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異世界転生したくてもさせてもらえない件  作者: 転生希望のブラック会社員
<理事長襲来>編
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第71話 これからしんどくなるかもしれないらしいです……

――ホームエリア――


 ダンジョン攻略を終え、ヒトカゲやいわおとの別れを惜しみながらも魔法陣に入った俺とアンリさんは、いつものホームエリアに帰還する。


「ん~っ! 久しぶりのシャバだぁ!」

「ダンジョンに入ってからそんなに経ってませんよ?」


 伸びをして身体をほぐす俺にアンリさんがクスクス笑いながらつっこみを入れる。平和だなぁ……


「ん?」

 なんか静かだな、と思ったら、ユイがソファーで足を組みながら、頬を膨らませてそっぽを向いている。


「…………」

「どうした? ご機嫌斜めだな?」


 バンッ!


 目の前のテーブルを叩きながらユイが立ち上がる。


「どーしたも、こーしたも、無いわよ!」

「おいおい。ほんとにどうしたんだよ……」


 何で不機嫌なのかがさっぱりわからない。俺とアンリさんは顔を見合わせる。


「何であのユニークモンスターを仲間にしてるのよ! おかげでせっかく用意したボスモンスターがしょぼくなっちゃったじゃない!」

 

 ああ、そういうこと……


「仲間になりたいって言ってきたのはいわおの方だしなぁ」

 そうなのだ。俺らは悪くない。むしろ――


「そういう仕様にしたユイが悪いだろ」

 うん。悪いのは仕様だろ。


 バン! バン! バン!


「だから! あんなの! 私が作った仕様に無いんだって!」

 机を叩きながら、むすーっとしている。


「でも。じゃあ、いわおちゃんはどうして仲間になったんでしょうね?」


 アンリさんの問いかけに俺は嫌な予感を感じ、いつもの<ナレーション>に念話を送ってみる。


(……もしかして、またやっちゃった?)

【天の声】何ですか! いいじゃないですか! 楽しかったでしょう!?


 逆ギレされた。ってか、やっぱりお前か!



 俺はため息をつき、


「犯人がわかったぞ」

「誰よ?」

「例のナレーションだ」



「こんな時にまで冗談言うなんて……最低」

「ユウスケさん。やっぱり一度病院に……」


 ゴミ虫を見る目でユイが、心の病気を心配してアンリさんが声をかけてくる。


「なんでだよ! なんで俺の言うことを信じてくれないんだよ!!」



――それからも「信じてくれ!」と訴えるが、すべてスルーされた。




「まぁ、いいわ。二人ともお疲れなさい。ダンジョンは楽しかったかしら?」

「はい、とっても!」

「お、おう。スキルも使えたし、楽しかったぞ」

 

 切り替え早っ!と思いつつも、ユイとアンリさんの話に乗っかる。


「ダンジョンといえばスキル、スキルといえばダンジョン()って言うくらいだからね」

「そうなのかはわからんが、まぁ、スキルが大事だったな」

 

 そうだ。ちょっと気になってたことがあったんだ。


「ゴールド、結構貯まったのに、まったく使うところが無かったぞ? 一体、何だったんだ?」

 俺がそう問うと、ユイは遠くを見ながら、


「行商人がいたのよ。でも、あんた達がレベリングでモンスターを狩りまくってるのを見て、隠れちゃったみたい……」


 うっ! 気まずい!


「ま、まぁ。いなくてもなんとかなったし、結果オーライで!」



 これ以上はボロが出そうだと思い、無理やり締めくくった。


 

「じゃあ! 今回の採点よ!」


 ババン!という効果音が聞こえそうな態度でユイが宣う。


【Before】

 優しさ 12、勇気 13、面白さ or いいこと 13

 計38


⇒【After】各ステータスが4上がった!

 優しさ 16、勇気 17、面白さ or いいこと 17

 計50


「……なんか、雑になってきてね?」

「そ、そんなことないわよ?」

「ユウスケさん。ここは素直に受けとりましょう!」


「そうだな。やっと50かぁ」

 そして、ふと気になる。


「次のご褒美は?」

「言うと思ったわよ」


 ユイは用意してたであろうスクリーンを出そうとするが――


 プルルルルッ! プルルルルッ!



 ホームエリア内に、電子音が響きわたった。



「あ、<塾通信>ね。あんた達は、そうね……そのままここにいて」


 そしてユイがコールに出る。巨大なホログラムが投影され、身なりの綺麗なおばあさんの上半身が写し出される。


「お久しぶりね、ユイさん。お元気かしら?」

「はい。ご無沙汰しております、<理事長>」


 ユイが頭を下げる。……傍若無人なユイが!?


 この怖いもの無しを体現しているユイが頭を下げるなんて! ……にわかには信じられん! 横を見ると、アンリさんもソワソワしている。


 ユイが頭を上げると理事長が続きを話し出す。


「今、とある世界が、復興のために異世界人を募っててね。期間有りの転移だけど、あなたのところの生徒にも参加して欲しくて声をかけたのよ」

 そう言うと理事長は俺とアンリさんを見る。


 まるでスキャンされてるような視線に、思わず身震いする。アンリさんに至っては固まっている。


「あらあら? ずいぶん感受性の高そうな子達ね。……まさか、私のスキャンに気づくなんてね」

 おい! ほんとにスキャンしたのかよ!? ほんとに人間か、このおば――


「……失言は聞き流してあげましょう。――でも、次はなくてよ?」

 イエス、マム。


「お言葉ですが、二人にはまだ早いかと。教育が不十分で、面目ございません」

 そう言ってユイがまた頭を下げる。


「謙遜することはありませんよ。中々見所のある子達です。他の塾にも声をかけるので、集合は明日にします。明日の13時にこちらへのゲートを開きますから、くれぐれも遅れないように」


――そう一方的に言われ、通話が切られてしまった。



 ユイが「はぁぁぁ~~っ……」と、特大のため息をつく。


「面倒なことになったわ……下手に隠すと危険だから、あえて二人にはここに残ってもらったけど、あの人に興味を持たれてしまうなんて……」

 ユイが、「あぁ、めんど!」と悪態をつく。


「理事長って言ってましたね。どんな方なんですか?」

「うちのトップで、怖い人よ。あんま怒らせちゃダメよ?」

「わかった」


 ヤバみは十分わかった。


「これからしんどくなるかもだけど、諦めて頑張りなさい。あの人、教育者としても一流だから、……()()()()()はなれるはずよ」


 他所を見ながらユイが言う。()()()()()()()って、そっか~、そういうことか~……



――溢れそうな涙を見せない様、俺は天を仰いだ。



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