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異世界転生したくてもさせてもらえない件  作者: 転生希望のブラック会社員
<ファティリタス復興>編 【第1クール】
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第75話 ファティリタス復興編 【第1クール】 いざ、ファティリタスに

――ファティリタス――


 ゲートを抜けて出た先はどこかの施設だった。周りを見ると、足元に大きな魔法陣が描かれている。建物の造りは、どこか神殿の聖堂っぽいな。

――ああ、ここが例の<神殿>かな? パーティが全滅した時、俺達生徒はここで復活するんだったよな。


 先に来てる他校の生徒もいるな。現地の出迎えっぽい人に連れられて奥に向かっている。


「異世界人様ですな? ささ、こちらにどうぞ」

「あ、はい。わかりました」

 俺達にも声がかけられた。アンリさんと二人で案内についていく。


――食料保管庫――



「ここに、いくらかですが、異世界人様のために食料を保管してあります。お持ちくだされ」

「ありがとうございます」


 保管庫内には、第1校~第4校それぞれにブースで分けられ、食料が保管されていた。俺達は自分達の<第1校>のブースに入った。


「大体、一週間分というところでしょうか?」

「そうだな。でもこれ、持ち運ぶのも荷物になるな」

 

 俺とアンリさんは食料を手に持ってみる。

「あ、ユウスケさん。前のダンジョンの時と同じように、食料の近くにもボタンがありますよ」

「ほんとだ。押すと、<しまう>が選択できるな」


 とりあえず<しまう>を押してみる。すると、食料が手元からふっと消えた。メニューからアイテム欄を開くと、今しまった食料の見た目のアイコンで、食料名が表示されていた。今度はそれを選択し、<取り出す>を押してみる。――すると、食料がまた手元に戻った。


――要するに、アイテムの収納空間である<ストレージ>を使って出し入れができるってことだな。


「これは便利だな。いくらでも持ち運べそうだ」

「食料に困ってる人の支援も簡単にできますね」


 アンリさんの言う通りだ。俺達は、人間と魔族の長い戦いで荒廃した世界の復興に来ている。事前ミーティングで見せてもらった映像の中には、飢餓で困る人々の姿もあった。

 このストレージをうまく活用すれば、飢えてる人達を多く救うことができるだろう。


「そうだな。まずは食料の確保を優先してもいいかもしれない」


 俺達はすべての食料の回収を終えると、案内に従い、神殿の奥へと向かった。


――神殿内大部屋――


 連れられてきた大部屋には巨大な円形テーブルが中央に据えられ、テーブルを囲う様に、いくつも椅子がしつらえられていた。俺とアンリさんは空いてる席に座る。


 やがて、後から来た他校の生徒も席につくと、質の良さそうな服を着た人が部屋に入ってきて挨拶する。


「異世界人様方、よくぞいらっしゃいました。私はこの神殿で<司教>を拝命しております、名をモーロと申します。まずはこの世界の復興にいらした皆様方に深い感謝を」 

 司教がそう言うと、俺達を案内してくれた人共々頭を下げる。


「そういうのはいいから。早く担当エリアに向かいたいんだよね」

 第4校の生徒だっただろうか。その生徒が主張する。――失礼な奴だな。


「ではこれをお持ちください」


 司教がそう言うと、案内をしてくれた人達が、俺達や他校の生徒の席に巻物のようなものを持ってくる。


「これは、この世界の地図でございます。皆様方の担当エリアも区分けして表示しておりますので、ご確認ください」


 地図はおおざっぱなものだったが、大まかなロケーションは把握できるようになっていた。それに司教の言う通り、俺達の担当エリア区分が分かりやすく記載されていた。


「ずいぶんおおざっぱだな。まぁいいや。用はそれだけかな?」

 先程の第4校の生徒だ。無駄に態度でかいな……ちょっとイラッとする。


「わざわざ僕達のために用意してくれてるんだ。文句を言うなら受け取るなよ」

 第3校の生徒だったかな。ついに4校生徒の態度を見かねて苦言を呈した。


「ふん……ただ、出来が悪いからそう言っただけじゃないか」

 そう悪態をつきつつも、一旦は静かになった。



「この世界の施設の利用などでお困りの際は私共にご相談ください。お役に立てると思いますので。それでは、皆様方。あまり長くお引き止めするのも申し訳ないので、後は何かあれば声をかけてください」


 司教がそう締めくくると、案内に従い俺達は出口へと向かっていった。


――神殿入口――



「では皆様方。どうぞよろしくお願いいたします」

 案内の人は頭を下げ、去っていこうとする。――あ、ちょっと待って。


「あ、すみません。この世界でお金を稼ぐにはどうすればいいでしょう?」


「そうですね……ギルドの依頼にあるモンスターを討伐したり、その素材を売るのがいいでしょう。また、生活物品などを売ることでも収入を得ることができますよ」

 なるほど。大体予想通りだな。


「モンスター素材や生活物品などの売却は商人を通じてですか?」

「モンスター素材はギルドでも引き取ってくれますよ。商人は、あそこに見えます商店街にもおりますし、各地にも行商人がおりますので、いずれかの者とお取り引き頂けばよいかと」

 

 なるほどなるほど。


「ありがとうございます。助かりました」

「いえいえ、また何かあれば聞いてください」

 案内人は笑顔で神殿へと戻って行った。


「ユウスケさん、用心深いですね」

「忘れた?アンリさん。俺、君と会った時、無一文だったんだよ?」

 そうでした、とアンリさんと一緒に笑う。


「長期で異世界に留まったのはあの時が初めてでね。お金のことが頭からすっかり抜けてたんだ」

「でもそのおかげで私とユウスケさんの縁ができましたし、何がどう転ぶかわからないですね」

 そうだねと笑い合いつつ、周りに目を向ける。


 どうやら、俺達が案内人と話してる間に、他校の生徒は去って行った様だ。

――いや、1グループだけ残っていた。こちらに向かってくる。



「僕はジョセフ。第3校だよ。第1校のユウスケ君とアンリさんだよね。よろしく」

 先程、悪態をついた4校の生徒に注意した生徒だった。ジョセフから差し出された手を、俺達は握手で返した。

「ああ、こちらこそよろしく」

「よろしくお願いしますね」


「私はエマ、よろしくね!」

「ア、アリアです。ろしくお願いします……」

「ヘンリーです、よろしく」


 他の3人とも自己紹介を済ませ、握手を交わした。――みんな感じのいい人達でよかった。


「よかったら一緒にこの都市を少し見て回らないかい?」

 

「そうだな。行こうか」

「はい!」


 

――そうして、俺達のファティリタスでの生活が始まった。


 

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