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異世界転生したくてもさせてもらえない件  作者: 転生希望のブラック会社員
<ダンジョン攻略>編
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第56話 ダンジョン攻略【8】目の前の仲間が急に落とし穴に落ちたら、あなたはどうしますか?

「ユウスケさん、ユウスケさん!」

 アンリさんが嬉しそうに話しかけてくる。


「ついに<沈黙耐性>がレベル3になり、完全耐性になりましたよ!」

「おお~、おめでとう!」


 俺は、ドヤ顔のアンリさんを拍手で()(たた)える。


「これでもう怖いものはないですよ!」

 アンリさん、それ、フラグ! でもまぁいいか。嬉しそうなアンリさんを見ると、俺も嬉しい。


「もうこのフロアに敵はいないし、次の階段を見つけて先に進もうか」


 俺達はそれから間もなく下への階段を見つけ、次のフロアへと向かった。


――地下3F――


 地下2Fに引き続き、暗いエリアだった。俺のスキル、<フロアライト>で周囲を照らす。明かりに照らされて、横壁や天井に埋まった鉱石の結晶が、色取り取りの輝きを放っている。


――それはとても綺麗(キレイ)で、幻想的な光景だった。


「わぁ……」

 アンリさんがその光景に見惚(みと)れて周囲を見回している。俺はそんなアンリさんに見惚れている。俺達は綺麗な光景を満喫(まんきつ)しながら歩を進めた。


 ふいにどこからか「カチッ」と音が鳴り、アンリさんの姿が()き消えた。


「ん?」


 ガラガラガラガラ…………きゃぁ~っ……


「アンリさぁぁぁんっ!?」


 落とし穴だった。地面が崩落(ほうらく)し、アンリさんが落ちて行った。やがて下の方から聞こえてくる衝撃音。


 急いで視界の右端にあるアンリさんのステータスを見ると、HPバーが2割程度。そして今現在も徐々に減っている。


――あかん。これはあかん!


 混乱しながらも同じ穴から飛び降りる。


「…………うぉぉぉっ……!」


 そして足に襲ってくる落下の衝撃。――ま、マジで痛てぇ……

 

 そして気になることがもう一つ。


「――毒沼?」


 落下時、着水したのだ。浅い水に。で、なんか身体の調子が悪い……周囲を見ると、水は緑だった。


 ふらふらする頭でアンリさんを探すと――いた。うつぶせに毒沼に突っ伏している。ステータスを見ると、「しに」。俺は絶望し、間もなく同じ運命を辿(たど)る。



「あ、おかえり~」


 そこは見慣れたホームポイントだった。ユイが椅子に座りながらお煎餅(せんべい)をぽりぽりしつつ声をかけてくる。(あわ)てて周囲を見ると、近くのソファーでアンリさんが(ひたい)に濡れタオルを乗せ、横になっていた。


 アンリさんは、俺に気づいたようで身体を起こす。


「すみません、私の不注意で……」


「仕方無いよ。というかごめん。落とし穴とかはダンジョンの定番トラップなのに、注意するよう言ってなかった」

「い、いえいえ。悪いのは私なので……」


 俺達は「悪いのは自分で」と(ゆず)らない。


「見事に引っかかってくれたわね。頑張って作った甲斐(かい)があったってもんよ」

 ニシシという感じで、いたずらっ子の笑みを浮かべてユイが胸を張る。


 ……


「お前かぁ!!」


「ちょ、ちょっと! ガチギレ禁止!! 私はダンジョンの怖さを教えてあげただけよ!」

 そう言ってユイはそっぽを向く。……ああ、もう。あそこまではいい感じだったのに。



「で、どうする? すぐ戻るの?」

「う~ん、アンリさんはどう?」

「ヒトカゲちゃんを置いてきちゃいましたしね」

 あ、すっかり忘れてたわ。

「戻ったらまた地下1Fから?」

「ワープポイントを設定してあるから、地下3Fの入口からでいいわよ?」

「ヒトカゲも心細い思いをしてるだろうし、戻るか」


 アンリさんがうなずく。


「ねぇユウスケ、あんた何でモンスターを仲間にしてるの?」

 ユイからだ。


「それはこっちのセリフだ。何で俺を<モンスターテイマー>なんてのにしたんだよ」

 そう、ずっと文句を言いたかったのだ。


 しかし、ユイはきょとんとする。


「え? 私、知らないわよ? あんたを送るとき、<戦士>に設定したはずだけど」

「は? でも実際に俺は――」


 話が()み合わず、俺とユイは顔を見合わせる。


【天の声】私の独断で恩恵(おんけい)を授けました。(ドヤァ!)


「お前かぁ!!!」

 俺は思わず中空に(さけ)ぶ。


「ちょ、ちょっとアンリ! ユウスケが壊れたわ!」

「元からです!」

 どことなく失礼な会話が聞こえてきた気がするが――


「ゆ、ユウスケ。やっぱりちょっと休んでく?」

「そうですね。実は私もちょっと休憩したかったんです」



――二人の気遣(きづか)いにより、俺は少しの間ゆっくりさせてもらうのだった。



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