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神喰の白蛇  作者: ミスト
魔物の主
15/40

反旗

とうとう蛇の体に牙が突き立った。

白蛇が口を開く――



『墓は要らねえ――ここで死ぬのはテメーのほうだからな!!』

「ラニス!尻尾だ!」

「!!」


竜が危険を察知して飛びのこうと―――いや、一足遅かった。

大人しくなっていた蛇の尾が、目を離した隙をついて竜の体に巻き付いたのだ。

そして腕が離れた瞬間、抑えられていた頭の部分も意気揚々と竜の巨大な体に巻き付く。

あっという間に竜の体を白蛇が覆った。


『形勢逆転ってやつだな、ドラゴン野郎』

「貴様…ハナからこっちが狙いだったか…!!」

『その通り』


さっきまでの諦めはどこへやら、白蛇はしてやったりと不敵な笑みを浮かべる。


『俺様が牙でしか攻撃しなかったのは、テメーの意識を反らすためよ』

『凄まじい毒があると知っちゃあ、誰だって警戒する』

『テメーがギリギリまで近づくのを…油断を待ってたんだよ』

「ぐ…!!」



ぎちぎちと竜の体を締め上げる。まるで万力のように。

余りの力に竜が声を漏らす。


「ラニス…!」

思わず飛び出しそうになるリクを悪魔の少女が抑える。

「駄目だよリクちゃん、危ないって!潰されちゃうよ!!」

「だけど…!」

激しい戦い、もどかしさに狼狽する。


『蛇の力っつーのは強力でね、こうやって締め上げて殺すのさ』

ぎちぎちと万力が力を更に入れる。竜の体から悲鳴が上がる。

食物連鎖の王ともいえる存在が、敗北しようとしていた。


『こいつで終わりだ…一思いにやってやるよ!』

「が…うが…!


あああああああっ!」


みし…みし…ばき、ばきばきばきごき、ぐしゃっ


潰れる音が響く。あまりの光景にみんな動くことができなかった。

竜はしばし痙攣した後…くたりと動かなくなった。


するり、と蛇が竜を開放すると、巨大な竜は元の人型へと戻っていった。


「ラニス…そんな、ラニス…!!」

駆け寄る調教師と悪魔の少女。人の形になった竜の体に触れる。

「ぐっ…」


呻き声。凄まじいダメージだが、まだ死んではいないようだ。

それを感じ、安心したように息を吐く。

「よかった、まだ生きてる…!ラニス、今助ける…!」

「ラニスちゃん!良かった、今回復魔法をかけるから…!」



『おいおい、俺様の事忘れんなよ』


挑発するような声。白蛇は不敵な笑みを浮かべていた。

ぴくり、と声に反応する。リクの体の中からふつふつと殺意が沸き上がる。


「…ラニスを頼む」

「リクちゃん…うん、わかった!」


ゆらりと立ち上がるリク。悪魔の少女は軽々と竜を持ち上げ、離れていく。


「僕は―――アイツを殺す」


今までにない怒りを顔に浮かべ、少年は白蛇へと振り返った。


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