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異世界転生したくてもさせてもらえない件  作者: 転生希望のブラック会社員
<ファティリタス復興>編 【第3クール】
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第313話 ファティリタス復興編 【第4クール】 一発だけ殴る

――森林跡地――



「……やっと片付いたな。それに、向こうもどうにかなったみたいだ」


 襲い来る魔族を片付け終わり、燃えていた建物の火も消した俺達は、北の街道ですっかり大人しくなった教会軍をホッと胸をなでおろしながら眺めていた。


「バイラルやジェシカ、それに王様がなんとかしてくれたみたいだね」

「お、ベリアル。いなかったから心配したんだぞ?」


 いつの間にか、ベリアルが俺のすぐそばに来ていた。俺よりもよっぽど強いから、心配するのもおこがましいんだが、心配されたベリアルはむしろ嬉しそうだった。


「うん、ちょっとね」


 なぜか、愛おしそうに自身のお腹を撫でながらそんなことを言う。


「腹がどうし――」

「ユウスケさ~ん!! クラウディアさんが呼んでますよ~!!」

「あ、ほらお呼びだよ、今回の立役者さん♪」


 遠くからアンリさんが大声で呼びかけてくるので、手を振って答えた。


「じゃあ、行ってくる。――一緒に行かないのか?」

「僕はちょっと休憩してようかな」

「そっか。わかった、行ってくるわ」


 小さく手を振り家に帰るベリアルを少し見送ってから、俺はアンリさん達の元へと向かった。



「遅いぞ」


 アンリさんと合流しクラウディアのところへと向かったのだが、なんか偉そうな服装の奴と話している最中のようだった。


「この人誰?」

「ば――!? “陛下”に決まってるだろうが!!」


 クラウディアが焦りながら俺の頭をつかみ下げさせる。


――むぅ。だって、俺、王様なんて初めて会うし。


 不承不承ながら頭を下げておくが。


「ハハハ! “英雄”は豪気でなくてはな!!」


 国王とやらは、器のでかそうな人だった。周りを見ると、教会軍の偉そうな奴が、ガックリと肩を落として座り込んでいる。


――あ! こいつ、枢機卿!!


「……ちょっと失礼」

「待て待て! 腹が立つのはわかるが、せっかく陛下が場をおさめてくださったのだ!! 泥を塗るな!!」

「だけど、あいつのせいで……!!」


 結果としては、仲間は誰も死ななかった。傷付いた者達は、皆治療して回ったが、死人がいなかったのは涙が出るくらい嬉しかった。皆の連携のたまものだろう。


――だが、事の原因であるあいつは許しちゃおけない……!


「一発だけ」

「――――は?」

「あいつを一発だけ全力で殴る! でないと、気がおさまらない!!」

「あ! ――待て、バカ!!」


 俺は一気に駆け出し、驚き立ち上がった枢機卿の横っ面に、生涯で全力の右パンチを食らわせるのだった。



「痛い……! 痛いよ……!」

「気持ちはわかりますが、ユウスケさんも悪いですよ?」


 あの後、クラウディアからグーパンで吹っ飛ばされた。――で、そのクラウディアは――


「一発も二発も変わらんだろう?」

「き、騎士団長風情が私に――ごぼぁっ!?」


 自分も枢機卿に一発を叩き込んでいた。殴った後は少しスッキリした顔をしているのが憎らしい。


――なんで俺、殴られたんだ?



 その後、軍は騎士団、教会共々撤退した。国王は去り際――


「よくぞ、きっかけを作ってくれた」


 なんか俺を誉めてきた。手を差し出されたので、握手にも応じておいた。――よくわからんが。


「今後は予がここの後ろ盾となろう」

「それは……ありがとうございます」


 俺は王様に頭を下げた。


――心配だったのだ。自分がいなくなった後の皆が。


 国王様が直々に後ろ盾になってくれるなら、これ程心強いことはないだろう。だが――


「ですが、あまり、皆に干渉はしないであげてください。――皆がやっと見つけた“居場所”なんです」

「わかっておる。だが――そなたが“作った”のだろう? 胸を張れ!」


 国王は俺の背中をバシバシ叩くと、護衛を連れて中央都市に返っていった。



 そして、軍や国王のいなくなった後は、救援に来てくれた皆と盛大な宴を催したのだった。



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