第61話 ダンジョン攻略【12】ユニークスキルって心躍るけど、やっぱり俺のはアレだった
「火炎斬り!」
――バシッ! ……ごぉぉぉっ!
「ぐぉぉ!」
俺は、ヒトカゲの進化に伴い取得した新スキル<火炎斬り>でリッチを焼き払う。殴打属性の鞭で<斬り>とはこれいかに、とは思うが、細かいことは気にしないことにした。
【天の声】火炎斬り!
――ザンッ!! ……ごぉぉぉぉっ!!
「グァァァ!」
ヒトカゲはグリズリーを火炎斬りで焼き払った。ファイアリザードマンに進化して、俺の渡した<炎のロングソード+5>を装備してるのもあって、非常に様になっている。
「俺の火炎斬りより、めちゃくちゃ威力高くね?」
【天の声】そりゃあ、<炎のロングソード+5>を装備してますし、スキル<剣・刀装備時ATK補正+10>もかかってますし、当然ですよ。
こ、こいつ……俺はそれができないってのに!
「ライトニング!」
――ガカッ!
アンリさんが最後に残ったリッチを雷撃魔法で蒸発させた。
いつものように、取得した経験値とゴールドのテキスト表示がポップアップする。
経験値 +31
ゴールド +62
そしてファンファーレが鳴り響き、レベルアップとSP取得テキストがポップアップした。
ユウスケ レベル 9 ⇒ 10 SP+3 ユニークスキル取得
アンリ レベル 9 ⇒ 10 SP+3 ユニークスキル取得
今回のレベルアップは俺とアンリさん。ヒトカゲは16のままだな。それよりも――
「ユニークスキル?」
「なんでしょうね?」
今までにないテキスト表示<ユニークスキル取得>があった。とりあえず、確認してみるか……
「あ、<復唱>っていうのが増えてます」
アンリさんが説明欄を確認し、俺に教えてくれる。
<復唱 パッシブ レベル1 まれに同一魔法が連続で発動する(追加TP消費無し)>
「めっちゃいいじゃん。魔術師にピッタリだし、追加TP消費が無いんだったらデメリットもないし」
「そうですね。ユニークスキルって、他のスキルと違って、その人固有のものみたいです」
そう言って、アンリさんは「えへへ」と嬉しそうに笑う。いいなぁ……
よし! 俺も確認してみよう! スキル欄を開く。
<仲間モンスター数+1 パッシブ 現在の上限:2体>
「……」
「どうしたんですか?」
アンリさんが首をかしげて聞いてくる。
「ああ……仲間モンスターをもう1体増やせるようになったみたいだ」
「すごいじゃないですか!」
アンリさんが純粋に喜んでくれてる。でも俺はもっと違うのがよか――
【天の声】一体、何が不満だというのですか?
あ、ちょっと不機嫌そう。機嫌損ねてもいいことないしな……
(いや、悪い。もうちょっと変わったものを期待してたからさ)
念話で弁明する。
【天の声】もう1体仲間にすれば、「これでよかった!」と、きっと感謝しますよ!
そうだな。そうなることに期待しよう。
◆
「あれ? ユウスケさん、そっちは入口の方ですよ?」
アンリさんが首をかしげながら俺に聞いてくる。
「ああ、ちょっと気分転換に、戦うモンスターを変えようかと思ってな」
そう言って俺達は、同じ地下3階でも入口近くに移動する。
――お、出たな!
ラミア×2
ふふふ……どうせモンスターを仲間にするなら、上半身だけだとしても女性型がいい! 確か、モンスターを仲間にするには、俺がとどめを刺せばよかったはず……。――よし!
「火炎斬――」
「ライトニング」
【天の声】ファイアブレス!
「「ぎゃあぁぁ!」」
ラミア2体がアンリさんとヒトカゲに瞬殺された。
経験値 +18
ゴールド +36
「……」
「さ、ユウスケさん。どんどん行きましょう♪」
「グギャ♪」
しばらくラミアを含むモンスターを狩り続ける。……のだが、アンリさんもヒトカゲも、ラミアを優先的に速攻潰しにかかってるような……俺が1体もとどめをさせてない。
「ちょ、ちょっと俺も技の練習がしたくてさ。次は俺が倒してみていいかな?」
自分だけで戦うしかないと思い、そうアンリさんに提案するが――
「……ユウスケさん、ずいぶんラミアに執着してますよね? 何かあるんですか?」
抑揚の無い声でアンリさんがそう言ってくる。あ、アレ? 笑顔だけど、どことなく目が虚ろな気が……
【天の声】……悪いことは言いません。ラミアはやめておきなさい。
――天の声からも忠告が入る!?
(なんでだ! なんでなんだよ!?)
俺は念話で慟哭する。
【天の声】もう分かってるでしょう? ……あなたとラミアの身が危険だからですよ。
素の感じで窘められた。あ、これ、あかんやつや……
「い、いや、特に何も無いよ? 気分転換にもなったし、そろそろ奥の方に戻ろうか」
「はい!あっちの方が効率いいですしね!♪」
「グギャァ♪」
そうして、機嫌を直したアンリさんやヒトカゲと一緒に、奥の狩場へと戻るのだった。
――<ビーきち>の時にも思ったが、俺の人生って進む方向はもう決まってるんじゃないだろうか?




