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異世界転生したくてもさせてもらえない件  作者: 転生希望のブラック会社員
<ファティリタス復興>編 【第1クール】
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第93話 ファティリタス復興編 【第1クール】 これからも共に

――洞窟内・大部屋の泉――



「とりあえず、あのスライムは倒せたが、これ、どうするよ……」

 カイリさんが毒沼を(のぞ)き込みながら言う。


「浄化しないとですね。――解毒薬の数が心配ですが」

「とりあえず、泉に入れてみましょうか」


 俺とアンリさんは解毒薬を泉に入れる。泉が発光するが――


「やっぱ足りないな」

「少し薄くはなってる様な気はしますけどね」


 泉が広すぎて、1、2本だと効果も薄い様だ。


「あの子達の分も貰ってきましょうか。もう敵もいない様だし。あなた達はそのまま解毒薬を使ってて」

 ハンナさんは大部屋を出て行こうとするが――


「待て。やっぱり一人じゃ危ない。俺も付いてくぜ。――お前らは何かあったらすぐ逃げろ」

 カイリさんが付き添って行くことに。俺達にそう言い残して、ハンナさんと大部屋を出る。

 


 二人が去った後、俺とアンリさんは、そのまま泉に解毒薬を(そそ)ぎ続けた。



「大分薄くなってきたんじゃないか?」

「もう少しですね……あ、解毒薬、無くなっちゃいました」


 アンリさんが最後の解毒薬の空瓶を手で振る。これで打ち止めかぁ……


「じゃあ、二人が追加の解毒薬を持ってくるのを待とうか」

「ですねぇ」


 俺達はリラックスしながら泉を見つめる。



「色々ありましたね」

「そうだな……この世界に来て、井戸水に毒が入ってたり、ゾンビモンスターに襲われたり――」

「いえ、――それもそうなのですが、出会ってから色々あったなぁと」

「ああ、そういうこと」


 アンリさんは俺と出会ってからの事――アンリさんの世界やホームエリア、ダンジョン探索での事――も含めて、『色々あった』と感慨にふけっているのだ。


「そうだな……結構昔からアンリさんと一緒にいる気がするよ。密度の高い毎日だな」

「私もです」


 俺とアンリさんは二人で笑う。――そう言えば、二人で落ち着いて話す機会ってあんま無かった気がするな。


「――アンリさんは、本当によかったのか?」

「はい?」


 俺は気になっていたことを聞いてみることにする。


「ユイも言ってたけど、アンリさんなら、すぐに異世界転生させてもらえただろ? 俺に付き合ってくれなくてもよかったんだぞ?」


 俺の事情に巻き込んでしまってて申し訳なさを感じてるのだ。だがアンリさんは――


「ユウスケさんといると楽しいので。――結構大変なことも多いけど、好きでこうしてるので気にしないで下さい」

「そっか……ありがとな」

「いえいえ、こちらこそです」


 アンリさんが一緒にいてくれて、以前の様な寂しさは無くなった。一人はやっぱり寂しいんだ……。自分のことを近くで見てくれている人がいるだけで、こんなにも満たされる。


「ユウスケさん、私――」

「待たせたな! 解毒薬持ってきたぜ!」



 アンリさんが何かを言い掛けたと同時、大部屋の入口から、カイリさんとハンナさんが入ってきた。


「ん? ――あ、すまん。もしかしてお邪魔だったか?」


 カイリさんが俺達を見て何かを察した様で謝ってくる。アンリさんは小さくため息をついてから立ち上がり――


「いえ、取って来てもらってありがとうございます。もう少しなのでやっちゃいましょうか」


 カイリさんから解毒薬を受け取り、泉に投入を再開した。



「おお! これならもう大丈夫だろ!」


 カイリさんの言う通り、泉は紫から、元の色だったのだろう透明に戻っていた。念のため、泉の水を桶に(すく)い、アイテムとして説明欄を確認してみる。


 <水>


「もう大丈夫みたいです。毒は無くなってますよ」

「やったわね! ――これで毒問題が解決するといいんだけど」

「やれることはやりましたし、村の人達と合流して村に帰りましょうか」


 俺達は洞窟の入口に向かい歩き出す。俺の横にアンリさんが並んだ。


「――ユウスケさん、これからもよろしくお願いしますね?」

「? ああ、こちらこそだよ!」



――俺とアンリさんは互いに笑い合い、目の前の道を一緒に歩み進むのだった。



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