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神喰の白蛇  作者: ミスト
魔物の主
14/40

巨戦

『次の相手はテメーか…ドラゴン野郎』

「食い殺してやるぞ、白蛇野郎」



二匹の巨体が睨み合う。巨大同士の争い。そこに人が入る隙間は無い。

兵士達もクルルも、ただ黙って見守る事しかできなかった。


「千年竜…その名の通り千年生きた巨大なドラゴンだ。いや、千年生きた竜だけがその名を授かる」

「竜の生は長くて500年…その死因は魔物の縄張り争いや人間の侵略等だ」

「だが、稀に現れる千年生きた竜は…地を割るほどの力がある!!」

竜を鼓舞するようにリクが叫ぶ。竜の尻尾がぐわんと揺れた。


「ふっ、そう褒めるな…さっさと終わらせてコイツの肉でパーティでも開こうじゃないか、マスター」

いつでも飛び掛かれる態勢。蛇も竜も相手の出方を伺う。


『随分余裕だな、え?いいことを教えてやるよ…俺様の牙。こいつにゃ強力な毒がある』

『体にぶち込めばあっという間にお陀仏よ』


開く蛇の口から鋭い牙を覗かせる。その切っ先から液体が垂れる。


「成程、ご忠告どうも…だが簡単にその牙が私に届くかな?」

『届くさ…こうやってなあッ!!』


蛇の体がバネのように縮み、跳ね上がる!そのままの勢いで竜へと飛び掛かる!


「容易い」


すっと巨体に似合わぬ素早さでそれを避ける。蛇の牙はむなしく空を嚙んだ。

巨体が暴れる度に大地が揺れる。


『おいおい避けんなよ、狙いが定まらねえ』

「素直に喰らうほど馬鹿じゃないさ…さあ、今度はこちらの番だ!」


竜の口に赤い光が覗かせる。口の端から火の粉が漏れ出て――


「竜の息吹だ…受けてみろ!!」

触れるあらゆるものを焼き尽くす、灼熱の炎が真っ直ぐに白蛇に飛ぶ。

そのデカさにも関わらず、とんでいくそれを。


『おっと』


白蛇も躱した。避けた先の大地に熱が広がる。


「成程…これはこのままでは泥沼か」

『長引くと面倒だろ?俺様の勝ちで終わらせてやるよ』


再び白蛇が構える。体をばねのように折り畳み、飛び上がる寸前。


「断る」

『んじゃあこの毒でくたばりな!!』


そして、飛び掛かる。開始はさっきと同じ。

だが白蛇は竜の目の前に着地し


『いただきだオラア!!』

連続で嚙みつきを繰り返す!

「うおっ!!」

噛みついては引き、再び噛みついては引く。

勢いに押され、牙を躱しつつも竜が押され後退していく。

直撃すれば死ぬ、良くて瀕死。

下手に手を出せば刺されかねない。


「首だ!首を掴むんだ!」


そこに少年の声。戦いを見守っていたリクからの声だった。


「マスター!…了解した!!」


主人のアドバイスに戦意を取り戻した竜は、牙を躱すと同時に前足を蛇に向けて振り下ろす。


『ぐあっ!?』


轟音とともに再び大地が揺れ、砂煙が吹き上がる。

地面に叩きつけられ、白蛇は上から喉の背を押さえつけられる。

もう片方の前足も振り下ろし、体を更に抑え込む。

兵士達から声が上がった。


「よし…決まったな。もう貴様の牙は届かん」

『げっ、くそっ…マジかよ頭が持ち上がらねえ…何つー馬鹿力だ』


蛇の長い尾が恨めし気に暴れまわるがやがて諦めたように大人しくなった。


「私の勝ちだな…貴様は頑丈だ、食い殺すにも苦労するというものだ」


「だがマスターのために。貴様はここで果てるのだ」


「墓は立ててやろう」


『いらねーわ馬鹿』


白蛇の減らず口にやれやれといった様子で――竜は白蛇へと牙を突き立てた。

今までのお返しとばかりに。








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