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異世界転生したくてもさせてもらえない件  作者: 転生希望のブラック会社員
<とある宿屋の受付嬢>編
32/321

第32話 とある宿屋の受付嬢【7】暴動

――ください

――きてください


「起きてください」


 寝ているところを突然起こされ目を覚まして見たのは、マレクさんの必死な形相だった。ケガをしているのか、血まみれで満身創痍だ。


「ど、どうしたんですか!? 大ケガしてるじゃないですか!」

「私のことはいいんです。それよりも――」


 部屋の時計を見ると真夜中だった。なのに宿の外が騒がしい。殺気立っているとも言えるだろう。いったい何があったんだ……?それに、こんなに騒がしいのになぜ気づかずに寝てるんだ俺は!自分の鈍感さが嫌になる。


「呪いです。村人の中で既に呪われた人達がいたんです。彼らが突然暴れだしました……村中に被害が出ています」

「え……? 呪いってなんで急に――まさか!」

 マレクさんがうなずく。


「ええ、あなたの持っていたブローチと同様の呪いによるものです。()()、無力化して捕らえた者の所持品の中に、あれと似た呪いを発する呪具が見つかりました」

 そう言ってネックレスを取り出し見せられた。パッと見は普通のアクセサリーのようだが……


「イノセントフラワーの反応もありましたので、呪われていたことは間違いありません」

 解呪の花、イノセントフラワーが反応したのなら間違いないだろう。呪いで人を操れるのか……いや、今はそれよりも――


「まだ暴れている人達がいるんですか?」

 窓の外の喧騒に目を向けながらマレクさんに聞く。そうだーさっきマレクさんは、無力化して捕らえたのは()()だと言った。であれば、まだ捕らえられていない人達がいるはずだ。


「いえ……残りの者たちは、連れ去られました」

 誰が、どこに?と聞こうとするが、ふとマレクさんが言い辛そうに視線をそらした。視線で続きを促し待つと、やがて小さなため息をつきマレクさんが語りだす。


「宿屋のお嬢さんの扇動に従い村の外に出ていき、戻ってきていません。変装はしていましたが――あれは間違いありません。彼女です。どこに行ったのかは今調査中です」

「ちょ、ちょっと待ってください!なんでそこで宿屋の受付嬢さんが出てくるんですか!」

「もうお分かりでしょう……呪われた村人たちを先導して連れ出しているんです。この騒動はお嬢さんと関わりのあるもの――、より直接的な言い方をするなら、犯人ですよ」


 少しイライラした様子でマレクさんは言う。でも、そんな――


「あなたに会いに来たのは、あのお嬢さんとあなたのやり取りの中で、何かヒントになることが無いか聞きたかったのです」

「ヒントって……特にこんな騒動についての話なんてしてませんよ」

「何を話したんですか?彼女に」


 マレクさんは俺の目を見て直球で聞いてくる。俺は正直に受付嬢さんとのやり取りをマレクさんに話す――


「はぁ……、彼女が呪いの原因かもしれないとお話ししていたはずです。なぜブローチの呪いについて安直にありのままを彼女に話すのですか」


 マレクさんの問い詰めるような言葉が胸に刺さる。そうだ、俺は忠告を受けていたはずだ。なのに信じたいことを信じ、気にもとめていなかった。この惨状は俺がきっかけかもしれないと思うと、いたたまれなかった。


「彼女の後を追えないでしょうか?」

 なぜ彼女がこのようなことをしでかしたのかが知りたい。そして、これ以上罪を重ねないよう止めたい。俺はマレクさんの目を見て訴える。


「今、私の相棒が後をつけています。居場所を特定すれば戻ってくるでしょう」


 相棒?と疑問は沸くが、それよりも今は――、今も村中で喧騒が続いている。俺はマレクさんの提案に従い、住人の治療のため、宿の外のケガ人の治療にあたるのだった。


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