第83話 ファティリタス復興編 【第1クール】 山探索
――山道――
「モンスター、出ませんね」
俺達一行は村近くの山を登り始めたが、モンスターと遭遇しない。こんなものなんだろうか?
「いつもはこの辺りにも弱いモンスターはいるのでですが……変ですね」
「昨夜の集会でも、モンスターが村に降りてこないって言ってた奴がいたしな。どうやら本当にいないみたいだ」
ハンナさんとカイリさんが答える。――そしてまたしばらく登っていくと、
「何か匂いませんか?」
「……ユウスケさん、お腹の具合でも悪いんですか?」
「違う! 俺はオナラなんてしてないぞ!」
アンリさんが鼻を手でつまみ、顔をしかめる。そんなアンリさんの背をさすりながら、ハンナさんが先を歩く俺を非難がましい目で見てくる。
失敬な! 俺は、オナラなど断じてしてない! ……はずだ。
「いや、確かに生臭いが、これは……腐臭だ」
カイリさんが匂いの元を探り、風上――上の方の草むらに足を運ぶ。
「こりゃあ酷い……」
カイリさんが思わずといったようにつぶやきを漏らし、俺とアンリさん、ハンナさんが追いついてソレを見る。
「う、うぉ!」
「うぷ……」
「……」
俺が後ずさり、アンリさんが口元を抑える。ハンナさんは黙って不快そうに眉根を寄せていた。
――草むらの中には、大量のモンスターの腐った死骸があった。
◆
「何でこんなにたくさん、モンスターの死骸が……」
「わからないな……あまり触りたくもねぇが、これは異常だな」
俺とカイリさん――男でも引くレベルの量だった。女性陣はもっと辛いだろう。アンリさん、ハンナさんの顔がどこか青褪めている。
「まぁ、調べない訳にもいかないですし、ちょっと見てみます……」
「俺もやるぜ……」
「き、気を付けてくださいね」
心配そうなアンリさんに頷き返し、俺とカイリさんはモンスターの死骸を調べ始めた。
「う~ん……特に、これといった外傷は無さそうだけど……」
俺は、ハエがたかり蛆虫のわいているモンスターの死骸を調べる。正直しんどい……
「死んでからそんなに時間は経って無さそうだな。腐敗の進み方からして」
カイリさんも死体をひっくり返したりしながら調べている。
「井戸水に毒が入ってたように、毒が原因じゃないでしょうか?」
アンリさんも少し慣れてきたのか、近づいて死骸を見ながら言う。
「確かにその可能性もあるけど、この辺に毒になりそうなものは見当たらないな……」
周りを見回しても特に怪しいものは無い。
「もっと先にあるのかもしれませんね。行きましょうか」
ハンナさんの提案に頷き返し、俺達はまた登山を再開した。
◆
「ん? あの辺、ちょっと気になるな」
カイリさんが山道をそれ、丈の低い草をかき分け、立ち並ぶ木々を避けながらながら進む。俺達もカイリさんについて行った。――しばらく行くと、
「川ですね」
開けた場所に出た先には、川があった。
「あ! あそこ、見てください!」
アンリさんが指差す先を見ると、川の一部が紫色になっていた。どうやら上流から流れてきているようだ。
「井戸水の時と同じですね……毒でしょうか?」
「どうやらこの先に答えがありそうだな」
俺もハンナさんとカイリさんの言う通りに思う。
「上流に行ってみましょう」
俺達は、原因を確かめに上流へと歩み進むのだった。
◆
――滝つぼ――
「滝、ですね」
たどり着いた先は滝つぼだった。崖の上から勢いよく滝が下に流れ込んでいる。
「おい……あそこ!」
カイリさんが驚きと共に指差す先には、
――巨大なモンスターの死骸が、川辺で水に浸っていた。




