第49話 ダンジョン攻略【1】仕様確認
大扉を抜けて出た先は、予告通り、ダンジョンのようだった。オーソドックスな岩壁の造りで道幅が狭い。
「アンリさん、無事?」
「はい、大丈夫です」
一緒に来たアンリさんは、まわりをものめずらしそうに見渡している。元いた世界には無かったのだろうか? というか、冒険者でもなければダンジョンなんて普通来ないしな。
「持ち物とかを調べとこうか」
そう言って、みのまわりを調べる。俺は皮でできた服を装備しており、腰には鞭が……鞭? カバンを確認すると、――よかった。携帯用トイレが入ってる。もうあんな失態は晒したくないからな。今回はアンリさんもいるし。
――でも待て? 他には何も入ってないぞ? 回復薬は?
「これ、なんでしょう?」
アンリさんは、白いローブを着て、ロッドを持っていた。とてもよく似合っている。杖とは別の手に例のブツを持って、不思議そうに聞いてくる。
「携帯トイレでございますよ」
なんとなく耳元でささやくように教える。「ひゃっ!」と小さい悲鳴が聞こえた後、顔を赤くし、「あ、ありがとうございます」と言って、カバンにしまった。
「ん?」
ふと、視界の左端に四角いボタンのようなものが見える。頭を左右に動かしても位置は変わらずついてくる。アンリさんも気づいたようだ。同じようなところを凝視している。とりあえず指を伸ばしてみる。
「お、おお……?」
四角いボタンを押すと、メニュー画面が表示された。よく、MMORPGのゲームとかであるアレだ。ステータス表示と、「アイテム」「クラス」「装備」「スキル」「オプション」の項目がある。
――とりあえず、「アイテム」のところを押す。
回復薬×2
が表示された。これまたシンプルな……
「アンリさん、左端に四角いボックスが見えるだろ?そこ押してみ?」
アンリさんが言われたまま指を持っていく。
「ひゃっ!」
まぁ、見慣れてないと驚くよな。俺は元いた世界のゲームで同じようなのを見たことがあるから耐性があったけど。
「ステータスの表示と、他にいくつか項目があるだろ?レベルは総合的な強さみたいなもので、敵を倒して経験値をためると上がる。そして、レベルが上がると軒並みステータスが上がるんだ。今は1だな。HPが体力で、これがなくなったら死ぬ。TPはスキル使用で使うポイントで、これが尽きたらスキルが使えない。後はまぁ、後々説明を……アイテムのところを押してみ?」
言われるがまま、アンリさんが操作する。
「<TP回復薬×2>ってあります」
む、アンリさんの方はTP回復薬か。俺はアンリさんにうなずき、
「とりあえず、それを押してみよう」
俺は<回復薬>を、アンリさんは<TP回復薬>を押す。すると、どこからかアイテムが出てきて手に収まる。
「わ、出てきました」
「使いたいときはこうやって出すんだな。でもどうやって戻すんだ?」
「アイテムの近くにも何かボタンがありますよ?」
アンリさんに言われて気づく。ボタンを押すと、<使う><しまう>のボタンが。
「この<使う>でアイテムを使って、<しまう>で元に戻すんだな」
そう言って<しまう>を押すと、ふっとアイテムが消える。回復薬の個数が2に戻った。アンリさんもアイテムを戻した。
「あと、この<クラス>ってなんでしょう?」
「とりあえず押してみるか」
<クラス>の項目を押す。
メインクラス <モンスターテイマー>
サブクラス <なし>
「は?」
思わず声が出た。いやいや待て待て!
ダンジョンRPGにそんなクラスはねぇだろ! ……無いよな? 普通は、<剣士>とか<戦士>、<魔術師>とかじゃないのか?
