第82話 ファティリタス復興編 【第1クール】 パーティ加入(カイリ/ハンナ)
――ハンナさん宅――
昨夜はハンナさんが俺達を泊めてくれると言うので、お言葉に甘えて泊めてもらった。
「おはよう、二人とも」
「おはようございます、ユウスケさん」
「おはようございます。昨夜はよくお休みになれましたか?」
「ああ。おかげさまでよく眠れたよ」
居間でアンリさん、ハンナさんとあいさつを交わす。……残念ながら、寝室は男女別だった。
ちなみに、錬金術で解毒薬を作る手伝いをしてくれた村の女性達は、昨日の夜中に一旦帰り、出来上がった分を村の家々に渡して回っていた。今日も作るみたいだが、今の分でもしばらくは何とかなるだろう。
「おお~!」
テーブルに朝食が並べられていた。パンにスープ、目玉焼きとサラダがとても美味しそうだ。
「どうぞ食べてください。大したものじゃありませんが」
ハンナさんに勧められ、俺とアンリさんが食べ出す。
「いや、おいしいですよこれ!」
「ほんと! 今度教えて欲しいくらいです」
「そんなに褒めても何も出ませんよ?」
3人で笑い合う。俺達は和気藹々と朝食を済ませた。
◆
「よう! おはようさん!」
「あ、カイリさん! おはようございます」
ハンナさん宅を出ると、ちょうどカイリさんがやって来た。村近くの山に毒水の原因調査に行くのだが、カイリさんとハンナさんが付き添ってくれることになったのだ。
「お二人とも、ありがとうございます」
「気にすんなって! それにこれは村の問題だしよ」
「そうですよ。むしろ、私達がお礼を言わなきゃいけないわ」
気のいい二人でよかった。
「ユウスケさん、お二人をパーティに誘いませんか?」
「そうだな。やってみよう」
アンリさんに言われ、俺はメニューから<パーティ>の項目を開く。その中の<加入>ボタンを押す。選択肢にカイリさんとハンナさんが出てきた。
――昨日、二人が付き添いを申し出てくれた時点で、加入条件が満たされたってことなのかな?
わからないが、カイリさんとハンナさんを選択し、決定するかの問いに「はい」を選択した。
<パーティ加入 カイリ ハンナ>
テキストがポップアップする。
すると、視界右に表示されるパーティリストに、カイリさんとハンナさんが追加された。
レベルやロール、HPやTP、CP、経験値バーが表示されている。
ユウスケ レベル 1 ロール タンク
アンリ レベル 1 ロール ヒーラー
カイリ レベル 5 ロール アタッカー
ハンナ レベル 4 ロール アタッカー
「ふ、二人とも強いですね」
「心強いです!」
俺は若干震えながら、アンリさんが喜びながら二人を褒める。それに、二人とも俺達のパーティに足りなかったアタッカーだった。特に俺達のロールをいじらなくてもいいだろう。
「ん? どうしてわかるんですかい?」
そうだったな。説明しないと。俺とアンリさんは、異世界人の俺達が持つメニュー操作能力やスキルについて説明する。
「そりゃ便利な力だな」
「凄い力ですね。流石は異世界人様です」
二人にすんなり受け入れられてしまった。順応力が高くて助かる。
「二人の視界には何か、視えるものが増えてたりしませんか? 左端にボタンとか、右端に俺達の名前とか」
「いや、無いな」
「何も無いですね」
二人には俺とアンリさんの様なメニュー操作能力は無いみたいだ。それなら、アイテムをストレージにしまったり出したりはできないだろうな。
それに、パーティメンバーのステータスもわからないみたいだから、ヤバい時は俺とアンリさんで判断して声をかけないとな。
「そうですか。なら、戦闘中にヤバそうな時は俺達が教えますね」
「おうよ!」
「わかりました」
とにもかくにも、二人をパーティに加えられたし、さっそく山に向かおう!
◆
――山道前――
「山にはここから登りましょう」
ハンナさんとカイリさんが先導してくれ、山道の手前に着いた。緩めの傾斜だが、それなりに高さはありそうだ。モンスターもいるだろうし、注意しないとな。
「はい。今回の目的は、村の井戸水が毒に侵された原因を調べることです。井戸水は地下水脈から来てるので、特に地面に注意して進みましょう」
「おう!」
「わかりました!」
「はい。なんとか見つけたいですね」
――そうして俺達は、村近くの山を登り始めるのだった。




