談義
「白い蛇、ね…」
庭に置いてある木製のテーブルと椅子に、少女と少年たちは腰かけていた。
「するとなんだ、その二人の勇者達は白蛇にやられたというのか?にわかには信じられんが…」
ラニスが額に皺を寄せて少女の話を疑う。
「そうよね、勇者ってリクちゃんと同じ位強い人たちでしょ?やられちゃったの?そんな魔物に?」
悪魔の少女も疑問を口に出す。
「信じられないかもしれないですけど、事実です…」
こればかりは実際に見てもらうしかないが、何せ伝える手段がない。
思わず俯くクルルを眺め、調教師はさらに質問する。
「で、それを僕にどうにかしてほしい、と」
「は、はい…お願いできますか?」
「マスター、私からも頼む。このようなか弱い少女を脅すなど…許せん!」
ラニスの腕がわなわなと震えている。その瞳はどこか遠くをにらんでいるようだった。
「私はどっちでもいいけどねー。ああでも、仲間になったら凄い戦力になりそうだよね!」
悪魔の少女が閃き、悪戯っぽく笑う。
しばし無言になった後、急にリクは立ち上がった。
「わかった!君のために、そして世界のためにその白蛇を何とかして見せよう!」
「あ…有難うございます!!」
ぱあっと少女の顔が明るくなる、と同時にある疑問が出てきた。
「あ、だけど…魔王、とかは良いんですか?何か近くで暴れているらしいですけど…」
今のところは平和な屋敷の庭を見回しながら。不安そうに丸っこい耳が揺れる。
「ああ、奴は――どうだろう。目的が分からないから今は放置するしかないのが現状でね」
やれやれ、と少年は首を振る。そこにラニスが口を挟んだ。
「で、あれば魔物達に町の警護でもさせましょうか?」
「いや…話通りの魔物なら全戦力を連れていきたい」
油断はできない――と話していると、町の方角から黒い鳥が飛んできた。
悪魔の少女と何やら会話をしている――独特の言語なのか、内容が分からない。
不思議そうにクルルが眺めていると、悪魔が驚いたようにリクに向き直る。
「リクちゃん大変だよ!町に巨大な魔物が現れたんだって!!」
「何だって!?」
言葉を聞くと同時に、一人と二匹は駆け出していた。
ぽつんと取り残されたクルルは、数秒間をおいて。
「巨大な魔物って一体…ちょっ、待ってください!!」
慌てて皆を追いかけた。