刺さり―――



白蛇は動かなくなった。




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