「メインクラスに<魔術師>ってあります。サブクラスは<なし>です」
ほらね。これが普通なんだよ。
「そ、そう……よかったね」
アンリさんが首をかしげる。アンリさんがちょっとうらやましかった。とりあえず俺のは黙っておこう。
「<装備>も見てみるか」
<装備>を押す。
右手 ウィップ
左手 なし
頭 なし
体 服
腕 なし
足 ブーツ
やっぱりかぁ……俺は、腰につけてる鞭を苦々し気に睨む。
「ロッドとローブ、ブーツを装備してるみたいです」
うん、アンリさんは正統派だね。いいなぁ……
「次はスキルだな」
嫌な予感を覚えつつ、<スキル>を押す。
スキル
スキルカスタム
ふむふむ……そのまま<スキル>を押す。
パッシブスキル モンスターテイム
アクティブスキル なし
「うぉい!」
今までこらえてきたが、思わず大声を出してしまった。
「ど、どうしたんですか?」
アンリさんがビクッとしながらも声をかけてくれる。
「いや、なんかさ、メインクラス<モンスターテイマー>、装備<ウィップ>ときて、スキルが<モンスターテイム>、しかもパッシブだったから思わずつっこんじゃったんだよ」
――「どんだけ俺にモンスターをテイムさせたいんだよ」と。アンリさんが首をかしげる。
「パッシブって何なのでしょう?私は<なし>みたいなんですが」
「常に発動してるスキルだな、パッシブは。それに対してアクティブは任意で発動するんだよ」
うまく伝えるのが難しいな。アンリさんがはてな顔だ。
「<アクティブスキル>に何かない?」
そう言うと、アンリさんが確認する。
「<ヒール 3>と<ファイアボール 2>があります」
「じゃあ、どっちか押してミソ」
アンリさんが操作すると、杖の先から炎の玉が発生し、
――俺に飛んでくる。
「うぉぉ!」
急いで飛び退る。
「ご、ごめんなさい!」
アンリさんが焦りながら謝ってくる。
「い、いや、まだ操作に慣れてないんだし、仕方ないよ」
冷や汗をかきながら慰める。しかし、この世界、フレンドリィファイヤもONみたいだよな……気をつけよう。
「TPが減ってない?」
アンリさんに確認を促す。
「あ、2減ってます」
「さっき<ファイアボール 2>ってあったっしょ? 右の数字が使用TPなんだよ」
ふむふむとアンリさんがうなずく。
「TPを回復するには、さっき確認したアイテムを使うのでしょうか?」
「そうだな。<TP回復薬>って名前だったしな。――あ、数も無いしもっとTPを使ってから使おう」
アンリさんが取り出して使おうとしたので急いで止める。慎重にいかないとな。
「TPはあとどのくらい?」
「18ですね」
「じゃあもうちょい使ってからにしようか」
アンリさんがうなずき、アイテムをしまった。
「――スキルカスタム、ねぇ……」
押すと、
【SP0】
モンスターテイム レベル1 必用SP3
他、魔法とかスキルがずらっと並んでいる。未習得だからか、灰色表示だ。
「おお、SPを貯めれば、俺でも他の魔法やスキルを覚えられそうだ」
ちょっと光が見えてきたぜ。モンスターテイムの表示は見なかったことにしよう。
「私もSPが0ですね。どうやったら増えるのでしょう?」
「う~ん、敵を倒したりレベルが上がったりかなぁ?まぁ、それはこれから確かめていこうか」
最後に<オプション>を確認する。メニューの配置設定とかをいじれるみたいだが、数か所気になる。
レベル表示 オフ
クラス表示 オフ
HPバー表示 オフ
TPバー表示 オフ
とりあえず押してみて、オフからオンに切り替える。すると――
「お、おお~!」
視界の右端に<名前>とその下に<レベル>と<クラス>、<HPバー>と<TPバー>が表示されるようになった。アンリさんにも教えてやってみてもらう。
「――わっ!」
アンリさんもできたようだ。――あれ?俺とアンリさんがパーティ設定になってるからか、アンリさんの分も、俺の表示の下に見えるようになった。便利でいいね!
「ユウスケさんの表示も見えますね」
アンリさんの方も俺のが見えるようだ。よかったよかった。
「よし! じゃあ、確認も済んだし、さっそくダンジョン探索だ!」
――まるでゲームのような世界だが、俺は、わくわくしながらアンリさんと共にダンジョン攻略を開始した。




