第98話 ファティリタス復興編 【第1クール】 <クラフト>スキル
――砂漠・森林跡地――
樹木付近の土を入れ替え、水をかけた後は、作物エリアを作った。表層部分の土を入れ替えただけだが、そのままよりはマシだろう。
「ユウスケさん。種はどれを植えていきましょう?」
「乾燥に強いのがいいだろうな、今は。――これと……これかな」
俺は、ハンナさんから教わっていた植物知識を活用し、アンリさんに教える。
作物は、メニ―コーン――トウモロコシの様な植物――と、リッチビーン――豆の様な植物――の2種を植えることにした。
最初はお試しだ。上手くいかなかったら種が無駄になるからな。メニ―コーンとリッチビーン、それぞれのエリアが分かる様、仕切りも作った。
種を植えて水をかける。
「楽しみですねぇ」
「だなぁ。無事に芽が出てきてくれたらいいが」
俺とアンリさんは一仕事終え、額の汗を袖で拭うのだった。
◆
「水場が欲しいですね」
「そうだな。このままだと、砂漠部分は雨が降っても水を溜めておけないだろうしな」
作物を継続的に育てるためにも、水は必要だ。
「雨水を溜められるところを作りませんか?」
「うん。水が浸透しない様な硬い材質の素材――岩とか――で、底面と側面を囲ったエリアを作るのが現実的かなぁ?」
岩もストレージに入れてるが、どう加工するかだな。
「あ、ユウスケさん。スキルのリストを見てください。<クラフト>っていうのがありますよ?」
「な、なに!? マジでか!!」
アンリさんに言われるままスキルリストを見たら本当にありやがった!
「これ、工作系のスキルみたいです。何かに使えませんかね?」
「いや、それどころか、俺の知ってるクラフトだったらまさしく今役に立つ様な――あ、あったぞ! 試してみよう!」
クラフトスキル<石材加工>
……石や岩を石材に加工する。
早速、山から採ってきた岩をストレージから取り出す。そして、クラフトスキルの<石材加工>を選択し、目の前の岩を対象物に選択すると――
岩が光に包まれ、一辺15cm程度のキューブ――立方体――状ブロックに変わった。岩が大きかったので、立方体ブロックは多数生産されていた。
「マジか……これ、便利すぎるだろ。早く知っておけばよかった」
「今こうして役立てられてますし、これから有効活用して行きましょ」
悔やむ俺を前向きなアンリさんが慰めてくれる。そうだな、今はこれを有効活用することに集中しよう。
「生産した<石材>はストレージに収納できるな。――あ。あと、二つ並べて<接合>を選ぶと、継ぎ目を消せるわ。逆に、<分離>で最小単位にまで分けられるみたい」
至れり尽くせりの仕様だった。運ぶのも楽だし、設置もこの大きさならそんなに苦労はしないだろう。
俺とアンリさんは、早速<石材>で、3m四方くらいの水場を作ってみた。
「おお~!」
「水、漏れてませんよ!」
ブロックを並べて<接合>したため、継ぎ目は消え、水を入れても漏れなかった。
「成功だ!」
「やりましたね!」
俺とアンリさんは思わず手を取って喜び合う。そんな時――
ぐぎゅ~
「あ、すまん。――そろそろご飯食べたい……」
「だいぶ頑張りましたもんね。お昼にしましょう」
アンリさんがくすりと笑い、朝と同じ様に料理を振舞ってくれた。
――森林の復活に向け、俺達は少しでも前に進めてるだろうか。手を加えた樹木や作物に期待を膨らませつつ、俺とアンリさんは、次はどうしようかと語り合うのだった。




