第6話 残業の手伝い
「ところで、ポイントがいくつになったら異世界に転生させてくれるの?」
コスプレ女に聞く。
ぎくっ!
……変な擬音が聞こえた気がする。
「それじゃあ、ポイントの合計が10になったら、まずはお試しで少しだけ転生させてあげる」
「言ったな? 絶対だぞ? 約束だかんな?」
「わ、わかったわよ。だから頑張んなさい」
今のステータスは……優しさ1、勇気2、面白さ1で4か。
10なら行けるんじゃないか?
「じゃあ、次、行くわよ!」
扉の向こうに投げられた。
◆
「お先に失礼しま~す」
「はい、お疲れ様」
どこぞの会社の終業時みたいだ。
「あ、君はちょっと待って」
気弱そうな男性社員が課長につかまってしまった。
「急いで仕上げなきゃいけない書類があってね、悪いんだけど頼める?」
「あ、明日じゃダメですか?」
「急いでてね……どうにかならないかな?」
男性社員は困り顔だ。急に残業は嫌だよな。
課長に意見したら勇気が上がるんだろうか……?
……あ、そうこうしてるうちに男性社員が受けてしまった。
こうなったら……
「よかったら手伝うよ」
「あ、ありがとうございます!」
カチッ……コチッ……カチッ……
時計の針が静かな室内に響く。
二人で手分けして書類を作る。
やっぱり困ってる仲間は助けないとな。
うーん、ちょっとトイレ行ってくるか……
リフレッシュもかねて席を外す。
ジャーッ……
手を洗いスッキリした頭で席に戻る。
さあ、やるぞ!
ん? 男性社員がいない。休憩かな?
俺の机の上に、書き置きがある。
「自分の分が終わったので先に帰ります。
後よろしくお願いします」
――視界が暗転する。
◆
「やめろよ! ブラック社員に会社ネタはやめろよ!!」
「し、知らないわよ。どうしたのよ急に!」
俺の発狂にコスプレ女が驚いている。
……やめろよ。涙が出てくんだよ……
「と、とにかく! よく頑張ったわね! はい、ポイント!」
優しさが1上がった。
もう嫌……
【現在のステータス】
優しさ2、勇気2、面白さ1 計5