第51話 ダンジョン攻略【3】トラップ宝箱や???アイテム
「ファイアボール!」
またアンリさんがモンスターの群れを焼き尽くす。
経験値 +12
ゴールド +24
レベル 2⇒3
SP +3
ファンファーレが鳴り響き、またレベルが上がった。――いやぁ、アンリさんが優秀すぎて、俺の出る幕がない。今のところ、俺は肉壁以外の役目を果たせていない。
「いやぁ、アンリさん、助かるよ。役立たずでごめんね?」
「気にしないでください。レベル上げって楽しいですし」
アンリさんも結構楽しんでくれてるみたいだ。やっぱりやるからには楽しまなくちゃね!
「あ! 宝箱ですよ!」
今まで、モンスターを倒すと黒い煙になりコインを落とすだけだったが、今回は、宝箱もドロップしたみたいだ。でも宝箱は――
「あ、アンリさん! ちょっと待って――」
――ガチャ
遅かった。アンリさんが宝箱を開くと、紫色のガスが出てきてアンリさんを覆う。
「わぷっ!」
すぐにアンリさんが煙から出てきたが、頭から、紫色の水玉が立ち上っている。これは見るからに――
「あ~、<毒>、くらっちゃったね」
視界の右端に見えるアンリさんのステータスでも、レベルの横に「どく」の表示が。
「ど、どうしましょう! 解毒薬が無いです!」
アンリさんがわたわたしている。確かに、今のところアイテムは、俺が<回復薬>、アンリさんが<TP回復薬>しか持ってないな。
「ちょっと待ってね。ちょうどレベルが上がってSPが手に入ったから――」
そう言って俺は、メニューからスキルカスタムを開き、未習得スキルの一覧を確認する。――あった!
<アンチポイズン 3 レベル1 必要SP3>
解毒魔法のアンチポイズンを取得する。灰色表示から白表示になったので、選択してアンリさんに使用する。ちなみに、魔法名の右の数字は必要TPだ。
「アンチポイズン!」
すると、アンリさんの頭から、紫の水玉が消えた。念のためステータス表示も確認するが、うん、「どく」が解除されているな。
「ありがとうございます」
「ダンジョンの宝箱はトラップが仕掛けられていることが多いから要注意だよ」
お約束を伝え忘れていた。
「はい、気をつけますね。あ、宝箱の中に何か入ってますよ!」
アンリさんが宝箱の中から、<何か>を取り出す。平べったくて盾の様に見えるが……
<???>
アイテムの上のテキスト表示は見事な<???>だ。これもお約束。
「<???>って何なんですかね?」
アンリさんがアイテムを抱えながら首をひねる。
「こういうのはお約束で、<鑑定>するまで何かわからないし、たとえ装備品だとしてもこのままじゃ装備できないんだ」
「鑑定ってどうやるんですか?」
「普通は、ダンジョンの外に店があって、そこの店員にお金を払って鑑定してもらうんだけど、今回はダンジョンの外に出る様な設定は無さそうだから――」
俺はまたスキルカスタムを開く。すると、――あったあった。
<アイデンティファイ 4 レベル1 必要SP5>
「スキルカスタムで未習得スキルを見てみ?<アイデンティファイ>ってあるでしょ?」
アンリさんが俺に言われるがままに確認する。
「ありますね。あ、でも、必要SPが5で、2足りません」
貴重なスキルだし、高めに設定されてるのね……
「じゃあ、次のレベルアップまでお預けだね。とりあえず、しまっておこうか」
そう言うと、アンリさんが操作してアイテムをしまってくれた。
◆
その後、またしばらくモンスターを狩る。アンリさんがファイアボールで無双してくれて俺は出番がない。そう時間も要さず、またレベルが上がった。
経験値 +11
ゴールド +22
レベル 3⇒4
SP +3
やっぱりSPは1レベルで+3しか上がらなさそうだな。なにはともあれ――
「どう?これでSPは貯まった?」
アンリさんに聞く。
「はい、今6あるので足ります」
アンリさんはすぐさまスキルカスタムで<アイデンティファイ>を習得する。
「さっそく使ってみますね。<アイデンティファイ>!」
先程のアイテム、<???>を取り出して鑑定する。ーすると、アイテムの形が変わり、何かはっきりとわかるようになる。
<???> ⇒ <盾+1>
これまたシンプルなアイテム名ですこと……それよりも――
「<+1>ってなんでしょう?」
アンリさんの言う通り、鑑定して判明したアイテム名の横に<+1>とある。
「これはアイテムの強さを表してるんだ。同じアイテムでも+の数字が大きいほど強力で、レア度も高いんだよ」
「そうなんですね……アイテム名が変わるわけじゃないんですか?木の盾とか、鉄の盾とかに」
「そういうのもあるけどね。この世界では、シンプルに<盾>ってカテゴリーになってるのかも」
そんなことを話しながら、アンリさんと一緒に<盾+1>を見つめる。
「アンリさん、装備できる?」
「無理みたいです。ロッドが両手持ちみたいで。それに、前衛のユウスケさんが持った方がいいと思うので、どうぞ」
そう言って俺に渡してくれる。
「では遠慮なく――」
俺は特に制限なく装備できた。
右手 ウィップ
左手 盾+1
頭 なし
体 服
腕 なし
足 ブーツ
DEFが+4上がったみたいだ。
「そう言えば、ステータスのところの表示って何を意味してるんですか?」
「そろそろ説明しておくね」
アンリさんと一緒にメニュー画面を開き、ステータスを表示する。HPとTP、SPは説明済みなので、他を説明する。
ATK 物理攻撃力に影響
DEF 物理防御力に影響
INT 魔法攻撃力に影響
RES 魔法防御力に影響
DEX 命中率に影響
AGI 行動速度と回避率に影響
「ざっとこんな感じかな。たぶんこの世界でも大きくは違わないんじゃないかな。細かいことを言うと、DEXを上げるとクリティカル率も上がるとか、回復魔法はINTじゃなく、RESに影響されるとかあるけどね」
なるほど……と、アンリさんがアゴに手を当てながらうなずいている。
そうだ、ちょっと気になっていたことがあったんだ。
「アンリさん、今、INTいくつ?」
やたらアンリさんのファイアボールが強い。俺のアクアショットとは比較にならない程に。
「54ですね」
……
自分のINTを確認すると、18>だった。3倍かぁ……
アンリさんはメインクラスが魔術師だし、ロッドを持ってるし、そりゃあ強いとは思ってたけど、自分とここまでの開きがあるとは……。俺のメインクラスは<モンスターテイマー>だし……
俺はがっくりとうなだれる。
「ど、どうしたんですか?」
その後、アンリさんが慰めてくれてようやく立ち直れた。
――おのれユイめ! 帰ったら文句を言わなくては!




