第81話 ファティリタス復興編 【第1クール】 毒水の原因は?
――村の集会所にて――
「村の皆を救って頂き、本当にありがとうございました」
俺とアンリさんは、村長からあらためて感謝される。
「いえ、ほんと気にしないでください。それよりも――」
村人全員の毒を<錬金術>で作成した<解毒薬>で治療した俺達は、村で一番スペースの広い集会所に村人全員を集めていた。
もうすっかり辺りは暗くなっており、病み上がりでしんどそうな人もいるが、とても大事な話があるのだ。
「これを見てください」
容器を用意し、その中に、<ストレージ>から出した<毒性水>を入れる。
「それは?」
「ハンナさんの家の外にある井戸から汲んだ水です」
村人達が驚きからざわつく。
「俺が井戸水を汲んだら、この様に紫色になってて、調べたら毒があることがわかったんです」
「でも、昨日までは普通に……」
ハンナさんも混乱しているようだ。
「村人全員が毒に侵されるのは普通じゃありません。原因があるとすれば――」
「村の井戸水が汚染されていた?」
「はい。それだけでなく、井戸の水源が汚染されている可能性もあります」
そこまで話し、皆の間に沈黙が降りる。
「あ、あの……」
アンリさんがおずおずと質問する。
「井戸水って、どこから来てるんでしょう?」
「井戸は<地下水脈>の水を汲み上げてるから、その地下水脈が汚染されてるのかもしれない」
「地下水脈は山の方から流れてきてます。まさか山で何かが……?」
俺の発言をハンナさんが引き継ぎ、フォローしてくれる。
「この村は山の麓にありますからね……その可能性はあります。ハンナさん、皆さん。ここ最近、山の方で何か異常はありませんでしたか?」
俺の問いに、しばしの間、皆が考え込む。
「そう言えば最近、山の方からモンスターが降りて来ないよな?」
「畑の作物を荒らすから、来なくて喜んでたんだけど」
村人達も少し違和感を感じていたようだ。
「なるほど……怪しいですね。明日、山へ調査に行って来ようと思います」
「そうですね。調べてきましょう」
今はとにかく原因を調査しなくては。アンリさんも頷いてくれた。
「ユウスケさんとアンリさんだけじゃ危なくないですか? モンスターも出ますし」
「そうだ! 命の恩人を危険な目に合わせられん! それに、これは村の問題じゃ!」
「村からも誰か出しましょう」
「そんな……みなさん、まだ治ったばかりでお辛いでしょう」
「お気持ちはありがたいですが、ご無理はなさらないでください」
――俺とアンリさんは気持ちだけ受け取ろうとするが、
「俺はもうピンピンしてるぜ。連れて行ってくれ」
「私ももう大丈夫です。モンスターと戦う際、私の錬金術が役に立つと思いますよ」
村の男の人とハンナさんが付き添いを申し出てくれた。
「それに、地理に詳しいものが必要かと思いますぞ。どうぞ、二人を連れて行ってくだされ」
村長からもフォローが入る。確かに、戦闘面でも地理の面でも来てもらえると頼もしいな。
俺とアンリさんは顔を見合わせ頷き合う。
「それではお二人とも、よろしくお願いします」
「よろしくお願いしますね」
「俺はカイリっていいます。お役に立って見せますよ!」
「ユウスケさん、アンリさん。よろしくお願いしますね」
――そうして、明日の同行者が決まった。
◆
「しかし、どうしましょう? 井戸水が使えないとなると……」
村長が頭を抱える。
「俺達の備蓄してる水がいくらかはありますが……皆さん全員の分には全然足りません」
俺達は皆で「う~ん」とうなる。
「汲んであるある水に解毒薬を入れるのはどうでしょう?」
「そうか、その手があったか」
アンリさんの提案に俺がうなずく。
「でも、解毒薬が足りないな。もっとたくさん用意しないと」
「しかし、お二人ともお疲れでしょう。ハンナさんも。明日の調査もありますし」
村長の言う通りだが、誰かがやらないとな。俺は申し出ようとするが、
「私達で解毒薬を作れないでしょうか?」
「ハンナさん。――錬金術、でしたっけ? やり方を教えてもらえませんか?」
「はい。覚えればどなたでもできますよ。最初は私も立ち会いますね」
村の女性数人が申し出てくれ、ハンナさんの指導で解毒薬を作ることに。
「だが、<デトキシ草>の数が不安だな……」
「だいぶ使っちゃいましたからね……」
俺とアンリさんが「うーん」とうなっていると、
「デトキシ草ならうちにもあるから、後でハンナさん家に持って行くわ」
「うちも」
村人達が申し出てくれた。ありがたい!
「これならなんとかなりそうですね」
「ああ。みんなでこの困難を乗り越えよう!」
――こうして俺達は、村人達と協力して毒水の脅威に立ち向かうのだった。




