第308話 ファティリタス復興編 【第4クール】 策略
――森林跡地北の街道――
「ご機嫌よう。こんなところまで大勢でピクニックかな? 枢機卿」
「これはこれは。そちらこそ、平民とお散歩ですか? 騎士団長?」
顔を合わせるなり、クラウディアと枢機卿のバトル――口喧嘩――が始まる。初めて枢機卿とやらを見る俺からしたら、ヘラヘラ笑いを顔に貼りつけているのがスゴく不快だった。
俺のことを平民とか言ってるし……。別に、平民でいいけどね!
――まぁ、一応口を挟んでおくか。
「俺はユウスケ。こっちのアンリさんと二人で、この南エリアの復興を担当してる異世界転移者だ」
「アンリです。――ずいぶん物々しいですね。集落の人達が驚くので、兵を連れて帰ってください」
――おお! アンリさんも言う時は言うな!
クラウディアはふっと笑い――
「だ、そうだ。お邪魔虫は帰ったらどうだ?」
「い、言わせておけばこの異教徒共が……っ!!」
俺達やクラウディアに散々好き勝手言われ、もう既にキレそうな枢機卿。
「ええ! ええ! 帰りますよ! 魔族をかくまう異教徒共の殲滅が終わればねぇ!!」
「うわ。いくらなんでも見境無いな」
「だから言っただろう。頭にウジがわいてるんだ」
「話し合いすら出来ないんですね……お可哀想に」
枢機卿の頭から、何かのキレる音がした。枢機卿が片手を上げ、前に下ろしながら――
「全軍! 突げ――」
「お、お待ち下さい! いくらなんでも、このタイミングで攻め込むんですか!?」
「えぇい! 日和おって! ――ならばっ!!」
枢機卿が口に指をくわえ――
――ピィ~~~~~~~~ッ!!
長い口笛を吹きならした。
◆
「…………何のつもりだ?」
状況に何も変化は無い。教会軍の兵達ですら困惑している。
クラウディアは枢機卿をにらむが、枢機卿はニヤニヤするだけだ。
やがて――
森林跡地の方が騒がしくなる。家が燃え、煙が上がっている。
「野郎! お前、何しやがった!?」
「ユウスケさんダメです!! 今はとにかく向こうに戻りましょう!?」
「団長! 魔族達が襲って来ました!! 兵にも被害が出ています!!」
「ちぃっ!! ――貴様、ただで済むとは思うなよ?」
「ほらほら。大変みたいですよ?」
クラウディアは呼びに来た兵から被害状況を来き、とにかく場を収めるため森林跡地へ急ぐ。枢機卿はしてやったり顔だ。
ユウスケ達もクラウディアの後に続いた。
何をどうやったかはわからない。だが、このツケは必ず払わせてやる!!
ユウスケは枢機卿に対するドス黒い感情をおさえながら、騒ぎの起きている森林跡地へ急ぐのだった。




