第80話 ファティリタス復興編 【第1クール】 こうも感謝されるとは思ってなかった。でもみんな無事でよかった!
――村人女性の家、居間――
「そうだったのですか……大変ご迷惑をおかけしました」
俺達が解毒薬で助けた村人女性はそう言うと、俺とアンリさんに深々と頭を下げた。
「お、お気になさらないでください。当たり前のことをしただけです」
「そうです。頭をお上げください」
アンリさんと俺が言うと、ようやく頭を上げてくれた。
「私はこの村で錬金術師をしているハンナと申します。どうぞ、お見知りおきください」
「アンリです」
「ユウスケです」
「アンリさんとユウスケさんですね。あなた達は、もしかして異世界人様でしょうか?」
アンリさんと俺は顔を見合わせ、
「はい、そうですよ」
「昨日来たばかりなんです」
「異世界人様が来るとは聞いておりましたが、あなた方の様な親切な方でよかった……」
ハンナさんが優しく笑う。大人の女性のハンナさんがそんな顔をすると、破壊力が!
――ふと危険な気配を感じ、俺は顔を引き締める。
「助けてもらって図々しいのは承知しておりますが、他の村人達も助けて頂けないでしょうか?」
「他の方達も毒にかかってるのですか!?」
「はい。村人達の解毒のためにデトキシ草を摘みに向かおうとしたところ、お恥ずかしながら私が毒で倒れてしまいまして……」
俺とアンリさんは顔を見会わせ、
「すぐに取り掛かりましょう」
「大丈夫ですよ。デトキシ草はたくさん採ってきてますから」
すぐさま解毒薬の量産に取り組むのだった。
「おお! これが錬金術!」
俺も錬金術をしてみたく、アンリさんの代わりにやらせてもらった。
「異世界人様は凄いですね。これは見た目によらず難しいのですよ?」
ハンナさんが感心しながら褒めてくれる。
「<スキル>の恩恵があって、そのおかげですよ」
――俺は照れながら、ハンナさんにそう答えるのだった。
◆
「よし! これだけ作れば十分だろ!」
解毒薬を大量作成し、俺の錬金術の練度は1から4にまで上がっていた。
「はい。村人の数以上ありますし、十分です。……本当に、ありがとうございます」
「さっきも言いましたが、お気になさらず。困った時はお互い様ですよ」
「そうですよ。早速みなさんに持っていきましょう!」
◆
「んくっ……んくっ……」
――パァァッ……
ハンナさんの時と同様、村人達に解毒薬を飲ませると淡い光に包まれ、みな回復していった。
「異世界人様、本当にありがとうございました……」
「気にしないでください。それと、ユウスケでいいですよ」
「私のことはアンリと呼んでください」
最後の村人の解毒も終了し、皆の回復を確認した。
「ぽ、ポチも……」
「こら! 失礼でしょ!」
村の子供が泣きながら子犬を抱えて入ってきた。どうやら犬も毒にやられてしまったようだ。子供のお母さんが、子供を引き留めに入ってきた。
「大丈夫ですよ。まだ解毒薬もありますから」
俺はそう言うと子犬の口に解毒薬を持っていき飲ませる。村人たちと同様、淡い光に包まれ、
わんっ! わんっ!
「ポチっ!」
回復してしっぽを振りながら鳴く犬を、子供が泣きながら抱きしめている。
「ありがとうございます……ありがとうございます……」
子供の母親に泣きながら感謝されてしまった。
「はは……気にしないでください。いや、本当に」
むずがゆく、頬をかく。
――かつて自分の人生でこれ程たくさんの人に感謝されたことがあっただろうか。いや、無い。とか、反語風にしょうもないことを考えている時、頭の中に声が響いた。
【アナウンス】これより、RPの算出を行います。
◆
「は!?」
「あ、頭の中で声が聞こえます!」
俺とアンリさんの頭の中に女性の声が響く。
――ちなみに、いつもの<天の声>とは違う。
【アナウンス】対象行為は、<毒に苦しむ村人と犬の治療>。1人につき3ポイントが加算されます。村人および犬は計25であるため、75RPを加算します。
アナウンスがそう告げると、目の前に、<RP+75>のテキストがポップアップした。メニューでRPの項目を開いても、同様の数値と取得履歴が表示されている。
アナウンスはそれだけ告げるとプツンと止み、それ以降何もしゃべらなかった。
「と、とにかく。よかった……ね?」
「はい。村の方達をみんな治せてよかったです!」
――みんなが無事で本当によかった。錬金術、やっぱりいいかも!




